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2018年8月11日 (土)

「ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ」

ゲイル・キャリガー「ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ(英国空中学園譚)」早川書房

ゲイル・キャリガーの2つ目のシリーズ、2作目。
アレクシア女史のシリーズの25年前という設定です。
こちらはヤングアダルトというジャンルだそうで、やや若向きの展開。

19世紀半ばの英国、女性は膨らんだロングスカートのドレスを着ている時代。
おてんばなソフロニアは全寮制の花嫁学校に放り込まれますが、なんとそこはレディとして活躍できるスパイを養成するのが影の役割。
ソフロニアは才能を発揮することになります。

試験で高得点を取りますが、級友たちから浮いて距離を置かれる羽目に。
親友のディミティには謎めいたラブレターが届き、罠ではとソフロニアは気を揉んでいるのに‥
友情や張り合い、試験の緊張など、学園生活のわかりやすい要素も入れつつ、事細かに描かれるファンタジー要素はけっこうコテコテ。
人狼や吸血鬼がいる設定ですが、19世紀的な暗さが何となくマッチしてます。

煤っ子の少年ソープと、ソフロニアに近付こうとする他校の男子など、ほのかな恋の鞘当ても。
最後はドラマが深刻になっていくのか、若い子たちの話だから、そうでもないのかな?
アレクシア女史のシリーズに出てきた登場人物との絡みが楽しい☆

2013年12月 3日 (火)

「ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る」

ゲイル・キャリガー「ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る(英国空中学園譚)」早川書房

ゲイル・キャリガーの新シリーズ1作目。
元気いっぱいの女の子がヒロイン。
アレクシア女史ものと同じ世界設定で、もっと前の時代。
おなじみのキャラの若い頃も出てきます。

ソフロニア・テミニックは、姉と兄弟がたくさんいる14歳。
木登りやメカが好きで、あまりのおてんばぶりを持て余され、花嫁学校(フィニシング・スクール)に入れられることになります。
姉の社交界デビューの舞踏会までに、少しでもましになるようにと。

ところがそこは、上流社会のマナーを学ぶだけでなく、情報収集や毒物や短剣の使い方などを教える学校。つまりはスパイ養成校のようなものだった!
しかも校舎は、宙に浮かぶ巨大な飛行船で、煤っ子と呼ばれる男の子達が、ボイラーに石炭をくべています。
メカアニマルの犬を手に入れたソフロニアは、餌の石炭を分けてもらうため、飛行船の外側を伝って下部まで降りていき、友達を作ります。

吸血鬼や人狼が共存する世界なんですが、ソフロニアはこれまで見たこともなかったのです。
教授陣に一人ずついて、ハンサムな人狼のナイオール大尉は人気者。
同級生には、人狼に育てられたという大柄な少女シドヒーグもいました。

ディミティという親友も出来て、にぎやかな学園生活が始まります。
応接間のような教室で繰り広げられる怪しげな授業が面白い。
事情があって落第して同級になったモニクは美人で優秀だが嫌味で、何か秘密を抱えていました。
飛行船を襲いに来る(海賊ならぬ)空賊が要求している「試作品」とは?
ディミティと一緒に、謎の品のありかを知ろうとするソフロニア。
持ち前の運動能力や機転を生かして、ソフロニアは活躍、次第に認められるようになっていくのです。

あのマダム・ルフォーがまだ子供で登場。
25年ほど前の1851年設定だそうです。
19世紀半ば、女性はコルセットをつけて、ふくらんだスカートを着ている時代、上品に悲鳴をあげたり、何かあれば失神したり。
科学も進歩し始めていますが、スチームパンクなこの世界では一味違う発明が!
メカ犬も愛嬌をふりまきます。
盛りだくさんで濃い~いきいきとした描写の学園もので、楽しみに出来るシリーズです♪

2013年11月17日 (日)

「アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る」

ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、埃及で木乃伊と踊る」早川書房

英国パラソル奇譚」アレクシア女史のシリーズ5冊目。
え、完結しちゃうの~残念!
冒険とユーモアとロマンスと☆いきいきした描写が楽しみなシリーズ。
盛りだくさんな内容なので、どうやってまとめるのかしらと謎でした。

