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おすすめ本

2013年6月 1日 (土)

「殿下とパリの美女」

ピーター・ラヴゼイ「殿下とパリの美女」早川書房

殿下シリーズ3作目。
ラヴゼイのユーモラスな歴史ものミステリです。

19世紀末。
英国皇太子バーティ(ヴィクトリア女王の長男)は、パリを訪れていました。
ムーラン・ルージュで事件が起こり、皇太子は旧知の女優サラ・ベルナールと共に、謎を解明しようとします。
パリが大好きな遊び人のバーティ。
秘書官の目をくらまし、御付きも連れずにあちこちに出かけます。

長年の知り合いである伯爵家の娘ロジーヌの婚約者が、ムーラン・ルージュで射殺された事件。
大人気のダンサー、ラ・グリュが派手な登場をしている最中で、皆押しあいへしあいして見ようとする人ごみの真っ只中だったので、誰も人がしていることは見えなかったという。

じつは婚約は親が話を進めたもので、ロジーヌは画家に熱を上げていたため、その画家が逮捕されてしまいます。
バーティはサラと警察を尋ね、画家に面会し、背景を探ることに。

ムーラン・ルージュの華やかな賑わいの様子や、画家のロートレックとの出会い。
貴族出身の画家ロートレックの骨折で足が短い姿には驚くが、実際には身長は低いといっても160センチぐらいはあったというのに、こちらがびっくり。
サラ・ベルナールとの恋の駆け引きなど、当時のパリの雰囲気がたっぷり。
豪華な食事は一緒に楽しむものの、皇太子の華麗すぎる恋愛遍歴がサラに指摘されて、なかなか上手くはいかないのですが。
サラは「神のごときサラ」と世界的に評され、素晴らしい声をしていて、殿下は初めて舞台を見たときから、虜に。
すでに関係があると大方からは思われているのに、実は違ったという。

保養地にいる皇太子の妻アリックスとは、長々と手紙を書きあっています。
これは実際にそういう感じだったんでしょうね~。事件にかかわるなとアリックスが心配するのはフィクションとしても。
1993年の作品。

2012年12月27日 (木)

「殿下と騎手」

ピーター・ラヴゼイ「殿下と騎手」ハヤカワ・ミステリ文庫

ヴィクトリア女王の皇太子バーティが探偵役。
ピーター・ラヴゼイの歴史ミステリ。
ヴィクトリア女王の本を読んだので~手持ちの本の再読です。

1886年11月、皇太子はすでに45歳。
ヴィクトリア女王は68歳で即位50周年を前にしていました。
25年前に夫が亡くなった後は喪服姿で閉じこもり気味なのですが、皇太子には政治に参画させない。
バーティことアルバート・エドワード(後のエドワード7世)は遊び上手で明るく、国民には人気がないでもないが~尊敬はされていないかも。
ダービー優勝馬を3度も出しているというのは、たいした遊び上手!

名騎手のフレッド・アーチャーが自殺。
前月のレースで、本命視されながら、穴馬に敗れていました。
腸チフスでの一時的錯乱という評決に疑問を抱いたバーティが、周辺を探ります。
(この自殺事件は実際にあったことだそう)
アーチャーは天才肌で、その性格描写は全く良い所なしで1ページも続くのだけど、自殺するようなタイプではないということ。

莫大な物と思われた財産は、その何分の一しかなかった。
一体、何に使ったのか?
賭け事説、恐喝説も出るが…
お忍びで、アーチャーと親しかったバックファスト大佐を引き連れて街へ出て証拠を探し、容疑者のライバル騎手アビントン・ベアードの愛人マートルの話を聞きに、場末の劇場へも出かける。
マートルは、オウムを使う手品師でした。
ベアードはアマチュア騎手だが柄が悪く、何をするかわからない男。アーチャーに憧れて近づいていたが、共同事業を断られたという。
馬主のキャリー・モントローズ公爵夫人は、68歳だが、アーチャーとの結婚を考えていたらしい。
(この女性も実在して、70歳で別な男性と三度目の結婚)

捜査の渦中で手に入れたオウムを、王妃の誕生日プレゼントにちゃっかり流用するバーティ。
これが「プリンス・オブ・ウェールズ万歳!」と叫ぶため、長いこと練習させたのは愛情の証しと、王妃を感激させることに。
(これも実在したオウム!長生きしたそうです)

気むずかしいヴィクトリア女王の機嫌取りに苦労するバーティ。
信頼されない理由もあったんですけどね。しかし、次弟の方がまだ少しは権限を与えられていたとは。
バーティの長男にはやや問題があり、新聞にも悪評が出ていて、憤慨したり。(この長男は切り裂きジャック事件の犯人説も出た人)
けっこう苦労してるんですね。

最初に読んだときには、王妃のアリックスとの間にはまったく愛情がない印象でした。
大人になってから読むと違いますねえ。ちょっと困った旦那さんだけど、夫婦愛はある様子。王妃の方に恋人がいるというのには驚き。プラトニックなので気にしないと皇太子。

