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おすすめ本

2016年2月 9日 (火)

「ハケンアニメ!」

辻村深月「ハケンアニメ!」マガジンハウス

アニメの製作現場の熱っぽい人間模様をいきいきと描いた2014年の作品。
3人の個性的な女性と、そのお相手?を中心に。ノリが良く、愛に溢れていて、面白かったです。

「王子と猛獣使い」
中堅スタジオの女性プロデューサー有科香屋子は、王子こと(なんと本名で)王子千晴監督のことに頭を悩ませていました。
伝説的な作品で知られる、天才肌で気まぐれな王子。
香屋子はアニメが大好きでかなりの美人、ちょっと天然。
王子のほうも憎からず思っているのだけど、香屋子はまったく気づかない‥

「女王様と風見鶏」
女性の若手アニメ監督、斉藤瞳。小柄だが、職業柄性格はきっぱりしています。
敏腕プロデューサーの行城とコンビを組むが、行城は口八丁手八丁、アニメを愛している感じはしない人物。
しかし‥?

「軍隊アリと公務員」
新潟市に本拠を移したアニメ原画スタジオで働く並澤和奈。神原画を描くとファンの間では噂になっています。
市役所の観光課の宗森の明るくまじめな好青年ぶりに戸惑いますが、しだいに協力的に‥?

章のタイトルや、キャラの立った描き方など、いつもの辻村作品とは雰囲気が違いますね。
アニメ風を意識したせいなのか?
むしろ有川浩っぽいけど、だったら女王様キャラがもっと強く描かれていそう。割と控えめなのが辻村さんぽいかも。
話はモデルがあるというわけじゃなさそうだけど、取材に基づくアニメ製作の実態を少しは知ることが出来るし、快調なテンポでハッピーな方向へ向かい、楽しく読めました☆

2015年1月27日 (火)

「盲目的な恋と友情」

辻村深月「盲目的な恋と友情」新潮社

盲目的な恋と、盲目的な友情。
美しい女子大生の初めての恋が燃え上がるが‥

一瀬蘭花は女子高から私立大学に進みます。
音大ではないけれど、百人を擁するオケ部で、第一バイオリンのメンバーに入りました。
指揮者は若手のプロがやって来ることになっていて、指揮者は誰とでも選び放題で付き合えるという話は聞いていたのです。
そんな指揮者でしかもかなりの美形な茂実星近と2年の秋になって蘭花は付き合い始め、あれこれありつつも5年という異例の長さで恋人として続きます。だがそれは‥

恋に積極的な美波は、初心者だがオケ仲間でもあり、蘭花の親友でした。
1年生の頃は美波は蘭花のことを、初恋どころか思春期もまだのようだと言っていたりして。
そんな美波のことを嫌う傘沼留利絵は、群を抜いてバイオリンが上手い。
痩せていて生真面目で、化粧っ気もない。
素直な蘭花は、教育熱心な家庭に育った共通点を感じ、演奏会などの話も面白くて気が合うと感じていました。

世間知らずな蘭花の一人称で語られる出来事。
初めての恋に縛られ、他の女性の存在に衝撃を受けたり、相手が崩れていっても別れられない。
ありそうではあるけど、どこかでどうにかならなかったのかと、もどかしい。
良い面も不幸を招いてしまい、生かされなかった‥
美しさが災い?

留利絵の一人称で語られるパートはもっと怖くて、そうなった事情に気の毒さはあるが‥なんとも歪んだ考え方。
盲目的な友情って‥そういうことだったのかと思うと、恋のパートもさらに怖くなってくる‥?
人柄のいい男性が一人も出てこなかったような‥
こうなるしかなかったような書き方で、鮮烈な印象はあるし、なめらかで、わかりやすいけど‥
後味は悪いですね(苦笑)
これはホラー?
普通に成長していると思った女の子が一歩間違えばこうなりかねない、なりますよ~というブラックな味です。
嫌ミス的な意地の悪さ?‥というほどでもないかなぁ‥こういうのも書けますよ、っていう印象でした。

2014年10月22日 (水)

「島はぼくらと」

辻村深月「島はぼくらと」講談社

直木賞受賞後の作品。
瀬戸内海の小さな島に住む高校生4人を中心にした話。
島ならではの問題もたくさんあるけど、基本的にはさわやかに読めました。

瀬戸内海に浮かぶ人口3千人の小さな島、冴島。
朱里、衣花、新、源樹の4人は、フェリーで本土の高校へ通っています。
フェリーの時間の関係で、部活は出来ないので、帰るのはいつも一緒。
朱里の母は、食品加工会社の社長。といっても、公民館に集まって仕事のある季節だけ皆で作業する会社で、くじ引きでトップになったのです。
朱里は見た目にはあまり力を入れていない。親友の衣花が誰が見ても群を抜いた美少女で、いつも彼女が目の前にいたからでした。
クールな衣花は地元で一目置かれる網元の家の跡取りですが、そのために島の外へ出ることがまず出来ない運命も背負っていました。

リゾートホテルを親が経営する源樹は、Iターン組。とはいえ、源樹は島育ちなのですが。
やや派手な雰囲気の源樹に比べると平凡に見える新は、実は文才があります。
フェリーに乗って露崎という脚本家の男性が現れ、島を引っ掻き回しそうになりました。
幻の脚本を探しているというのです。
4人は、彼を追い出そうと計画し‥?