アレクシアの娘プルーデンスは、2歳に。
おしゃれな吸血鬼のアケルダマ卿を乳母?筆頭に、皆が守り育てています。
人狼のマコン卿と、人間だけど反異界族のアレクシアとの間に生まれた子は、触ると相手の能力を奪って変身する能力があったのです。
特に夜の間、吸血鬼に触れば相手は人間になって老い始め、プルーデンスは牙が生えてくるという大騒動。
人狼の父親に触ると、可愛い子犬のような子狼に変身してものすごい勢いで駆け回ることに。
これにも、ある限界はあるのですが。

エジプトの吸血鬼の女王から呼び出しがあり、アレクシアはどういう意味かと不審に思います。
親友アイヴィの劇団の公演に同行するという形で、親子3人でエジプトを訪問。その意外な顛末は‥
アイヴィには双子の赤ちゃんが生まれていて、これも大騒動の一部をにないます。
最高齢の吸血鬼であるエジプトの女王の願いとは?!

ロンドンでは、人狼となったビフィが活躍していました。
最初は好感の持てる脇役に過ぎなかった若者ビフィがだんだん存在感を増し、アレクシアとの繋がりも深まります。
前作で恋人となった人狼団の副官ライオール教授にも、いぜんの問題の決着をつけるときが訪れ‥

気丈なアレクシアが、夫が死んだかもしれないということになると、気力をなくすのも可愛いです。
やや単細胞に思える大男・マコン卿の真摯な思いが切ない。
おさまるところにおさまる大団円。
満足な読み応えでした。

スピンオフのソフロニア嬢のシリーズも翻訳されたので、読み始めています。
娘のプルーデンスが主役になるシリーズもあるということで、まだまだ楽しめそうなのが嬉しい!

2013年7月23日 (火)

「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う」

ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂(うれ)う(英国パラソル奇譚)」ハヤカワ文庫

アレクシア女史の英国パラソル奇譚4作目。
おなかの子を守るためと、女王の暗殺計画を阻止するため、にぎやかな大騒動が展開します。

人狼、吸血鬼、ゴーストという異界族が、人間と共存するロンドン。
ただ一人の反異界族ソウルレスであるアレクシアは、人狼団のボス、マコン伯爵の夫人となりました。
誤解も解けてラブラブに戻り、妊娠8ヶ月になる身重の妻に、マコン卿はすっかり過保護に。
人狼とソウルレスの女性との間に子供が生まれた例はなく、恐ろしい能力を持った存在になる可能性もあるのです。
警戒を強める吸血鬼に狙われ続けるアレクシア。
吸血鬼をなだめるために取った秘策とは?
最長老の吸血鬼アケルダマ卿の力を借りることになります。

一方、消滅しかけているゴーストが必死で伝えてきた警告は、女王が暗殺されそうだという内容。
女王陛下を支える陰の議会は(アレクシアも含めて)バッキンガム宮殿に集い、事態を憂慮します。
捜査を始めたアレクシアは、夫が前にいた人狼団による事件との関連に気づくのです。
男装の発明家マダム・ルフォーもまた、何か悩みを抱えている様子。
絡み合った事件の真相は?
アレクシアは大きなおなかを抱えてロンドン中を移動し、引越しの指揮を執り、破壊力の強いオクトマトン(オクトパス型のロボット兵器)の狙う宿敵を救うべく大立ち回り!

マコン卿が、有能な妻の判断に頼り始めているのもほほえましい。
人狼団の副官ライオール教授の存在が光ります。
きちんとしているがわざと目立たないようにしている、リーダー格の狼の中では一回り小柄な彼。怜悧なライオールの過去が、明らかに! アレクシアの父と、実は?
具体的な描写はないのですが、おおっと、これは‥

3番手の人狼チャニングも出番は少ないけど、やたら見た目がいいのでちょっと楽しい役。
アケルダマ卿が可愛がっていた若者ビフィは、やむをえない事情で人狼になり、不本意な変身を半年たっても受け入れられずに苦しんでいます。その試行錯誤と落ち着く先も興味深いところ。
アレクシアの困った妹フェリシティも、また違う方面でやらかしてくれます。
親友アイヴィは、意外な形でだんだん役に立つように。親友だけのことはありますね。

チビ迷惑はすごい状況で生まれ、その可愛さもさることながら、その能力は?!
満足な読み応えでした!

