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2016年6月25日 (土)

「消えた修道士」

ピーター・トレメイン「消えた修道士 <上下>」創元推理文庫

修道女フィデルマ・シリーズ、7作目。
兄である王と王国の窮地を救えるか?

7世紀のアイルランド。
フィデルマは修道女であり、高位の弁護士でもあります。
国境で何かと揉めてきた隣接する部族と和平協定がなり、大族長が訪れます。
ところが、行列に何者かが矢を射かけ、大族長が怪我をしてしまう。
互いに陰謀と非難しあう騒ぎとなります。
この場合、招いたほうであるモアン王国のほうが、不利な立場に。

証拠の品の出所を追って、フィデルマは相棒エイダルフと共に旅立ちますが‥?
イムラックの大修道院では、貴重な聖遺物が紛失していました。
保管を担当していた修道士が失踪してしまったという。
調査を依頼されたにフィデルマは、妙な事実に気づきますが‥

修道院のある町には、いろいろな人が出入りしていました。
思わぬ襲撃を受けて町は大荒れとなり、人々の心のよりどころが失われそうになってしまう。
王国の平和と威信を取り戻そうと奮闘するフィデルマ。
王の妹で、頭が切れる超秀才で高位の資格を持ち、しかも活発な美人というフィデルマですが、大の男が束になってもかなわない難題を解決する役立ちぶりは立派。
教授でもあった作者にとっては、愛弟子のような感覚で自慢したいのかな。

当時のアイルランドでは、実は修道女でも結婚できるんですね。
捜査のときのよき相棒だったサクソン人の修道士エイダルフとの仲は‥?
今回、さらっと離れてしまいそうですが~
怖いものなしのようなフィデルマのさっぱりしすぎの性格、口にできない思いと恋愛下手、これが実は弱みかも。
いやまた出会うのは間違いないと思うけど、どこでどんなふうにか?
気が揉めますね(笑)

2015年10月29日 (木)

「翳深き谷 下」

ピーター・トレメイン「翳深き谷 下」創元推理文庫

修道女フィデルマのシリーズ、長編6作目、後半。
7世紀アイルランドでは、独特な法律があり、女性がかなり活躍していたという。
そういう史実を踏まえて、もともと学者の作家がヒロインを誇らしげに活躍させています。

ただの若い尼さんではなく、学問好きで修道院で深く学び、高位の資格を持つ弁護士という。
しかも、王の妹という血筋と立場まであり、いよいよというときには水戸黄門の如く持ち出せる。
スーパーウーマン過ぎるみたいですが、いっそそれが潔く、かつまた未開の地では必ずしも全てがプラスに働くわけではない‥!?

今回は相棒のエイダルフがだめだめなところから逆転、智恵を働かせてフィデルマを救います。
当時は聖職者でも結婚を禁じられてはいない、男女が共に暮らして子を育てる修道院さえあったという。
とはいえ、司教などは独身が好ましいとも思われていました。
エイダルフは将来を期待されている身だろうし、他国の王の妹に好意を示すのは難しいかも?
そのへんの微妙さがあって、フィデルマがエイダルフに「独身主義かと思っていた」とチラッと言う場面もあり、ほほぉ~ツンデレの彼女としては精いっぱいの、ほのめかし?(笑)

前半のいろいろな描写も、伏線がするすると謎解きされていくので、当時の雰囲気を出しただけじゃなかったとわかります。
面白く読めました☆

2015年10月27日 (火)

「翳深き谷 上」

ピーター・トレメイン「翳深き谷 上」創元推理文庫

修道女フィデルマのシリーズ、長編6作目。

7世紀のアイルランド。
フィデルマは修道女であり、高位の資格を持つ弁護士でもあります。
今回は、モアン国王である兄に、辺境の地への使者を頼まれることに。

キリスト教がだいぶ普及し始めている時代ですが、まだ全土には及んでいない頃。
禁忌の谷とされるグレン・ゲイシュは、古代の神々を信奉する土地でした。
族長ラズラが、キリスト教の教会と学問所を建てることを考えているということで、フィデルマはサクソン人の修道士エイダルフと共に、その具体的な折衝に出かけたのです。
ところが反対勢力は根強そうで、反感の目を向けられることに。
しかも、キリスト教徒とはいっても教えの異なるローマ派の修道士も来ていて‥?

