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2019年2月10日 (日)

「特捜部Q─自撮りする女たち─」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q─自撮りする女たち─」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「特捜部Q」もシリーズ7作目。
デンマークの大人気ミステリです。
地下の特捜部に追いやられているカール・マーク警部。
部下はほぼ警官ですらないメンバーで回しているが、事件の解決率はかなりのもの。
今回は秘書のローセに焦点が当てられています。

福祉国家として知られる北欧のデンマーク。
福祉事務所には給付を望む市民が詰めかけ、中には働く意志がなくなんとか言い訳してお金だけは貰おうという根性の人間も。
相手をする係員もストレスを抱えているのでした。
そんな状況で出会った気まぐれな若い娘たちが意気投合、思わぬことから犯罪に‥?
背景には、歴史を背負って破綻した家族たちの重いものも含まれるのですが。
おしゃれだけはする若いコたちの身勝手な言い草が情けないやら哀しいやら。
さらに、真面目な官吏のはずの担当者の切れっぷりのほうがすごくて、笑えてくるほど、ぶっ飛ばします。

ローセは有能だけど変わり者。というのはわかっていましたが、これほど壊れてしまうとは‥
鬼気迫る描写の後に、過去のつらい状況が明らかに。
現在の事件とも運悪く絡み合い‥
救いようがないと思われたいきさつがあっても、時とともにじわりと事態は動きます。
ローセを救おうと懸命に突き進むカール、アサド、ゴードンたち。
ラストに光が差し、泣かされます。

2017年2月11日 (土)

「特捜部Q-吊された少女」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q-吊された少女」ハカヤワポケットミステリ

デンマークの人気ミステリ、特捜部Qのシリーズも6作目。
個性的な特捜部の面々は、またしても思わぬ成り行きに巻き込まれることに。

17年前の事件をとりつかれたように捜査していた刑事が、退官式で自殺してしまいます。
ボーンホルム島で、少女がひき逃げされた事件でした。
捜査は特捜部に託された、と張り切るローセら助手達。
警部補のカール・マークも、しぶしぶ腰を上げます。
残された資料を元に、関係者を再度当たっていくと‥

一方、あるスピリチュアル系の団体があり、指導者アトゥは神々しいような長身の美形で、人を惹きつけるカリスマ性がありました。
その片腕の女性ピルヨは、実務面を受け持ち信頼も厚いのですが、アトゥに近づきすぎる女性はひそかに遠ざけてきたのです。
ピルヨの視点での重いストーリーが交互に語られ、いつもと一味違う雰囲気に。
はらはらと事件解決を願う半面、いずれは追い詰められていくだろうピルヨが何だか気の毒なような。

誤解や偶然の重なり合う意外な展開で、読ませます。
愚かさと哀しさと。
謎の過去を持つカールの部下アサドは、危機に際して、何ともたくましい。移民で、警察官ですらないただの助手なんだけど、じつは教養もある人物。
警部補のカールは刑事としては有能だが、世渡り下手で組織でははみ出す傾向があるタイプ。
特捜部に飛ばされ、周りに振り回されているのをいつも面白おかしく描かれていますが、実は寛容なところもある?
孤独がちなカールが感じるアサドとの友情が一抹の救いで、胸打たれます。

2016年10月15日 (土)

「アルファベット・ハウス」

ユッシ・エーズラ・オールスン「アルファベット・ハウス」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「特捜部Q」シリーズが人気のデンマークの作家、オールスン。
じつはこれがデビュー作とは。重厚でスリルあふれる作品です。

第二次大戦中。
英国軍パイロットのブライアンとジェイムズは、ドイツに不時着。
必死で逃げ延びて列車に飛び乗り、重症のナチス将校になりすますことに。
搬送先は「アルファベット・ハウス」と呼ばれる精神病院で、戦争神経症の患者が集まっていました。
そこに実は悪徳将校の4人組も病気のふりをして紛れ込んでいて、互いに見張り疑い合う息詰まるような生活が始まる。
やがてブライアンだけが命がけで脱走しましたが‥

ブライアンはジェイムズを捜しますが、行方は知れないまま。
医師として成功し、オリンピックでドイツに行くことになったブライアンは、かっての悪徳将校が町の名士になっていることを知って驚きます。
病院の看護婦で献身的なペトラや、ブライアンの妻も、すれ違いつつ果敢に役割を果たします。

戦争物というよりは冒険物、それよりも特殊な状況下での友情物というべきか。
切ない幕切れ。
これほど長い間‥
と思うと胸が詰まるものがありますが、苦いようでも、先に希望はないでもない終わり方。

デンマークの作家だけど~ドイツでも大人気とか。
ルメートルの「天国でまた会おう」はやはりフランス的だったかな‥と。
戦後へと続く友情物という共通項がありつつ、何となくですが~お国振りの違いを思いました。

2015年5月 1日 (金)

「特捜部Q―知りすぎたマルコ―」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q―知りすぎたマルコ―」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

人気シリーズ5作目。
デンマークの警察ものです。
利発な少年マルコの登場でスピード感がアップし、いつもとちょっと違うさわやかな読後感。

未解決事件を扱う特捜部Q。
カール・マークは恋人にプロポーズしようとして上手くいかず、殺人捜査課の上司は退職予定でしかも後任が天敵と知る。
新人のゴードンはちょっと不器用で変な若者だが、秘書のローセに一目ぼれした様子でまた特捜部に混乱が‥?

アフリカへの開発援助をめぐって、実は大規模な横領事件が起きていました。
真面目な官僚が一人、行方不明になったままの件を取り上げることにした特捜部の面々は‥?