2013年6月26日 (水)

「アレクシア女史、欧羅巴で騎士団と遭う」

ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、欧羅巴(ヨーロッパ)で騎士団と遭う(英国パラソル奇譚)」早川書房

アレクシア女史の英国パラソル奇譚3作目。
19世紀ロンドンが舞台のにぎやかなファンタジーです。

人狼団のトップであるマコン卿と結婚したアレクシア。
ラブラブだったのですが~前作の終わり、アレクシアの妊娠がわかり、人狼に子が出来るはずはないとショックを受けたマコン卿は、アレクシアをなじってしまう。
実家に戻ったアレクシアを襲う非難の嵐に、さすが気丈なアレクシアもうんざり。
頼みのアケルダマ卿も、突然行方不明に。何かが起こっている?!

異界族である人狼と反異界族ソウルレスとの結婚は、どうなるのか‥
前例はあるのか?
アレクシアは「とんまな夫(笑)の疑いを晴らす」ため、友人達に協力を求めます。
駆け落ちした親友アイヴィも、意外に役に立つのでした。

アレクシアの父はイタリア人で、ソウルレス<魂なき者>
ソウルレスについて知るには、イタリアへ行くしかありません。
アレクシアの実家の執事だったフルーテは、もともと父の従者でした。
フランス人の発明家マダム・ルフォーとフルーテを伴い、イタリアへ向けて出発します。

ロンドンでは、マコン卿が苦悩のあまりホルマリンを飲んで泥酔。
副官のライオール教授が執務を代行し、苦労していました。
正気に返ったマコン卿は、後悔しますが‥?
ライオールの冷静さが光ります。

マダム・ルフォーのつてをたどって、ソウルレスの歴史を探る3人。
吸血鬼に狙われているらしく、からくも危機を脱してはイタリアへ向かうアレクシア達ですが。
着いた所でも、囚われの身に。
イタリアでは、吸血鬼も人狼も公然と認められてはいない国情の違いもありました。
テンプル騎士団で、ソウルレスは悪魔の申し子と呼ばれていたのです。
異界族を退治するための切り札でもあるのですが。

スチームパンクの雰囲気たっぷりの発明品を利用した大冒険が、スピーディに派手に繰り広げられ、ハリウッド映画になりそう。
マコン卿はだめだめですが~何とか最後には再会。やや単純な熱血漢タイプってことですかね。
あまり感情を表さないアレクシアの心境がちらちらと語られて、ほろっとします。
面白かったです!

2013年6月 7日 (金)

「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪なう」

ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪なう」早川書房

アレクシア女史2冊目。
ヴィクトリア朝のロンドンに、吸血鬼や人狼が公然といたという設定のドラマチックな物語です。

ミステリというよりファンタジーかなあ‥
歴史改変SFというか~パラノーマル・ロマンスでもあり。
すべて含めて、スチームパンクそのもの。
今回はエーテル通信という発明も出てくるし、大型の飛行船での旅行、アレクシアのパラソルにも新技がいっぱい。
そういうことに興味があれば、1作目よりもイメージ豊富で面白いでしょう。

人狼団を率いるマコン伯爵と結婚したアレクシア。
おしゃれにあまり興味がなかったので、格式を保つファッションにも苦心しています。
熱々の新婚カップルではありますが~知らないことも多く、それぞれの立場もあり、問題は次々に起こります。

ロンドン近辺で突然、人狼や吸血鬼が牙を失い、ただの人間になるという現象が起きます。ゴーストは除霊されて消えてしまう。
これはロンドンでただ一人の<魂なき者>であるアレクシアの能力なら可能なので疑いもかかりますが、アレクシアの場合、じかに触れている間だけのこと。
広範囲で起こるとは、何かの疫病か?化学兵器か?

