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2018年8月 6日 (月)

「まことの華姫」

畠中恵「まことの華姫」KADOKAWA

畠中恵の江戸時代物。
シリーズにもできそうですが、今の所これ一作ですね。

江戸時代の両国界隈。夜になっても見世物小屋でにぎわっています。
あたりを取り仕切る地廻りの山越親分の娘・お夏は、姉の死に父親が関わっているのではという疑いを抱いていました。

姫様人形を遣う腹話術で人気が出てきた月草という芸人。
この人形の華姫が真実を語るという噂が立ち、お夏は出かけていきます。
月草もなかなか美形だけれど存在感が薄く、華姫のほうがずっと生き生きしているよう。
客席と掛け合い、人気を博していて、追っかけまでいる?

子供が行方不明になったままの夫婦が改めて子供を探したら、7人も名乗り出てきた。果たして、どの子が本物か。
華姫が盗まれてしまい、誰が何のために?
月草が探した結果は‥
西国での放火事件が江戸にまで影響し、今になって‥?

華姫がいきいきしていて魅力的。
もしかしたら‥生きているんじゃないか?とか。
最初は表紙イラストのイメージで読みましたが、最近、文楽を見る機会があり、文楽のお人形だともう本当にちょっとした仕草が色っぽくて目が釘付けなんですよ!すっかり、そのイメージになりました。
ヒロインは13歳の女の子なので、他のシリーズと違った展開ができそうですよねえ。

2017年9月12日 (火)

「おおあたり」

畠中恵「おおあたり」新潮社

安定した人気の「しゃばけ」シリーズも15作目。
今回は、いろいろな「おおあたり」の話が5つ。

長崎屋の若だんな、わけある生まれゆえに病弱な一太郎は、妖たちと仲良く離れで暮らし、ゆっくり大人になってきています。
少しは役に立ちたいという思いは強く、出来る時にはちょこっとだけ、頑張ります。
まあすぐ寝込んじゃうんですが、その合間に(笑)

幼馴染の栄吉は、和菓子屋の跡取りなのですが、あんこを作るのが異常に下手という。どっちかというと、お笑いキャラでしたが~
辛あられを作ってみたら、これが大当たり!
ところが? 意外な展開に。

獏の場久が離れで一席設けての怪談話で、おおあたり?
貧乏神の金次がなぜか富くじで、おおあたり。
絡む事件は、けっこう深刻ですね。根っから悪いやつばかりではないものの‥
さまざまな味が楽しめます。

仁吉と佐助の出会いの話では、5歳の若だんなの可愛らしい姿に出会えます。
若だんなラブの兄や達の一途さにほっこり。
人間には真似ができない?

いたって気のいい若だんなは、病弱なまんまでも、これほど取り柄がなかったとしても、存在価値はあるんだよと言ってあげたい。
実際には、頭も切れて、心が広く、ちゃんと役に立ってますよね。

終わって欲しくないシリーズ。
ちょっとは新味も欲しいけど、いつもの楽しさも欲しい~読者の贅沢な望みにこたえるのも大変でしょうね。
今回は、栄吉のあんこの物凄さで~大笑いの幕引き☆

2016年9月27日 (火)

「若様とロマン」

畠中恵「若様とロマン」講談社

若様組シリーズ3作目。
これで終わりなのかな?

江戸の時代には武家の跡継ぎだった若様たち。
もはや家には録もないのに身内は多く抱え、警察官に。
しっかり者の長瀬や腕の立つ園山をリーダー格に、同じような出身の若者たちが、若様組と自称していました。

沙羅は、成金の小泉商会の一人娘で、行動的な女の子。
居留地で育った皆川真次郎は、西洋菓子職人。沙羅と長瀬と3人は幼馴染で、若様組の面々とも親しくなります。
ある日、小泉商会の当主が彼らを集め‥?

富国強兵の明治の世。
戦争の足音が近づく時代に、小泉が考えたこととは?
きなくささを感じる時代背景とは裏腹に、主に描かれるのはなんと、若者たちのお見合い騒動。
確かに、それは大事かも!
仲間を増やし、人脈を作ることを目指したんですね。

時代色を生かした、ちょっとした事件を解決するうちに、それぞれの人生は違う方向へとスタート?
父親の思惑をすっ飛ばすような沙羅の行動力が頼もしい。
ある意味では父親の願う雄飛そのもの?