閉ざされた砦に入る前に異様な事件に出くわし、さらに事件が‥!
フィデルマは、これまでにない窮地に追い詰められます。
時代色たっぷりの濃厚な雰囲気と、のんきで頼りない相棒のエイダルフがえらく対照的。優秀な人のはずなんだけど‥ 宴会の二日酔いが抜けない有様(笑)
美貌で才知溢れるフィデルマですが、生真面目で隙がなさ過ぎるので、こういう相棒がいいのか?
このエイダルフがのちに意外と活躍するため、好印象な展開になりますよ!

2013年7月15日 (月)

「修道女フィデルマの探求」

ピーター・トレメイン「修道女フィデルマの探求」創元推理文庫

シリーズも8冊目になりました。
美女フィデルマがつぎつぎに事件を解決します。
いつも水準を行く作品なので、今回も楽しめました。

フィデルマは7世紀アイルランドの修道女で、まだ20代半ばの快活できりっとした赤毛の美女。
ドーリィーという法廷弁護士でもあり、しかも上位で裁判官も出来るアンルーという資格も持つ。
若い尼さんと軽く見る相手も、これを知ると渋々礼儀正しくなり、さらにバリバリ謎解きされて、ははーっとおそれいることになるのです(笑)
修道院で事件があると捜査のために派遣されたり、たまたま訪れていた先で一人で事件を解決しちゃうことも。

修道院内部の事件が一番多いため、続けて読むと、修道院は悪と危険の巣窟みたいな気になってくるのが、ちょっとナンですけど~(苦笑)
この短編集は、最初は出先での事件いくつか。
最後に旧知の間柄で良き理解者の修道士が出てくる中篇で、あたたかみのある展開になります。

フィデルマはモアン王国の王家の出で、先王の姪であり、さらに途中からは兄が王位についているというバックがあります。
これは作品によっては、自分から言う必要もないことだから?出てこないのですが。
アイルランドは五王国の時代。
古代アイルランドでは、女性に男性とほぼ同等の教育の機会があり、弁護士として活躍することもできたというのが作者は誇らしそうです。

うら若い王家の美女がなぜ修道女なのか?というのが最初は疑問でしたが、頭のいい女性が勉学を極める道として不思議ではないよう。
当時の修道女は、男女がともに住むタイプの修道院で結婚生活を送ることも出来た!というのもポイントですね。
今回はエイダルフ修道士が出てこないので、ツンデレ?なフィデルマの恋愛方面は進展ありませんけど。

フィデルマのシリーズは、最初の2冊が最近になって翻訳されました。
原作の発表順から行くと~        ↓()内は翻訳発行
「死をもちて赦されん」  1994年9月  (2011年3月)
「サクソンの司教冠」   1995年1月  (2012年3月)

「幼き子らよ、我がもとへ」1995年10月 (2007年9月)
「蛇、もっとも禍し」    1996年7月   (2009年11月)
「蜘蛛の巣」        1997年4月   (2006年10月)
日本ではこの「蜘蛛の巣」が最初に翻訳されました。
この後、3作出てますが翻訳はこれから。

2000年3月発行の短編集を、日本では3冊に分けて発行してあります。
「修道女フィデルマの叡智」        (2009年6月)
「修道女フィデルマの洞察」        (2010年6月)
「修道女フィデルマの探求」        (2012年12月)つまりこの本です。
作品はWikiでみると21冊もあり~順調に出ているようなので、続きも楽しみです☆

2012年10月25日 (木)

「サクソンの司教冠」

ピーター・トレメイン「サクソンの司教冠」創元推理文庫

7世紀アイルランドの修道女フィデルマが活躍するミステリ。

初めてローマを訪れたフィデルマ。
所属する修道院の目録を、ローマ法教皇に認めて貰うため、という使命をになっての訪問です。
フィデルマは20代後半で、弁護士資格も持つ、さわやかな美女。
前作で出会ったエイダルフ修道士の一行と共に、ここまで無事に旅をすることが出来ました。

ところが、ローマの地で、事件が勃発。
カンタベリー司教に決まっていた人物が、殺されたのです。
ローマに奉納するはずの宝物が、盗まれていました。
アイルランド人の修道士が不審な行動をしていて、すぐに逮捕されましたが、事実関係が確かでないと、アイルランドとサクソンの間に戦いが起こりかねない事態に。
フィデルマはエイダルフと共に、捜査に当たることになります。