この件だけではなく、島での揉め事と高校生たちの成長がかなりゆっくりと描かれます。
気持ちよさそうな島の風景と、町おこしを目指す町長、地域活性デザイナーとの関わりなど、その土地ならではの事情が展開します。
悪気のない子供たちの感情がさわやかで、広い対象に読んでもらうことを意識した作品だと思いました。
エピローグで大人になった衣花が幸せそうで、明るい未来を感じさせる結末。
心地よい読後感でした。

大人もたくさん出てくるし、特に児童向きというわけではないんですが、YAもカテゴリに足しておきます。

2013年9月16日 (月)

「ツナグ」

辻村深月「」新潮文庫

死者と生者をつなぐ使者「ツナグ」
生きている人間が望み、死者が受け入れれば、一晩だけ会って普通に話すことができるという。
死んだ人と一生に一度、一人だけと会うことができるとしたら‥?

「アイドルの心得」
38歳で急死したタレント・サヲリに会いたいと願う女性・平瀬。
酔って過呼吸に陥っていたところを助けられ、以来ファンになっていました。
「世の中はみんなに平等に不公平なんだよ」と去って行ったアイドル。
一ファンに過ぎない自分に、会ってもらえるとは思わなかったのですが‥
死んだときには大騒動になったけれど、4ヶ月たっても会いたいといってくる人は他にいなかったと話す彼女。
生きる望みを失っていた平瀬に、サヲリは一言告げたかったのだ‥

地味すぎて華やかな家族からも疎まれ、気力を失っていた平瀬。
会社でも浮いていて、同僚に「いつも暗くて怖い本を読んでいる、そんなの読んでると呪われるんじゃない」と言われるのが可笑しい。どんなんや~?
ミステリかホラー??

「長男の心得」
店を継いだ長男・畠田靖彦は口が悪く、周りとちょっとした衝突を起こしてばかりいる中年男。
ツナグの存在を教えてくれた亡き母に、聞きたいことがあるとやってきたのだが‥
不器用な困ったおじさんの内心抱えていた後悔は‥?

「親友の心得」
事故死した親友・御園を死なせたのは自分だ、と苦しむ嵐美砂。
高校の演技部で、いつも自分を立ててくれていた優しい御園に裏切られたと感じ、嫉妬を抑えきれなくなって‥
女子高校生の微妙な張り合いが緊迫して、痛いほど。
すれ違いが起きた原因、結局ちゃんと話せなかったいきさつとは。

「待ち人の心得」
突然、失踪した恋人を待って、7年になる土屋。
知り合ったのも偶然で、何も知らないことに後から気づいたのです。
日向キラリと名乗った彼女ですが、偽名だったのだろうと思う。
騙されたんだよと言われますが‥
(土屋の抱えるものすごい肩凝りに思わず共感~パソコンが普及してから増えた症状だそう。結局、それなのかなあ‥いやこの時期に強くなったのはストレスってことですか)

「使者の心得」
ツナグという存在が、高校生の男の子の姿をしている‥
という最初は印象でしたが、家系に伝わる仕事で、それを託されたばかりだったとは。
思いがけない役割と、意外に個人的な関わりに戸惑う歩美。
そして‥

よくまとまっている印象でした。
暗いものを突きつけてくる部分もありますが、人の関わり方や優しいまなざしに励まされる部分もあり、最後はあたたかなものが胸に残ります。
所々にさりげなくあるいい言葉を、多くの人に読んでもらいたいなという気持ちになりました。

単行本化は2010年10月。
映画化のキャスティングも合っていたらしいですね。

2013年5月28日 (火)

「冷たい校舎の時は止まる」

「冷たい校舎の時は止まる」講談社文庫

辻村深月のデビュー作。
メフィスト賞受賞。
高校が舞台で、ホラー的な構成の作品です。
悩み迷う様子は、いたってリアルに、まじめに描かれています。

ある雪の日、進学校に通う8人の男女は、ほかの生徒が来ないことに戸惑います。
こうこうと明かりがついている校舎には、ほかに誰もいない。
閉じ込められ、2ヶ月前の事件を思い出す‥
文化祭の最終日に、屋上から飛び降り自殺をした生徒がいたのです。
ところが、それが誰だったのか、どうしても思い出せない‥

それぞれに人には言えない悩みを抱えている高校生たち。
委員長でしっかりしている鷹野、特待生の清水、鷹野とは幼馴染の辻村深月、深月が苦しんだときに相談に乗った昭彦、髪を茶色に染めている梨香、梨香に片想いの充、梨香と幼馴染の景子、停学が終わったばかりの菅原。
クラス委員をつとめる仲間で、居心地のいい関係だったはずなのですが。
誰かが自殺したいほど苦しんでいたのを見過ごしたのか?
この状況は、その生徒が作り出した空間らしい‥

