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2013年10月 2日 (水)

「もつれた蜘蛛の巣」

ルーシー・モード・モンゴメリ「もつれた蜘蛛の巣」角川文庫

「赤毛のアン」で有名なモンゴメリのシリーズ外の作品。
1931年に発表されたので、晩年の作品といっていいですね。

ダーク家とペンハロウ家は代々、同じ村で婚姻を繰り返してきた間柄。
その長老格のベッキーおばが病の床について皆を呼び集め、家宝の水差しを誰に遺すかに注目が集まります。
次々に遠慮のない指摘を浴びせられながらも、水差し欲しさに我慢する一族。
きつい発言はそれなりに当たってもいるので、当人以外にとっては見逃せない面白さでもあったのです。
ベッキーおばは遺言を1年後に明らかにするという~その1年間の物語。

18歳のゲイ・ペンハロウは、一族で一番の美女に花開こうとしていました。
医者のロジャー・ダークはゲイを愛さずにはいられませんが、ゲイのほうは意識していない。
ノエルという恋人がいて、夢中なのだから。
ところが、幼馴染のナンがゲイにライバル意識を燃やし、ノエルにちょっかいを出します。

ヒュー・ダークと結婚した夜、実家に逃げ戻ったジョスリン。
そのまま何年もたつが、二人の間に何があったのかは誰も知らない。
そのいきさつとは‥?!

ビッグ・サムとリトル・サムは従兄弟同士で一緒に暮らしていましたが、ある日口論になり、小柄なほうのビッグ・サムは出て行ってしまう。
ドナとヴァージニアは、まだ若い戦争未亡人。
ピーター・ペンハロウは世界を股にかける探険家で、偏見からドナを悪く思っていましたが、ある日突然、恋に落ち‥?
中年のマーガレットは兄夫婦の家に住んで手伝いをする立場。「ささやく風荘」という家が好きで、いつか住みたいとあこがれていたのですが‥

一族の中の変わり者<月の男>ことオズワルドは、決して家の中に入ろうとしない放浪者。
それでいて皆のひそかな気持ちや動向を知っているんですね。
彼の存在も効いています。

存在感のある村人達がびしばし描かれるのは「青い城」と共通しています。
登場人物がもっと多くてしかも変人が多いので~最初は混乱するけれど、綺麗な娘ゲイの恋のいきさつが爽やかなストーリーとなり、孤独な少年ブライアンが最後に幸せになるので、心地よい結末。
心温まる読後感でした。

2013年7月 1日 (月)

「青い城」

ルーシー・モード・モンゴメリモンゴメリ「青い城」角川文庫

モンゴメリ後期の単発作品。
大人の女性向けのロマンスもので、「赤毛のアン」シリーズではありません。
楽しみにとっておいたんですが~ついに読みました。
面白かったです☆

29歳の独身女性に巻き起こる事件。
内気でぱっとしない外見のヴァランシー・スターリングは、愛称でドス(本人は大嫌いな呼び名)と呼ばれています。
父を早く亡くしたつつましい家庭で、高圧的な母親にきつく束縛されながら育ちました。
口うるさい親戚に囲まれ、一つ年下の従妹オリーブが美人で明るい人気者だったために、割を食ってもいました。
これから結婚が出来る望みを捨ててはいないけれど、これまで恋人が出来たこともないのは、苦にしています。

いつも怯えていて、逆らうことも出来ず、言いなりになっているヴァランシー。
ヴァランシーの楽しみは二つだけ。
図書館で借りてきた本を読むこと。
自分で夢に描いた空想の世界に入り込むこと。
小さい頃から目をつぶれば、青い城を思い浮かべることが出来たのです。
ありとあらゆる美しいものがあるお城で、夢のような恋人と暮らすお姫様という自分を思い描いていました。

最初のほうは嫌なことばかりが書き連ねられ、「モンゴメリ、本気?」と思わずその嫌な文章を読み返してしまったほど。
それほど、ばしっと書かれていて猶予がないのですが、それもどこか透徹したユーモアが。
切れる寸前の心境だったことをうかがわせ、「あと1年の命」と医師に宣告されたヴァランシーが思い切った行動に出る前哨となります。
親戚の集まる祝いの席で、これまで言えなかったことを言い放つヴァランシー。驚愕する一同に苦笑。読者は内心、快哉を叫ぶ?

