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おすすめ本

2017年8月19日 (土)

「眩」

朝井まかて「眩」新潮社

葛飾北斎の娘・応為こと、お栄の人生。
女ながらに父も認める才能ある絵描きだったお栄が、いきいきと描かれています。

天才絵師・葛飾北斎の娘、お栄は父の弟子に望まれて結婚するが、家事をする気もなく、絵に没頭。
お栄ほどの画才もない夫は、北斎の娘婿としてお栄ほどの画才もない夫は、北斎の娘婿として仕事を増やしたかっただけらしい。
あっさり出戻ったお栄は、父と弟子たちとの暮らしに邁進し、気まぐれな父の世話をこなしつつ、画業に情熱を注いでいきます。

ひょうひょうとした兄弟子の善次郎とはそこはかとない信頼関係があり、お栄は惹かれますが‥
口うるさい母や、ろくでなしの甥に悩まされつつ、さばさばと生きるお栄。
飾り気なく大胆で、当時としては相当変わり者だったんでしょうね。
古風な女らしさはないものの、その情熱がどことなく色気となっているよう。

北斎の有名な冨嶽三十六景の制作風景や、応為の代表作の吉原格子先之図などの描き方を工夫する様子も出てきて、臨場感を楽しめます。
応為には、どこまで絵師として認められるのか、長い年月の間、葛藤もあったことでしょうが。
やりきった感もあったのか、どこにいてもやっていけると思うようになった勁さ。
清々しい読後感でした☆

2016年7月19日 (火)

「花競べ」

朝井まかて「花競べ―向嶋なずな屋繁盛記」講談社文庫

「恋歌」で直木賞を受賞した朝井まかてのデビュー作。
デビュー作にしては達者で、さすが。

「なずな屋」を営む若夫婦、新次とおりんが主人公。
男前すぎて若い頃に女の子がぞろぞろ付いて来るほどだったため、女性に警戒心がある新次。
おりんは家を出て子供に手習いを教えていて、しごくさっぱりした気性なのが新鮮だったらしい。

感じのいい若夫婦に、新次の幼馴染夫婦や、新しいお得意さんの大店のご隠居と孫息子、新次が独り立ちする前に勤めていた大きな育種屋、夫婦が預かることになった男の子「雀」(本当はしゅんきち)などが絡んできます。

苗や種を育て、時には新種を作り出す花師という仕事が、江戸では盛んだったのですね。
「花競べ」とは、最も優れた名花名木に与えられる称号・玄妙を目指して、江戸中の花師が育種の技を競い合う三年に一度の祭。
花や樹木を扱うすがすがしさが伝わるような筆致で、ムラサキシキブ、桜のソメイヨシノなどの命名をめぐるエピソードもあって楽しく読めます。

新次は仕事先で、かっての勤め先のお嬢さんで、共に修行した理世と再会します。
女ながら才能があり、今は家を継いでいる理世。
身分違いだからと気持ちをはっきりさせずに店を出たままだった新次は‥?
女性作家にしては、妻のおりんのほうをほったらかしなのがやや意外な展開。
おりんの気持ちを追ったらさらに生々しくなるのを避けたのかも。
気持ちにけりをつけるという展開とはいえ、理世のことが妙に浮き上がって見えるような。
何もいわずに戻った新次を、おりんは黙って受け入れたようですけどね。
子供のいない二人が預かって育てた雀こと、しゅん吉の未来が開けるので、話としてはまとまった読後感に。

2014年7月18日 (金)

「恋歌」

朝井まかて「恋歌」講談社

第150回直木賞受賞作。
中島歌子の波乱の人生、水戸藩士に嫁いだ若き日を描いたもの。
熱っぽく、引き込まれます。

樋口一葉の師として名を残し、明治時代に<萩の舎>を主宰し多くの弟子を持っていた歌人・中島歌子。
後年病に倒れたとき、弟子がその手記を発見して読むという形で描かれます。

江戸の裕福な宿屋に生まれたのんきな娘・中島登世は、水戸藩士・林以徳と恋を貫いて結婚。
水戸でお武家様の妻として、生真面目な義妹てつが取り仕切る家に暮らすことに。
水戸藩では天狗党と諸生党が相争い、天狗党内部でも分裂がありました。前半はそういう危機感もありつつ、若妻の暮らしぶりを。
天狗党に属する夫・以徳は穏健な考えだったのですが、突出した行動をとった面々と同一視され、ついには逆賊となってしまう。
天狗党は妻子まで捕らえられ、登世もてつと共に入獄。
夫の無事を信じつつ、辛い時期を耐え抜きますが‥

水戸では、報復のため血で血を洗う抗争が続いたとは。
ここまでとは、知りませんでした。
素直な若い娘が巻き込まれた動乱の、思いもよらない激しさ。
あまり書かれていない後半生は別人のようで、ややギャップがありますが。これほどの経験があり、胸のうちに秘めた思いもあって、歌がほとばしり出たということ。
中島歌子は華やかなイメージがある女性ですが、亡き夫を最後まで愛していたのですね。
財産を誰に遺すかの決定も、水戸時代のことを深く憂いてのことなのでしょう。

君主の未亡人・貞芳院が後に語る水戸藩の実情が印象的です。
あまりの貧しさと抑圧ゆえに気持ちにゆとりがなく、怒りを身近に爆発させたと。
その貧しさは、初期の石高設定で見栄を張ったことや、水戸光圀以来の大事業が財政を圧迫したためなどもあることを思うと‥
低所得層が増えている現代日本の空気が、次第に悪くなっていることも、考えさせられます。江戸時代の庶民のように、娯楽を限定させられてはいないですけどね。

直木賞も納得の力作でした。
読んでいく作家さんが増えました!

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