話のスケールが大きくなったり縮んだりしつつ、主役級の行く末は(方向性はあるけど)はっきりとまではしないのが好みなのかな?
続きがあるとすれば、楽しみです☆

2016年4月 9日 (土)

「なりたい」

畠中恵「なりたい」新潮社

しゃばけシリーズ、第十四弾。
若だんなと妖怪たちのほのぼの和風ファンタジー。

長崎屋の若だんな・一太郎は、今日も離れで力いっぱい寝込んでいます。
なんとか許婚も決まって(相手が幼いので祝言は当分先だけど)、店に出て一人前に仕事をしたくてしょうがないのですが‥
若だんなだけが大事な手代の兄やたち(妖怪です)は、病弱な若だんなのために、神様まで動員してしまう。
もてなしに案外ご機嫌な神様達なんですが、ご利益があるだけに、下手すると怖い存在。
この神様の設定?がユニークで面白いですね。
来世で何になりたいかときかれて、若だんなは悩みまくります。
神様に気に入られる答えは見つかるのか?

それぞれに、なりたいもの、とは。
妖になりたい、人になりたい、猫になりたい、親になりたい‥
味わいの違う問題が次々に現れ、寝込みつつもその謎を解いていく若だんな。
微笑ましくも、切ない願いと、時にほろ苦い展開。

生まれつきゆえに病弱で長生きは出来そうにない若だんな。
たとえ長生きしたとしても、寿命がなきに等しい妖怪たちとはいつか別れが来る‥
のほほんとした雰囲気が魅力のシリーズなんですが、時おり寂寥感も漂います。
そのあたりの見通しもいくらか、希望の持てる印象に変わって来ましたね。
のんびり、少しずつ、成長していく様子。
来世まで繋がる思いに、ほっこりします☆

2016年3月22日 (火)

「うずら大名」

畠中恵「うずら大名」集英社

畠中さんの時代物。
江戸時代ならではの事件がおき、妖怪は出てきませんが、若き日の仲間だった二人のコンビと、うずらの活躍に楽しさがあります。

高田吉之助は江戸で辻斬りに狙われたとき、現れたお武家と鶉に命を救われます。
口は悪いがやたらと見目が良く、腕も立つお武家の有月は、木綿の着物姿で気さくに行動していますが、じつは大名家の人間。
吉之助とは、かって同じ道場で剣を学んだ仲間でした。

長男だけが家と財を継ぎ、次男以下は部屋住みの身で、養子の口がなければ結婚もままならない時代。
どちらも長男でなかった二人は、十数年後、たまたま跡継ぎとなって再会したのです。

巾着に入って連れ歩けるよう躾けられた真っ白な鶉の佐久夜は勇猛果敢な性格で、人の言葉がわかるよう。
ポイントで活躍し、華を添えています。
いまや村名主の豪農となって大名に金を貸すほどの立場となっている吉之助ですが、相変わらず泣き虫で動転しやすいお人よし。
有月に振り回されつつ、豪農の不審死事件に巻きこまれていきます。
吉之助の姪の結婚話や、肥料の取引の問題など、ひとつひとつの出来事を解決しながら、しだいに見えてきた大きな陰謀が‥?

百姓、商人、大名という立場の違い。
身分制時代にはたいそうな権威のある侍身分ですが、大名でさえ内実は経済的に苦しい。
なぜそうなったのかという説明もあり、それぞれの苦労がよくわかります。
事件は現実味がありビターで、切なさのある結末。
有月のキャラと鶉の佐久夜が光ってます!

2016年2月18日 (木)

「まったなし」

畠中恵「まったなし」文藝春秋

まんまことシリーズ。
江戸時代の庶民の話で、妖怪は出てきません。
畠中恵さんの作品としては、恋愛色が強いですね。
中でもこの作品はいい感じでした!

町名主の跡取り、麻之助。
奉行所に訴え出るほどのことでもない町内の揉め事の相談に乗り、裁定する役です。
今回は、小さな事件が相次ぐうちに、3人で仲良くしている幼馴染の一人、清十郎の縁談がだんだんと進行していきます。
これがもう、まったなしの状況なんですね。

祭りのための費用が今年に限って集まらなかった理由とは?
子犬がいなくなり、別な場所で発見されることが続いたわけは?
病気になった麻之助は見知らぬ場所に‥そこから帰るには?
高利貸しの妾のお虎が、幼い子供を預かることになった事情は?
婚礼用の白無垢に染みをつけたのは、誰の責任?

