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2018年3月25日 (日)

「ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人 下」

フィリッパ・グレゴリー「ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人 下」集英社

後半の感想です。

エリザベス女王は無事に即位はしたもののまだ若く、戦乱の続くヨーロッパで、イングランドは大国ではなかったのです。
国務長官のウィリアム・セシルと手を携えて政治を行っていくのだが、国内外の勢力を見張りつつ、折り合っていかなければならない。
プレッシャーに震えるエリザベスを慰めるのは、子供の頃から互いの苦労を知っているロバート・ダドリーでした。

ハンサムで傲慢、血筋はいいが既に家族の後ろ盾はない。
国一番の家柄というわけではないので、エリザベスの寵愛は大貴族たちの反感を買います。
ロバート自身が女王の夫、つまりは国王になる野心を内心いだき始めたから余計に‥

宮廷の具体的な様子や出来事、縁談や戦争の順番がわかりやすく、興味深いです。
恋するエリザベスの女心もわからなくはないけど、女王の立場を考えると、書き方が‥軽すぎというか不用心なような‥?
映画の「エリザベス」のほうが、女王の誇りや自制ゆえの葛藤がある複雑な人間像で、性格は当を得ていたような印象ですね。

映画では、史実とは違うとわかっていながら物語の構成上あえて結末を変えた部分もあり、事件の真相は、この小説のほうが意外と当たっているような気もしました。
シビアーに整理すると、こうなるのか‥!と☆

2018年3月24日 (土)

「ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人 上」

フィリッパ・グレゴリー「ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人」集英社

「ブーリン家の姉妹」シリーズ3作目、ということになるのですね。
アン・ブーリンの娘であるエリザベスが、若き女王になってからの話。
このあたりの時代が好きなので、詳しく描かれているのは嬉しい。

1558年、エリザベスが女王に即位し、祝福されます。
異母姉のメアリー女王が没するまで、プロテスタントの迫害があり、国は混乱していたから。
今度はカトリックの肩身が狭くなる番だが、エリザベスは宥和政策を取ってバランスを取ろうとします。
女王は他国の王家と婚姻して、有意義な同盟を結ばなくてはならないのですが‥

幼馴染の寵臣ロバート・ダドリーを主馬頭に任命し、宮廷の催しを任せます。
ロバートの父はかって宰相でしたが大逆罪で処刑され、ロバートもしばらくはロンドン塔に投獄されていた身。釈放されても仕事がないままでした。
それでも、エリザベス自身よりも宮廷で暮らした時期が長く、儀礼に通じていたというのが面白い。
どう振る舞ったらいいかわからないエリザベスにしきたりを教え、巧みにイメージアップを図っていくのです。

ロバートには若くして結婚した妻のエイミーがいるのですが、農場暮らしが好きで宮廷が嫌いという女性なので、都には出てこないまま。
互いに見た目で恋をして結婚してしまったこの夫婦が、いかに合わないかがありありと描かれていて、よくわかり、なんとも言えない気持ちに。
離婚が難しい時代の辛さというか。この時代でも不可能ではなかったので、エイミーは別れたほうが良かったのにね、というか。
(ロバートの場合、もしも、16歳で結婚しちゃわなかったら、父の謀反にもっと加担させられて命を落としただろうと思うと、ナンですが)

前の作品に比べると、命がけの危険が続く重さが薄れている分、読みやすいかも。
この作者はどうも、メアリー女王のほうが好きなんだなというところが微妙ですね(笑)

2017年7月16日 (日)

「愛憎の王冠 下」

フィリッパ・グレゴリー「愛憎の王冠 下 ブーリン家の姉妹 2」

力作の後編です。
激動の16世紀イングランド。
メアリー女王とエリザベス女王の二人に仕えることとなった女性ハンナの波乱の人生。

ヘンリー8世没後の混乱期。
キリスト教徒内部でプロテスタントとカトリックのせめぎ合いが続き、どちらも命がけ。
聖なる道化として宮廷で女王の側近くにいるハンナは、派閥と無関係なので、女王の慰めとなります。
スパイまがいのこともするのですが、それぐらい女王たちの方もお見通し。
ハンナ自身はキリスト教徒でさえないユダヤ人であることを隠している恐怖がずっとつきまとっているのですが。