子供の頃の級友シシイが、看病する人手も足りない状況で重い病の床に伏していると知り、住み込みの家政婦として働くことを決意、シシイに寄り添うのです。
スターリング家の社会的地位としては明らかに格下の仕事で、家族は勘当同然の態度に。
しだいに自分らしく生きるようになるヴァランシー。
シシイのことを気にかけてくれていたバーニイ・スネイスと親しくなり、あるとき「結婚してくれない?」と自分から申し込みます。自分はあと1年足らずの命だからと。
バーニイは森に一人で住み、身元もはっきりしないので、街での評判は悪い男でしたが、ヴァランシーは惹かれていたのです。
街から離れた森はとても美しく、これこそ青い城だと思うのでした。
ところが‥?

面白おかしく、はらはらさせる展開で、大逆転のハッピーエンド。
良く出来た喜劇なので、ミュージカルにしたら面白そうだなと思ったら、やはり舞台化されたそうです。
モンゴメリ自身が祖父母に厳しく育てられたのもありますが~牧師夫人として世間を見ていて、おとなしい女性が不当な目に遭うのを見てきたからじゃないのかな。
苦労の甲斐あってお似合いの恋人に出会い、個性を花開かせるヒロインに嬉しくなります☆

原著は1926年の発行。
ルーシー・モード・モンゴメリは、1874年プリンス・エドワード島生まれ。36歳で結婚後、牧師の夫の赴任先で暮らす。
この作品の美しい森のモデルは、トロントの北バラにあるマコウスカ湖周辺だそう。

2009年11月15日 (日)

「赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法」

茂木健一郎「赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法」講談社文庫

これほど「赤毛のアン」のファンだったとは!
小学校5年の時に読んで強い印象を受け、まわりの男の子には隠していたそう。
なぜそれほど魅力を感じるのかははっきりわからないまま、最近まで課題だったとか。

高校では原書を読破、海外留学したくて懸賞に応募した時にも「赤毛のアン」のことを書いたとは、筋金入り。
大学院の時には、プリンスエドワード島にも行ったそうです。
西洋に負けた、というようなショックがあって、また強い憧れを抱いたと…

かって「赤毛のアン」が日本で紹介されたのは戦後の復興期、西洋を目指した時代でしたね。
当時の日本よりはあか抜けて素敵に見えても、それほど豊かではない農村が舞台で、けっこう変わり者の老人などが多く出てくるのも、親しみを感じさせた原因でしょうか。
海外ではむしろ「エミリー」のシリーズの方が人気があるそうで、その違いなども考察。
エミリーの方がややダークで、文学的。モンゴメリの実人生の苦闘も反映しているのでしょう。

一瞬にして過ぎ去る子供時代の輝き、ひたむきさがアンの魅力。
ひねくれることなく、不真面目さがない。
確かに…
子供の頃のアンは想像力豊かなのがアンバランスで暴走気味で、それが笑いを生むのですが~自分のことのようでちょっと気恥ずかしくもあったとか。
若さ故のぎこちなさやみっともなさ。
だがそれが成長し、幸せになるに連れて静かになり、何かを得ると共に失い、16歳にして就職運動や親の介護まで見通す。
郷里で落ち着くあたりも、日本人には受け入れられやすかったのかも。
マシューの話が出ると、泣けます。

専門分野を生かして縦横に話が飛ぶ西洋談義も面白いですが〜
想像の余地のある人生、帰るべき家がある、運命の相手に会う、大人になる、運命を受け入れる、幸せの花を見つけるという章立て。
ポジティヴなところが幸福を呼ぶ、っていうことですね。
文学は得てして不幸について書かれていて、太宰の作品は不幸になる方法が書かれているようなものというのには笑いました。
「赤毛のアン」には幸せになる方法が書かれている!

2009年4月13日 (月)

「アンのゆりかご」

村岡恵理「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」マガジンハウス

「赤毛のアン」の翻訳で有名な村岡花子。
孫娘でライターの著者が書いた、その生涯です。

戦時中に翻訳を始めていたいきさつから、始まります。
そこから遡って、貧しい暮らしをしていた大勢の兄弟の中から、長女のはな(後の村岡花子)一人だけが東洋英和の給費生として学ぶようになったこと。
東洋英和が、カナダ人宣教師が開いた学校とは知りませんでした。
奇しくも、モンゴメリと同世代のカナダ女性に教育を受けたのですね。

柳原白蓮と友情があったという、意外なつながりも。
若くして離婚した後の白蓮が女学校に入り直していた時期で、年上の美しい親友が出来たわけだったのですね。
九州の炭坑王との急に決められた再婚に怒り、純情な花子は披露宴にも出席を断ったとか。もっともすぐに和解し、後の出奔と再婚にも理解を示したようです。