皇太子の性格から来るのか?軽やかな雰囲気で~ユーモラスな冒険物になっていて、史実を程よくちりばめていく着実さで、安定した読み心地。
時代的には、まさしくホームズもの最初の作品発表(1887年)直前。この時代に興味があれば、なお面白いです。

著者は1936年生まれ。
「死の競歩」「マダム・タッソーがお待ちかね」とヴィクトリア朝を舞台にした作品からスタートしたラヴゼイ。
歴史ミステリが多く、ほかに後のダイヤモンド警視シリーズでも知られます。

2008年7月 8日 (火)

「殺人作家同盟」

ピーター・ラヴゼイ「殺人作家同盟」早川書房

ラヴゼイの2005年の作品。日本での発行は2007年。
ダイヤモンド警視が探偵役ではないが、前作で共演のヘンリエッタ・マリン警部が捜査の指揮を執ります。

チチェスターにあるアマチュア作家サークルに、妻を亡くして3年のボブが、娘に勧められて顔を出してみます。
いぜん講演に来たことのある出版者ブラッカーが家に放火されて死んだばかりで、なんとサークルの会長が事情聴取され、逮捕に。
どうもブラッカーというのがあくどい人間で、おだて上げて本を出すようなことを言いながら~実は詐欺まがいの自費出版だったらしい。
紳士的な会長モーリスは女性会員の人気者で、会長の無実をはらそうと、会員はてんでに捜査を始めます。
そして、また起こる殺人事件。

未解決の事件について書いていた会長のモーリス、伝記を書いていて会計と書記をつとめる地味な中年女性、ちょっとエロっぽい詩を書く元気な女教師、RPG風ファンタジーを書いているオタクな若者(実は一番才能がある)、暮らしの知恵をまとめた教会執事の未亡人、ロマンス小説を12作書き上げた女性、自分は作品を書かずに言葉の間違いを指摘するだけの役所勤めの男性、来てもメモにいたずら描きをするだけの金髪の若い娘…
癖のある会員を調べ上げる捜査員もまたそれぞれ特徴があり、両方の側から描かれる顛末がなかなか読ませます。

ラヴゼイほどの手練れにしては、ちょっと詰めが甘いというのか?ボブのキャラクターが掴みにくいので入りにくいのが難。
女性達にすぐ信頼されるほどの人間なら、もっと魅力的であっても良いのになあ…?
ミステリとして十分、水準は行ってます。

2005年10月18日 (火)

ボートでご一緒に

ピーター・ラヴゼイ「絞首台までご一緒に」ハヤカワ文庫

クリッブ部長刑事&サッカレイ巡査を探偵役とするシリーズのうちの一冊。
ヴィクトリア朝を舞台にした歴史ミステリです。

タイトルではブラックユーモア漂う短編集かと思いましたが、実はジェロームのユーモア小説「ボートの三人男」を題材にした作品。
その点ではコニー・ウィリスのあの名作「犬は勘定に入れません」と同じ。

ですが~こちらは「ボートの三人男」が1889年に発表されて大人気を博した頃の話で、小説通りにボートでテムズ川を下るのが流行っていたというのが面白い。

ヒロインはうら若き学生のハリエットで、その視点から入っていくために他の作品より若々しい雰囲気で、やや軽めの楽しい話になっています。
大人しい優等生だった彼女が級友にそそのかされて、テムズ川で夜中に裸で泳ぐという企画に乗ったのが運の尽き?
死体を発見してしまい、目撃者としてボートに乗って容疑者を追い続ける警察と行動を共にすることに…

堅苦しい時代だったにもかかわらず、というか、だから余計やりたくなるものなのか?名門の淑女が川で泳ぐというのは大変なこと。
もちろん退学ものなんですが~。
「ダロウェイ夫人」の中にも若い頃の回想で、裸で走り抜けるいたずらがあったのを思い出します。

クリッブ部長刑事のことが名前は覚えがあるけどキャラクターがはっきりしないので(…き、記憶力が…)
リストを調べたら、「マダム・タッソーがお待ちかね」が最終作に当たるとか…えええ、だいぶ前ですよね。あの~サントリーミステリー大賞か何かの受賞作じゃなかったでしたっけ…

調べたら83年でした。これだけハードカバーを図書館で借りて一度しか読んでいなかったために、頭の中で別枠になってたようです。

ラヴゼイは「贋のデュー警部」「キーストン警官」からの文庫の方が私の中ではイメージが繋がってます。
短編集が面白いし、軽妙なバーティ殿下のシリーズがお気に入りだし、ダイヤモンド警視のシリーズも「最期の声」まで読んでいるんですよ。

好きな作家のうちに入ると思うのに~(き、記憶力に問題が…)
読んでないらしい物をリクエストして読んでみます~。

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