マルコは15歳でもっと幼く見える。
叔父が率いるクラン(犯罪組織)の中で、仲間の子供たちと共に掏りや物乞いを強制されて育って来た。
独学で本を読むようになったマルコだが、ある秘密を目撃したことからクランを逃亡し、かといって警察に駆け込むことも出来ない。しだいに、カールらと運命が交錯することに。

マルコ、頑張れ!
とハラハラしながら読みました。
首都コペンハーゲンの一角に、ヒッピーが開いたクリスチャニアという無法地帯があるとは初めて知りました。
警官とばれたら大変なのでカールは変装するしかないのですが、パンク的なスタイルのローセはここの住人のように見えるというのが笑えます。

カールの同僚で銃撃事件後寝たきりのハーディに少し回復の兆しが見られたり、カールが恋愛を吹っ切ったりと、微妙な変化も。
さて次はどんな展開になるのかなあ?
楽しみです☆

2014年4月26日 (土)

「特捜部Q ―カルテ番号64―」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q ―カルテ番号64―」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

未解決事件を扱う「特捜部Q」シリーズ4作目。
デンマークの人気ミステリです。
書き込みが濃厚で、読み応えがあります。

カール・マークは特捜部Qに左遷されたものの、過去の事件解決に活躍中。
助手のアサドは中東系の謎の人物で、温厚で有能ですが、大変な過去があるらしい。
秘書のローセもけっこう綺麗で確かに優秀ではありますが、相当な変人。部下のはずの二人のコンビに追い立てられるように捜査にかかるカールなのでした。

1987年に失踪事件が相次いでいることに気づきます。
人口500万のデンマークでは考えられない頻度。何の関連もなさそうな5人に、どんな事情が‥?
折りしも、優生学的な政策をかかげる老人の極右政党<明確なる一線>が、票を伸ばそうとしていました。

ニーデという女性の人生が、間にさしはさまれます。
農場で育ち、教育を受ける機会もなく、恋にやぶれて‥
一度は里親に恵まれて、幸せをつかんだものの、後にその幸福も奪われてしまう。

デンマークでは1920年代から60年代にかけて、品行が悪かったり知的障碍があったりして問題となった女性を収容する矯正施設が島にあり、退所する際には避妊手術を受けさせられたという。
日本でのハンセン病療養所を連想させますね。
優生保護法は、当時のヨーロッパでは多くの国で施行されていたそう。
作者はこの事実を知って愕然とし、作品に取り上げました。
熱っぽく描かれていて、その気持ちは理解できますが、ちょっと重すぎて‥感想を書くのが遅れました。

カールを取り巻く人間たちは、相変わらずにぎやかでコミカル。
恋人モーナとは上手くいっているのが救いですが、その家族に紹介されるとこれが面倒な性格で、ギクシャク。

銃撃事件で寝たきりの同僚ハーディを家に引き取り、その事件の謎がまだカールを追ってきます。
さらに、カールの伯父の事故死にまで、なにやら疑惑が‥?

このシリーズは10作を予定しているそうなので、何がどこでどう絡んでくるのか‥?
特捜部3人の捜査は体当たり!
チームが次第に強力になってくるのが、楽しみです。

2013年5月 7日 (火)

「特捜部Q ―Pからのメッセージ」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q ―Pからのメッセージ」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

デンマークの警察小説。
シリーズ3作目にして、最高傑作。(4作目も出たようです!)

コペンハーゲン警察本部の、特捜部Qで働くカール・マーク警部補。
じつは予算を得るために新設された部署で、署員は体よく左遷されたカール・マークのみ。
助手はシリア出身の移民アサドだけで、母国では知的職業にあったらしく有能ですが、警察官ですらありません。
ここに、秘書として変わり者の女性ローセが入ったのが、2作目。

事件は、少年二人が監禁されている状況から始まり、瓶の中に助けを求める手紙を入れて流すという出だし。
この手紙が外国へ流れ着き、まわりまわって特捜部へ。
必死に書かれたかすれた文字を判読しようとするローセら。

一方、夫に疑惑を抱く妻。
入ってはいけないと言われていた部屋をのぞくと、別人の名前の夫の写真が‥

視点をつぎつぎに変えて、犯人の側からも、描かれます。
何も知らない妻との生活。
犯人自身の過去。
そして今、次の標的を選び、近づいていく。
一般社会とあまり交わらない生活を送る家庭の子供を狙っている‥

カールは、銃撃事件で全身麻痺となった同僚ハーディを、病院から自宅に引き取ります。
絶望を見ていられなかったのです。
下宿人が家事に堪能で人がいいので、可能だったことですが。

奔放な妻に出て行かれて以来、恵まれなかった私生活。
担当カウンセラーのモーナを好きになったが、彼女は海外へ行ってしまいました。
帰国したモーナが、何か吹っ切れたようにカールとの交際に応じて、しばしハッピーなひととき。

なぜか突然ローセが休暇をとり、双子の姉ユアサが代役として勤めだします。
そっくりな顔でローセとは正反対の服装、強引に居座る姉にあぜんとするカール。
カールの身近ではテンポのよい喜劇のように、あれこれ巻き起こり、振り回されるカールは少々気の毒ながらも、軽快な筆致で息抜きになっています。

被害者とその家族の切ない思いが、胸に迫ります。
視点の切り替えが頻繁なのにわかりやすく、犯人の正体に気づき始めた一般人も絡んでの追跡が盛り上がり、見事なお手並みでした。
北欧5ヵ国で選ばれるミステリの最高賞「ガラスの鍵」賞を受賞。

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