悩みがあるとみんなが知っているのは、このうちでも辻村深月くらい。
友達だと思っていた相手に距離をおかれ、理由を聞いたところ、再三ひどく傷つけられたのです。
食事を取ることが出来ない時期があり、カウンセラーの下へも通いました。
自分でも、最初は自分が自殺したのではと考え込むほどでしたが‥

上巻はペースが遅くて、正直、長い。
少しずつ、登場人物の境遇や気持ちがわかってはくるけれど、本筋に迫る決定打はないので。
文章は難しいわけではないから、一気に読めるし、一人また一人と姿を消すホラー効果は出ています。
構成が二重三重に凝っていて、それが話の運びに生かされています。
よく練り上げられていますね。
前半でやや謎に思った点は、すべてヒントに。
重い内容ですが、救いがあり、読後感がよくなるように考えてあるのがいいですね。

このヒロインの名前をペンネームと同じにするとは、痛々しいけれど。
真摯な気持ちでそうしたのだと思います。
ネタばれしないで、これ以上書くのは難しいかな‥
心に食い入るような作品でした。

2013年4月11日 (木)

「鍵のない夢を見る」

辻村深月「鍵のない夢を見る」文藝春秋

5編入った短編集。
三面記事にあるような事件に巻き込まれていく人々。
女性の一人称で、未熟だったり身勝手だったりする所も見えつつ。
普通の人間が、思わぬ成り行きで、魔が差す瞬間を描きます。

直木賞受賞作。
そのことを忘れて読んでいて、途中で直木賞っぽいなとふと思いました。
多くの人に読ませたいような、わかりやすく時代性があり、文章もしっかりしていて地道な作品というか。
その作家の個性が強烈に出ている作品は、票が割れるのか、選ばれにくいんですよね。

「仁志野町の泥棒」
小学生の時に転校してきた女の子。クラスの人気者が特定の友達として仲良くなるのですが。
その母親には盗癖があった…

「石蕗南地区の放火」
実家の向いにある消防団の詰め所が火事になります。
災害保険の仕事で出向いた女性は、知り合いが放火したのではと疑う…

「芹葉大学の夢と殺人」
夢を抱いていた大学生に、その夢をわかってくれて、見た目もよく自分の夢も語る彼氏が出来ました。
ところが彼の方は成長しないまま…卒業後は別れることになったのです。
(文章で読めば、そりゃあやめとけ!っていう感じなんだけどねえ)
冷静さがなくなるとき。
教授殺害を知って、彼が犯人ではないかと疑うことに。

「君本家の誘拐」
買い物の途中で振り返ったら、ベビーカーがない!
ほんの一瞬だったのに…寝不足で追いつめられていく母親の心理。誰にでも起こりそうで、痛いです。
結末には、救いが。

それぞれの性格、自業自得かも知れないが運が良いとはいえない事の成り行きと、細やかな心の動きがなんともリアル。
あまり感じ良くはないけれど。毒があるというほどでもないかな…
安定した筆致で、鋭くしっかり描かれてはいますよね。
大人になったな~っていうか。

2012年8月 7日 (火)

「本日は大安なり」

辻村深月「本日は大安なり」角川書店

結婚式場で、挙式当日に巻き起きる出来事。
NHKでドラマ化されてましたね。

老舗のホテル・アールマティの中にある優雅な結婚式場。
ウェディングプランナーの山井多香子を中心に、つぎつぎに視点を変えて。
見ず知らずの人が4つの式場で互いを見かける様子なども入って、面白く描かれています。

何かと文句の多い不機嫌な花嫁・玲奈。
衣装を3点にすると時間が長くなりすぎるとか、結婚式や披露宴で問題になりがちな点が、具体的に取り上げられています。
調整に四苦八苦する多香子でした。
こういうときに悪いことは重なるもので、連絡ミスがあったりします。
じつは多香子には、玲奈を好きになれない理由があったのだが…
次第に気持ちが変わってくるような。
披露宴の時に、サブライズな演出に。

双子が互いに意識しまくっていたために起きる事件。
姉の鞠香と妹の妃美佳。
姉となった鞠香はしっかりするように期待されて、その通りに育っていきました。
甘やかされながらも陰になりがちな妃美佳は、明るい姉に対して強烈なコンプレックスを持ち、離れて生きようとしていたのです。
いざ結婚という時になって、どうしても自分でなければという人なのか、新郎を試そうと…?

男の子が叔母の結婚を心配して、なんとか中止させようとしたり。
母の妹を「りえちゃん」と呼び、懐いていた真空。
7つ年下でもっさりした彼氏が別な女性といる所を見て、悪い人なのではないかと不安になり…?

はては、とんでもない新郎もあったもので、浮気相手に実は結婚していると言うことも出来ず、当日を迎えてしまい…?!

大騒動がどう落着するか?
式場側の意識の持ち方や、プランナーの腕の見せ所もあり。
プランナー自身の披露宴にまつわる過去が…!
2年後のエピローグがあり、それぞれの未来へのスタートも微笑ましい。

平成23年2月大安の日に、発行されています。
著者は1980年生まれ。2004年メフィスト賞を受賞して、デビュー。
先頃、みごと直木賞を受賞しました!

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