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2012年12月30日 (日)

「マルベリーボーイズ」

ドナ・ジー・ナポリ「マルベリーボーイズ」偕成社

イタリア人の男の子が、たった一人、ニューヨークで生きていく。
ドナ・ジョー・ナポリが、自らの祖父をモデルに描いた小説。

イタリアのナポリに住むユダヤ人の少年・ベニアミーノは、9歳。
ある日、母が新しい靴を買ってくれました。
港に連れて行かれ、理由もわからずに貨物船に密航して、たった一人でアメリカに渡ることに。
母は「生きのびること、それがお前の仕事よ」と‥
職に困っていた母は思い詰めて、アメリカでの未来に賭けたのです。

船の中でドムと名を変え、子どもの出来る仕事をして、精いっぱい役に立つようになる。
そのまま密航して、ナポリに帰るつもりだったのです。
そうはいかずに、一人で港近くをさまよい、樽の中で寝ることに。
1892年のマンハッタンは、アメリカに渡ってきた移民で溢れていました。
イタリア人の集まっているマルベリー・ストリートへ行くが、そこでもユダヤ人とは名乗れない。

ドムは、ちょっとだけ年上の二人の少年と知り合います。
道端で口笛を吹いている痩せこけた男の子ティン・パン・アレイは、道行く人にカップに硬貨を入れて貰っていました。
もう一人知り合ったガエターノは、ティン・パン・アレイを物乞いといい、悪どいパドローネに使われているという。
パドローネとは、貧しい子ども達に物乞いをさせている元締めでした。
ドムは、どちらも友達だと思うのですが。

目端の利くガエターノに色々なことを教わりつつ、ドムは自分でも次第に世の中のことを知っていきます。
祖母に教わったことを思い出して、青物屋のグランディネッティの店を手伝ってみせる。
場所によって値段が違うことに気づいて、サンドイッチを安く買ってウォール街で高く売ることを思いつき、ガエターノと商売を始めるのです。
失敗も重ねつつ、だんだんと街に溶け込んで、大きくなっていく。

はらはらの冒険物語として読めます。
こんな子どもがと思うと胸が痛みますが、生きていくコツを心得ていくたくましさには脱帽。
明るい未来だけの話ではないけれど、仲間や世話をしてくれる人もちゃんと出来ていくんです。

ファンタジックで味わい深い童話の再話に才能を発揮してきた著者ならではの語り口。
これは母たちから聞いた祖父の話をもとに、当時の資料を調べて書き上げた物語です。
直接、祖父に詳しい話を聞くことはなかったので、後悔したそう。
母方の祖父は、グランディネッティというペンキ塗り職人で、青果商のモデルに。

ジョー・ナポリというのは変わった名前で、どこから来たのだろうと思っていました。
父の出生証明にある祖父の名は、ドメニコ・ナポリーロ。
祖父はダン・J・ナポリと名乗っていたが、このJが何なのか本当ははっきりしないそう。祖父についての書類は他に何もないのだそうです。
2005年の作品。

2009年1月 9日 (金)

「わたしの美しい娘」

ドナ・ジョー・ナポリ「わたしの美しい娘」

童話の「ラプンツェル」を題材にした再話。
舞台は、16世紀半ばのスイス。
ツェル(ラプンツェルの愛称)は、ゆたかな金髪で濃い眉のチャーミングな娘。
母と二人きり睦まじく、山の斜面の牧草地でヤギを飼い、暮らしていました。
13歳の誕生日を前に街の市へ行って、伯爵の息子コンラッドと出会います。

鍛冶屋でコンラッドの馬が脅えていたのを優しくなだめることの出来た少女ツェルと、少女へのお礼に鴨の卵を一生懸命探すコンラッド。
一方、娘の誕生日のお祝いに心づくしの紙やインクを買い、美しい服を縫っていた母親でしたが…

母親は娘を隠すために命を狙われていると嘘をつき、人里離れた塔に閉じこめてしまいます。母を頼りにしながらも、次第に疑い出す娘。
貴族の息子コンラッドの方でも、縁談を断り、たった一度会っただけのツェルを捜し続けていました。

かって魂を売り渡してまで隣家の赤ちゃんを我がものにし、独りで育て上げた母の心も哀しく、愚かでも痛ましい。
時代は違うけれど「八日目の蝉」をちょっと思い出しました。
ラプンツェルって、レタスのことだったんですね!…そういえば、童話はそんな話だったかなあ…
(隣家の若妻がレタスがどうしても欲しくて盗んでしまい、赤ちゃんを奪われるという)
童話のように簡潔に絞られた文章に深みがあり、移りゆく運命と共に流れゆく情景が詩のように魅力的です。

ヘンゼルとグレーテルが題材の「逃れの森の魔女」も良かった作者。
言語学の教授だそうで、5人の子の母でもあり、幅広い著作があるとか。なんとも才とエネルギーに恵まれた人のようです。
もっと翻訳してもらえれば~嬉しい限り。
これは2008年9月発行。1996年の作品。

2006年1月27日 (金)

「逃れの森の魔女」

ドナ・ジョー・ナポリ「逃れの森の魔女」青山出版社

「ヘンゼルとグレーテル」の再話ですが、子供が主人公のメルヘンではなく、魔法使いのお婆さんはなぜ魔女になったかという物語。

森の奥の小屋に住む醜い女性が主人公。
一人で育てている娘を可愛がる優しい母親で、産婆としては有能でしたが、とても貧しかったのです。
悪魔払いもする治療師にならないかという誘いを受けて、自分とは違って美しい娘にもっと何か買ってやりたい気持ちのあまり、しだいに危険な領域に踏み込んで行きます。

魔女として摘発を受け、変身してからくも逃げ延びるが、悪魔のささやきと闘い続ける孤独な暮らしとなってしまう。その辺の生々しさ、残してきた娘を思うこともやめようとする切なさ…
そこへ現れるのがヘンゼルとグレーテル!

意外な発想と感動的な展開で胸を打ちます。
魔女の内面を描いた作品は珍しいでしょう。
薄い絵本を開いたら、入念に描き込まれた油絵が出てきたような、ずっしり重い手応えのある作品です。

読んだのは1月はじめでした(^^)

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