マコン伯爵は、アレクシアには何の説明もせずに、突然スコットランドへ行ってしまいました。
出身地の人狼団で、何事か起こったらしい。
夫の伝言で赴いた帽子店で、アレクシアは最新の技術を仕込んだパラソルを受け取ります。
帽子店の主マダム・ルフォーは、男装の謎めいた女性。
今回の現象が北上しているのを知ったアレクシアは、夫にそれを知らせるため、飛行船でスコットランドへ。

マダム・ルフォーも、同じ飛行船に乗っていました。
アレクシアの親友のアイヴィと、異父妹のフェリシティも、諸事情により同行させる羽目に。
いささか見当はずれのことばかり言うアイヴィは、恋愛中。
性格の悪い妹とコメディ部門を担当します。

マコン伯爵の出身地で何が起こったのか?
衰えつつある人狼団は、伯爵の子孫だったが‥
思いがけない展開に~!?
続きを読まずにはいられないラストに苦笑い~どっちにしても、読むけど☆

2013年4月27日 (土)

「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」

ゲイル・キャリガー「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)」早川書房

元気のいいヒロイン、堂々の登場です。
歴史ミステリの雰囲気もありますが~歴史改変ファンタジーみたいでもあり。
ジャンルとしては、パラノーマル・ロマンスかも?

19世紀末、ヴィクトリア女王の治世。
吸血鬼や人狼が組織化され、一般人には手を出さないことで認められている世界という設定。
満月の夜にだけ変身し野獣化する人狼は、自ら自邸の牢獄に閉じこもることになっていました。

アレクシア・タラボッティは、頭がよく気丈ですが、婚期を逃している26歳の令嬢。
亡き父親がイタリア人だったため、ロンドン社交界ではいささか浮いてしまう濃い色の肌に大きめの鼻。
じつはロンドンでただ一人の<魂なき者>(ソウルレス)反異界族。これも父の血を引いています。
母と再婚相手との間に二人の妹があり、俗物揃いの家庭ではみ出し者扱いのアレクシアは半ばシンデレラのよう?
ソウルレスであることも隠しているため、気が強い割には自己卑下の習慣もついていました。

ウールジー城人狼団のアルファ(組織のトップ)であるマコン伯爵は人の姿でも大柄で、誰との決闘にも勝ち続けています。
アレクシアとは、社交の席で顔を合わせては口げんかになる間柄。
アレクシアがソウルレスであることはもちろん、人狼や吸血鬼には知られていました。アレクシアが触れると、そのときだけ彼らは無力化してただの人間の姿に戻るのです。
ところが、そういった事情を何も知らない吸血鬼に襲われ、乱闘の末にパラソルでやっつけてしまう。
か弱いふりで、気絶して見せたアレクシアですが?

地域では、はぐれ吸血鬼が増えているという奇怪な現象が起きていました。
アレクシアは何者かに付けねらわれ、マコン伯爵はそれを守ろうとするうちに、気持ちを抑えられなくなり‥?
出会うたびにキスを繰り返しながら、アレクシアの思い込みと、人狼の風習との違いで、恋愛模様は大混戦?

情報通でおしゃれな最長老の吸血鬼アケルダマ卿や、マコン伯爵の副官で冷静なライオール、気弱なアメリカ人科学者、アレクシアの家の有能な執事など、脇もいい味出しています。
吸血鬼を撲滅しようとしている組織に、研究材料として囚われたアレクシアは‥?!
当時の雰囲気と架空の設定を上手く織り交ぜて~面白い読み物に仕上がっています。
楽しめました☆

著者はカリフォルニア生まれ。母は英国人。
厳格な家庭から逃げ出すため英国で考古学、カリフォルニア大学で人類学を学んだという。
2009年本書でデビュー。
評判を呼び、ローカス賞などいくつかの賞にノミネートされる。
ベストセラーリストにも。

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