花子自身は出会った男性・村岡と愛し合って結婚し、出版社を営む婚家にも認められて幸福でしたが、震災で工場が倒壊してしまいます。
さらに長子を疫痢で失い、戦時中にも苦難があったそうです。
夫の村岡は最初の妻を病気を理由に離婚していたので、花子は不幸に見舞われた後になって、他の人のそんな苦しみをおもんぱかることもなかったのがよくなかったと胸を痛めたそうです。

ラジオの番組で有名だったことも、知りませんでした。
70過ぎてのアメリカ旅行で、着物姿で通し、きれいな英語を喋ると驚かれたり。微笑ましいエピソードも色々。
プリンス・エドワード島にはついに行かなかったのですね…
機会があったのに延ばしたという、気持ちはわかるような気もします。
しかし、「赤毛のアン」て、ものすごくたくさんの版で出ていたんですね~感嘆しました。
村岡花子は明治26年(1893年)生まれ。昭和43年、75歳で没。

著者は1967年生まれ。
1991年より姉の美枝とともに「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」として資料を保存。
この本は、2008年6月発行。
2008年は「赤毛のアン」誕生百周年だったのですね!

2009年3月 9日 (月)

「アンをめぐる人々」

ルーシー・モード・モンゴメリ「アンをめぐる人々 赤毛のアン・シリーズ8」新潮文庫

新装版を読んでみました。
モンゴメリは大好きで、赤毛のアン・シリーズは子どもの頃からの愛読書。中学の頃には暗記するほど読みました。
中でもこれはお気に入りで、後々まで読み返した方です。
とはいえここ数年は読んでいなかったので、少し表記が変わってるようですが、どこなのか正確にはわかりませんでした。

やっぱり、面白いですねえ~!
アンの育ったアヴォンリーの村での出来事がほとんどで、時代色も感じますが、けっこう今にも通じるような。
いきいきとした描写で楽しめます。

「シンシア叔母さんのペルシャ猫」で世話のかかる猫をめぐる騒動に楽しく笑い、「偶然の一致」の遅咲きのロマンスににっこり、「父の娘」の意地っ張りな母娘にちょっとハラハラ。
「ジェーンの母性愛」でオールドミスの意地ににやにや、「夢の子ども」で子を亡くした夫婦の再生にしんみり、「失敗した男」にはやられてしまって、だばだば涙、「平原の美女タニス」の野性的な美女の情熱の行方にどきどき。
他にもあります…どれも面白いんですよねえ、これが。
すべて結末知っているのに、たっぷり乗せられました。
シリーズの他の本も、ぼちぼち読み直していこうと思っています。

2008年9月10日 (水)

「赤毛のアンの翻訳物語」

松本侑子・鈴木康之「赤毛のアンの翻訳物語」集英社

この春、NHKで赤毛のアンの英語番組を放映していたので、読んでみました。
村岡花子さんの翻訳したものになじんでいるので、松本さんの訳した本は読んだことがないのですが。

私が子どもの頃は、抄訳はあったかと思いますが、シリーズを全部訳されているのは村岡さんしかなかったように思います。
最近はいろいろな絵入りのが出ているようで…ちょっと興味をひかれつつ、村岡さんに義理立てしているような気分もあったりして。
だって、暗記するほど読んだから、もう血肉となっていますもの。

「赤毛のアン」の翻訳を頼まれた松本さんが、当初は訳されていなかった部分に注目し、調べていく過程がつづられています。
当時流行の文学からの引用された部分の意味を解明していくんですね。
深くはまっていく様子に勢いがあって、ぐいぐい読ませます。
現地に飛んで、研究者と親交を深めていくのも面白い。こんな事、やってみれたら~楽しそうですよねえ!

モンゴメリが引用した文献の意味が、16歳のきらめくような若さや幸福はすぐ失われる、といった暗い内容だったという~衝撃の事実。
赤毛のアンの元気でチャーミングな印象からは、かけ離れていますね!
モンゴメリの人生にいろいろあった~思うに任せないことのつらさが、反映している可能性もあります。
でも、アンも悲劇的な詩が好きだったし、うんとロマンチックで泣かされるか爆笑するしかないような小説を書いていたりしました。
そういう美しい文学的なものに憧れる気持ちが、あったのじゃないかしら~。

この本は、ジャンルとしては小説ではありませんが…翻訳小説に興味のある人が読む本かな。
パソコンを使っての調べ物が詳しく書かれ、その点は専門家が別記事でもまとめているので、パソコンの利用法や発展の歴史についての本として読むことも出来ます。

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