ローマには、各国からの訪問者が滞在していて、国際色豊かな場となっていました。
次期カンタベリー司教の座を待ち望む野心家の修道院長や、そのまた後を狙う修道士。
ケント王妃の妹で権高な尼僧院院長など。
それぞれの下で働く修道士にも、個性があります。

フィデルマとエイダルフは、互いにほのかな好意と強い信頼を抱いていますが、今回の事件ではちょっと意見が分かれる。
犯人は自明だろうと考えるエイダルフ。
その思いこみにやや苛立ちながら、正確に一歩ずつ進めようとするフィデルマ。
言い争いになると~いたずらっぽい笑顔で空気を変えようとするフィデルマは、ちょっとツンデレ?
フィデルマの方が正しいとわかったときに、エイダルフが怒らずにむしろ嬉しそうなのが印象的です。

エイダルフはサクソンの修道士で、ケルト系のアイルランドとは修道院のやり方にも違う部分があります。
サクソンというのは、当時のイングランドの支配階級といった感じでしょうか。後にノルマンに征服されますが。
どこの教会もローマに発しているので、ローマの権威は認めていますが、各地の風習と融合して独自に展開した部分もあるのですね。

フィデルマの過去の恋愛の話なども出てきます。
若い頃に恋人が出来たが、その別れの苦しみがいまだに完全には治っていない。
その後も何度か短い付き合いはあったという~修道女とも思えない発展ぶり。
優秀さが仇となって、やや恋愛経験の少ない現代のキャリアウーマンと、まったく同じ?!
意外に近いのだと言いたい設定なのでしょうか。

何冊も翻訳されて出ている人気シリーズですが、これ実は長編2作目。
1作目がこの前に発行されました。
長編の1作目、2作目は日本人にはとっつきにくいであろうと後回しにされたようです。
1作目は有名な公会議が舞台で、欧米の人なら元々ある程度知ってはいるんでしょうね。有名といっても日本人にはねえ…

当時の修道士や修道女は、結婚も出来るんですね。
僧院長など高い地位の場合にだけ、独身が奨励されていた。
最初から男女が一緒に暮らして、集団で子どもを育てるシステムになっている修道院さえある。
しかもアイルランドでは意外に女性の地位が高く、資格を取れば同等に働くことが出来る。これはローマ人には驚きの制度のよう。
フィデルマは弁護士資格を持ち、それが裁判官も出来る高位のもの。
しかも実は、王家の血筋という無敵な設定。
利発な少女は、師に可愛がられたのでしょうね~。

でも、出向いた先ではアウェーなので、孤軍奮闘あちこちで偏見にさらされるんですよ~。
そのへんもある意味、現代的?
依頼に応じて、難題に立ち向かい、捜査のために馬車を走らせて危険な土地や洞窟にまで赴き、時には大立ち回り!
偉そうにしている方々にはない能力を駆使して。
ついには、フィデルマの裁定を認めさせるのです。
今回も、助手を務めるローマ人の衛兵隊の小隊長が、次第に感服した様子になるのも面白い。

癖の強い登場人物がそれぞれに欲望に負けたり、馬脚を現したりする中で、フィデルマの清新さが一筋の希望のように感じられ、さわやかな後味を残します。
1995年の作品。
2012年3月翻訳発行。

改行が表示出来なくなってしまいました!
間違って触れたら、戻せなくなって…
ズレを補正出来るとかいうアイコンなんだけど。いらねー!
もう一度押したら戻せるようにしておいて欲しかった。
う~ん…??

あ、最後のだけ改行出来てる?

ツールバーで指定を解除してみた!のに…??

2011年8月13日 (土)

「死をもちて赦されん」

ピーター・トレメイン「死をもちて赦されん」創元推理文庫

7世紀アイルランドの修道女フィデルマのシリーズ。
第一長篇がついに登場!
フィデルマは若々しく、さわやかな美人で、鋭い知性に恵まれています。
修道女にして、高位の法律家。
中世のアイルランドでは、意外にも開明的な法律が整っていて、女性に教育の機会が与えられ、男性と同等の資格も得られたんだそうです。
高位の法律家は、王の前で自分から話すことも出来ました。

サクソン人の国ノーサンバランドを訪れるフィデルマ。
ノーサンバランド王国の王は、オズウィー。
現王妃とその息子、前妻の子である長子アルフリスとの間の勢力争いも影を落とし、その地には緊迫した空気が渦巻いていました。