本を読んで育ったハンナは、当時としては自立心の強い、婚約者にとっては面倒くさい女性。
やっと結婚したものの、さらに思いがけないことに‥?
ぐっと大人になっていく展開になります。

メアリー女王は、30代も後半になって政略結婚。
スペイン王子の肖像画をひと目見て恋した可愛い女でしたが、不運な成り行きに‥
カトリックの信仰を守ることだけが支えとなり、異端の処刑でブラッディメアリーと怖れられることに。

妹のエリザベスは命の危険に晒され、異母姉のメアリーに迫られて礼拝には出るものの、改宗は拒み通す。
恐怖で再三病気になりながら、回復して宮廷に現れたときには人々を魅了。

どちらも父には否定された女性の身で、自らの地位や国のあるべき姿を必死に考えていた‥
それを思うと、ハンナも現代からタイムスリップしたような女性ではなく、激動の時代を体感しつつ生きたのかな、と。
人のさまざまな感情を濃く描きつつ、歴史の大きな揺れ動きを実感させる展開。
面白く読めました!

2017年7月15日 (土)

「愛憎の王冠 上」

フィリッパ・グレゴリー「愛憎の王冠 上 ブーリン家の姉妹 2」集英社文庫

映画化された「ブーリン家の姉妹」のシリーズ2作目。
主人公はアン・ブーリンと妹ではなく、次の世代の話。
メアリー女王と後のエリザベス女王という異母姉妹の激しいせめぎ合いを描きます。

主人公は、この二人に仕える娘ハンナ。
ユダヤ人であることを隠して暮らしている本屋の娘でした。
若きロバート・ダドリーと師のジョン・ディー博士に神託の才を見出され、道化として宮廷に上がることに。
当時、聖なる道化という、召使の序列から少しずれた存在が王族に可愛がられていたのですね。

父親のヘンリー8世亡き後、王位は姉妹の弟のエドワードへ。
少年王は病弱だったため、権力は宰相ダドリーに握られていました。
王位継承順位は、エドワードの次が長女のメアリーと決まっていたのですが。
宰相は他の人物を立てようとを画策、失敗に終わります。
ハンサムなロバート・ダドリーはこの宰相の息子で、エリザベスの幼馴染で後の有名な恋人ですが~とうぶんは謀反人の息子の汚名を着ることに。

メアリー女王のことは、あまりよく知りませんでした。
スペイン出身の最初の妃キャサリンの娘ですが、思えば気の毒な生い立ち。
王女として生まれ育ちながら、若い頃はずっと、父親の浮気と両親の離婚に苦しみ、弟が王位についた後もカトリックなので不遇だったのですから。
ハンナの目を通して、地味だが誇り高くて忍耐強く、危機に際して立派な振る舞いを示した様子が語られます。

このハンナ、エリザベスにも憧れてしまうんですけどね。
弟とも仲が良く、国民に人気のあったエリザベス。
すらっとして若々しく、人の気持ちを惹きつけるところがあったのです。
それは生き延びるための知恵でもあったのでしょうが‥

ハンナ自身は、ユダヤ人であることがバレたらと怯え、初恋のロバートに逆らえずスパイの役を務め、親の決めた婚約にも乗り気になれないまま。
宮廷の華やかな人々とその危機に次ぐ危機に幻惑されたように日を送ることになります。

知らなかった事情や、年代の変化が丁寧に追われていて、さらにイングランドだけでなくユダヤ人の世界も描かれるので、非常に濃くてドラマチック!
2作目がこんなに面白いとは予想外でした。
下巻の感想は明日に。

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