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おすすめ本

2009年6月12日 (金)

「神の家の災い」

ポール・ドハティー「神の家の災い」創元推理文庫

中世ロンドンが舞台の歴史ミステリ。
まじめなアセルスタン修道士と、大酒飲みのクランストン検死官のシリーズ~3作目。

年若い王の叔父が摂政として実権を握る時代。
摂政の開いた宴で、検死官クランストン卿は、主賓のクレモナ公ガレアッツォから挑戦を受ける羽目になります。
ある屋敷の密室で、食事も取らずに4人もの人物が次々に怪死したのは何故か?
期限は2週間。賭け金の千クラウンは払いきれる額ではなく、もし負けたら代わりに払ってくれるという摂政の紐付きのような立場になってしまう?

同じ頃、アセルスタン修道士の小さな教会では、改修中の床下から人骨が発見されたのです。
柩に触れた人の怪我が治ったと、聖人の秘蹟として大騒動になってしまいます。
きまじめなアセルスタンは、怒って見物人を追い出すのですが…

一方、アセルスタンがかって修行したこともある名高い修道院では、海外からの滞在客もある大事な時期に修道士が墜落死、ついでもう一人が行方不明に。
アセルスタンは、調査を依頼されます。
修行中に若気の至りで出奔して十字軍に参加した過去があるアセルスタンを、いまだに白い目で見る人もいる中での調査になります。

三つの難題を抱えて、修道院では緊張の高まる中、みごと謎は解けるのか…?
猥雑な中世のロンドン、クランストン卿には双子が生まれていて、いつもにましてにぎやかな展開。
修道士カドフェルや「薔薇の名前」をちょっと思い出すような要素もありますね。
謎解きの面白さはオーソドックスで、わかりやすいです。

2008年7月26日 (土)

「教会の悪魔」

ポール・ドハティ「教会の悪魔」早川書房

2008年4月発行のポケミス。原著は1986年。
歴史教師で大量の歴史小説を書いているドハティの一番人気シリーズらしい?
ヒュー・コーベット・シリーズの一作目。

王座裁判所書記のコーベットは、ペストで妻子を失って10年、気力を失いかけながらも真面目に勤めていました。才覚を見いだされ、王の勅命を受けることになります。
妹を誘惑されて激怒した男が相手の男を殺し、治外法権である教会に逃げ込んだがその中で自殺、そんな必要はなかったはずなのに?陰謀が感じられるという次第。

出だしは暗いんで、笑っちゃうほど。中世ですから…とはいえ読む人が減っちゃうよ。せっかく人気シリーズなら~もう少し取っつきよくすればいいのに!?
探りに行った酒場の女主人である美しいアリスと恋に落ちたコーベット。
絞首刑から救った若者レイナルフを助手にして、二人三脚が始まります。このへんは楽しく読める要素です。
この後、彼の人生は好調になっていくそうですし~先が楽しみ。

時は、イングランド王エドワード1世の御代。
シモン・ド・モンフォールの乱が鎮まって20年、いまだにロンドンには王に反感を抱く者が住んでいたというから驚きます。当時のイギリスはいわば征服王朝で、王妃も外国から来ているから、その辺が日本とはかけ離れていますね。
英語がうまく話せない王もよくいた時代だったんですね~。

教会の悪魔とは、とある教会が悪魔崇拝の巣窟でもあったという史実に基づく~というんですから!何とも荒けずりで不穏当な時代。悪魔というのはキリスト教以前の宗教ということらしい。
アキテーヌ公でもあるエドワードは、つまりアリエノール・ダキテーヌの子孫って事ですね。
リチャード獅子心王、ヘンリー3世の次。
巻末のイギリス史解説が親切です。

2007年10月30日 (火)

「毒杯の囀り」

ポール・ドハティ「毒杯の囀り」創元推理文庫

中世イングランドを舞台にしたミステリ。
若き修道士が探偵役で、当時の猥雑な様子がまざまざと描かれます。
フランスとの百年戦争が終わる頃、王太子と王が相次いで亡くなり、10歳の王子が跡を継いだばかりという時代~摂政の叔父が力を持つんですね。
エドワード王ってどのエドワード?って感じで~馴染みのない時代なので取っつきはそれほど良くないけど、人間像はわかりやすく、ミステリとしては本格の密室もので、予想より読みやすく整理されてました。

アセルスタン修道士は償いの一環として、特に貧しい地区の教会を担当する他に、検死官の書記も務めることになるのです。
アセルスタンはすっきりとした姿の真面目な好青年。
上司にあたる検死官クランストン卿は大酒飲みの巨漢で、おならや何やらをまき散らし~豪放でいささかだらしないけれど、内心は優しいんですね。
対照的な2人はすぐには理解し合えないけど、しだいに何となく良いバランスになっていくようです。
こういうコンビはいかにも英国的。
アセルスタンは若気の至りで修道院を飛び出して弟と戦地に赴き、弟を死なせてしまった過去を持っています。
修道士カドフェルが定年というほどの年齢まで十字軍の軍人だったことを思わせますね。こちらはぐっと若いですが。

邦訳一作目の「白薔薇と鎖」はかなり読みづらかったんで、歴史ミステリなら何でもむさぼり読むという人でないとオススメ出来にくかった…
こちらはずっと読みやすく、読後感も良いので、オススメ出来ます~。

2006年6月12日 (月)

「白薔薇と鎖」

ポール・ドハティ「白薔薇と鎖」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

ヘンリー8世とエリザベス1世の時代を生き抜いた快男児ロジャー・シャロットの回想という形で語られる、連続殺人事件をめぐる歴史ミステリ。
ロジャーの主人ベンジャミンは枢機卿ウルジーの甥で、色々な任務を与えられますが何故かことごとく失敗、実はロジャーのちょっかいが原因のことも多いのですが~ロジャー無しではいられぬという友情を抱いている間柄。

ヨーク家のリチャード3世が敗れてテューダー朝になって2代目、若き日のヘンリーは英明と期待された王でした。(晩年は違うんですね)
ベンジャミンが話を聞き出すよう命じられていた証人が、謎の詩を残してロンドン塔の密室で殺されます。当時のロンドン塔はまだ牢獄ではなく宮殿の一つ。死体のそばに置かれていた白薔薇はヨーク家の印で、ヨーク家の残党が関係したかとも疑われます。

ヘンリー8世の姉マーガレットはスコットランドに嫁いだものの夫と仲が悪く、夫の死後も国には戻らず、各地を転々としている有様。
登場人物の関係は入り組んでいて、背景も知らないため話がわかりにくいのですが~マーガレットの悪評は事実だったそうです…
メアリー・スチュワートの曾祖母に当たるそうで、この辺から始まっているのねと興味深かったです。

ロジャーは隙あらば自分の取り分を余計にちょろまかそうとばかり考えている小悪党だが、それ以上の悪気はない。もともと幼馴染みでもあった主人のベンジャミンは対照的におっとりと誠実、坊ちゃん育ちに見えて底が深い。このベンジャミンに対してだけは忠実で良き友でありました。
シェイクスピアの同時代人というわけで、アイデアをやったという話も何度も出てきます。
90になってもあらゆる欲が衰えないロジャー爺さん、ほら混じりに威勢良く喋る口調で書かれているのがやや読みにくいですが、内容も時代色たっぷりで現代とはかけ離れているので、それがまた合ってることは合ってます。

ドハティはもと歴史教師の校長先生で既に50冊近い著作がある作家。こんな先生なら面白い授業だったでしょうね~。

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