有名らしい?ウィトビアの教会会議(シノド)が行われた時期。
キリスト教の儀式などのやり方について、各国で違いがあり、どちらを取るかが論争になったのです。
ウィトビア修道院の院長はヒルダ。男女の修道士が共に暮らす修道院でした。当時は修道士が結婚することも、子供を育てることも可能だったのですね。
ただ院長だけは結婚しなかったらしい。

アイルランド派は、アイオナ派ともいうそうです。
フィデルマはこのアイオナ派ですが、尼僧として意見を言うわけではなく、法律家として助言が必要な場合のために呼ばれていました。
会議初日、アイオナ派として弁論に立つはずだった女性修道院長エイターンが殺されているのが発見されます。
反対派の謀略か、それとも…?
エイターンとは旧知のフィデルマは、前日に、院長を辞めることを聞かされていた…

修道士エイダルフとも、この作品で初対面。
ローマ派のカンタベリー大司教に随行してきたのです。
公平さを期すため、王の命令で、フィデルマと共に調査に当たることになります。
全く違う育ちと経験をしているサクソン人ですが、どこか通じ合う物を感じる二人。
横暴なサクソン人らに嫌悪を感じていた勝ち気なフィデルマも、ためらいながら心を開き始めます。

1994年の作品。
舞台がアイルランドではなく、異郷に若い女性が訪れた状況。
宗教会議というのがややこしいけど~修道士が次々に危険な目に合うのは「薔薇の名前」っぽくて意外にイメージしやすい?
この作品ではまだフィデルマの兄が王ではなく、確実な後継者でもないので、王の妹であるという「この印籠が目に入らぬか~」状態は起きません。

2011年1月 2日 (日)

「修道女フィデルマの洞察」

ピーター・トレメイン「修道女フィデルマの洞察」創元推理文庫

日本で編まれた短編集の第二弾。
さっそうと事件を解決するフィデルマ修道女。
フィデルマが若い頃の初期の事件も含まれ、興味深く読めます。

7世紀という古い時代に、アイルランドでは、女性が案外活躍していた事実を背景に。
それにしても、若い美女で高位の弁護士資格を持つというのは珍しかったことでしょう。
高位の弁護士は王の前で椅子に座り、話しかけることが出来たというのも、法律が重んじられていたということでですね。

「毒殺への誘い」は、族長が客を呼んだ会食の席で。
強欲で嫌われ者の族長が招いた客は、最初の妻をはじめとして、彼に恨みを持つ人間ばかり。謝罪したいというのですが‥?
そこで殺人が!

「まどろみの中の殺人」は、眠っている間に殺人が…
まじめな若い修道士が目覚めたときには、横に女性の死体、服と手には血が付いていました。
当時、犯罪はお金で償われることが多かったという風習も興味深い。
フィデルマの推理は?

「名馬の死」は競馬場で。
ラーハン王の名馬と張り合って損をし続けていたブレッサル大司教。
王の騎手になっているイランが、元は大司教の騎手だったことから執念を燃やしていました。そのイランが殺され‥?
当時のアイルランドで、こんなふうに競馬に人気あったとは。

「奇跡ゆえの死」は、アイルランド南西の孤島で。
訪れていた女子修道院長が崖から転落死。
その地域一帯の大族長の元に滞在していたフィデルマが派遣されます。

5編収録。
謎解きは、だんだんフィデルマの行動に誘導されていくうちにわかってくる感じですが。
歴史ミステリの手堅い味わい。

2010年3月19日 (金)

「蛇、もっとも禍し」

ピーター・トレメイン「蛇、もっとも禍し」創元推理文庫

フィデルマのシリーズ3冊目。
ちょっと前にご紹介した短編集「修道女フィデルマの叡智」を別にして、「蜘蛛の巣」「幼き子らよ、我がもとへ」に続く長篇。(翻訳順で)

女子修道院の井戸で死体が発見され、尼僧にして法律家でもあるフィデルマが派遣されます。
若く美しいフィデルマは、ドーリィーという法廷弁護士の資格を持ち、しかも上級のアンルーという位にありました。

依頼されて向かう途中の海路で、漂流しているゴールの商船を見つけ、無人なのに驚きます。
しかもその船の中には、かってフィデルマが修道士エイダルフに送った本が‥!
1年半も会ってはいないのですが、信頼し合う仲の彼の身に何かが?
乗ってきた船バルク(小型帆船)の船長ロスに、フィデルマは海岸線の調査を頼みます。

さて、事件現場の女子修道院の院長ドレイガンは、向かい合う土地の代官アドナールとなぜか激しく対立しています。
実は兄妹で、過去に確執があったのでした。
断崖や海岸線など風景描写も魅力的。作者自身が子供の頃によく行った土地だそうです。

7世紀のアイルランドという時代が興味深い。
「三つの泉の鮭」という修道院の名前も面白いですが、これはキリストを指す異名の一つ。実際にこの地には三つの泉があることにもかけてあるとか。

王の妹でもあるフィデルマは、地方の反乱の兆しに驚愕することに。
古代文字を書いた札を腕に結びつけられていた死体。
発見者を殺人犯と決めつける若い修道女達が騒動を起こします。
修道院に時折響く~怪しげな音。
代官のもとへ向かうフィデルマを襲った貴族達は…?
この地で何が起ころうとしているのか?
色々な要素があって、盛り上がります。

嫌な人間が多いんですが、その理由がわかってくる場合も‥
船長のロスなどはいい人!
修道士エイダルフとの再会が嬉しい。
この時代の修道院では結婚が認められ、子供をその中で育てていたというのにはびっくりでした。
エイダルフとの関係も、心に秘めた思いだけでなくてもいいわけなのね‥国籍違うし、ゆ~っくり進みそう?

2010年2月 8日 (月)

「修道女フィデルマの叡智」

ピーター・トレメイン「修道女フィデルマの叡智」東京創元社

まだ若く美しい女性フィデルマ、じつは修道女であるだけでなく、高位の資格を持つ弁護士。
しかも、王の妹という印籠のごとき強みまで持ってるのでした。
ここまで強みで固めなくてもという印象がちょっとありますが、功成り遂げた学者の作者には、この頭のいい女性が娘のように可愛くて仕方がないのかな?

とはいえ、フィデルマも最初の出会いはたいてい侮られます。つまり現代同様?
ですが、次第にその名が鳴り響いていくのですね。
アイルランドの7世紀という古い時代に、実際にも女性がかなり活躍していたというのは頼もしい。
作者はアイルランドに誇りを持ってるのでしょうねえ…

「聖餐式の毒杯」は、ローマを訪れた若きフィデルマが礼拝堂に行ったときに出くわした事件。
同席の若者が死んだために、謎を解く立場になります。

幼なじみの女性が容疑をかけられて、その救援に駆けつける話。
偶然立ち寄った雪の宿での幽霊騒動に巻き込まれる話。
アイルランドの大王(ハイキング)継承にまつわる事件に挑む話。
代々の王が眠る墓地の封印されたはずの廟所で発見された死体を巡る事件~とバラエティに富んでいます。
大王の剣とか、代々の墓所とか、存在も知らなかったことに光が当たり、雰囲気たっぷりにありありと描かれているのが嬉しい。
ミステリとして変化があって面白く、歴史物としても興趣深く読める、しっかりした短編集です。

2008年1月21日 (月)

「幼き子らよ、我がもとへ」

ピーター・トレメイン「幼き子らよ、我がもとへ」東京創元社

アイルランドの修道女フィデルマをヒロインにした歴史ミステリ。
うら若い美女ですが、高位の資格を持つ裁判官でもあり、支配権の絡む地方の争いを調べに、事件の起きた名門の修道院へと赴きます。
荒涼とした土地の描写に歴史物らしいムードがあり、危機感迫ります~貴重な本が集められた修道院に危険の匂いがぷんぷんするのは「薔薇の名前」的?

2冊目の翻訳ですが順序通りではない模様。(この前のが4冊目で、これが3冊目?)
7世紀とは古すぎて~知らない時代ですが、これがなかなか面白い。
当時のアイルランドは意外にすぐれものの法律が整備されていたんですね!

とはいえ、若い女性と見て侮る悪党共は数知れず。
フィデルマが王の妹(この作品の途中で王になります)と知って、しぶしぶ敬意を示すあたりは水戸黄門的?
修道士カドフェルがお好きなら、ぜひご一読。気の強い若いヒロインが活躍するのが好きな方にも。この尼さん、馬も乗りこなすし、護身術も使えるんですよ。
真っ直ぐな若さがみずみずしいけれど、いささか性急な行動をとってしまう展開は、頭が良く身分の高い恵まれた女性が、これから荒波に揉まれて成長していく含みを持たせたものでしょう。
それにしても初登場した作品もローマが舞台という変わった設定なので、読んでみたいですねえ。

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