清十郎の縁談が進まなくなった理由は、清十郎の義母・お由有のことが原因でした。
父の後添いだったお由有は、麻之助と二つしか違わず、麻之助の初恋の人でもある。
清十郎の縁談の相手・お安はしっかり者らしいが、やたらともてる清十郎がこれまで付き合ってきた娘達とはタイプが違う。
お虎は一計を案じ‥
今回は素敵な女性が多かったですね。当時の名前は似ているので、ちょっと覚えにくいけど(笑)
頭のいい娘さんお安の参加で、次作の展開も楽しみです。
麻之助とお由有の過去のいきさつが明らかになり、切なさもひとしおでした。
これも、麻之助の気持ちの整理に繋がるのかな‥

2015年10月 6日 (火)

「えどさがし」

畠中恵「えどさがし」新潮文庫

しゃばけシリーズ外伝。
よかったです☆

若だんなは出てこず、それどころか、若だんなが生まれる前の話と、若だんなをうしなった後の話もあります。
でもこれが、それぞれ中心になるキャラを生かして、希望の持てる展開へ!

「五百年の判じ絵」
長崎屋の手代になるずうっと前の佐助。
大師を失い、さまよっていた‥
三島宿の茶屋にあった判じ絵は、佐助に何かを伝えようとしていました。

「太郎君、東へ」
妖怪視点ファンタジー。
利根川の流れが変わる様子を、河童の争いなども絡めて悠揚とダイナミックに。
河原で普請が始まり、様子を調べに行った禰々子は‥?

「たちまちづき」
広徳寺の寛朝に、妖退治の相談がつぎつぎに。
出向いた先での危険な出来事とは。
お坊さんの遭遇する事件もの。

「親分のおかみさん」
日限親分のおかみさんは、身体が弱かった。
何とか元気になろうとしてはいたのだが、上手くいかない日々。そんなとき、捨て子が‥?
ほとんど出てこない人が主人公で、視点が新鮮。
少し強くなっていくのが良かったです。

「えどさがし」
時代は、江戸から東京へ。
若だんなといつかまた巡り会える日を信じて待つ仁吉たち。
おや~あの話「明治・妖モダン」の美形さんは、やっぱり仁吉たちだったんだ!

仁吉や佐助の気持ちを思うと、切ない‥ 胸がきゅんきゅんして止まりません。
短編それぞれ雰囲気は違いますが、絆を感じさせますね☆

2015年7月18日 (土)

「すえずえ」

畠中恵「すえずえ」新潮社

「しゃばけ」シリーズ、13作目の連作短編集。
ほのぼのと楽しいのはいつもですが~これまでと違う展開があり、いい出来だったと思います。

「すえずえ」というタイトルどおり、それぞれの将来のことを考えさせるような内容。
若だんなの一太郎は病弱で、長生きしないと思われているぐらいだし、立派に跡取りになれるのかどうかも、シリーズ当初は見込み薄な感じだったかと。
妖怪たちとの楽しい暮らしも、続くという保証はない‥
そのへんをうまくさばいています。

「栄吉の来年」
幼馴染の菓子職人・栄吉に縁談が。
話してもらえなかった一太郎はがっかり。でも、それには理由が‥? 結局、一肌脱ぐことになります。
栄吉は、ほほえましい組み合わせに。

「寛朝の明日」
寛朝は、箱根山の黒羽天狗から妖の封印を依頼されて、小田原まで出向くことに。ところが‥?

「おたえの、としこし」
若だんなの父・藤兵衛が大阪で行方不明に。
大阪の取引先が藤兵衛から証文を貰ったと、長崎屋を受け渡すよう、夫の留守を守るおたえに迫ってきます。
病弱な一太郎が何と、大阪へ。そして‥対決の行方は?

「仁吉と佐助の千年」
少し元気になって来たと評判が立ち、一太郎にも、縁談が持ち込まれます。
そんなとき、仁吉はお銀の庭に呼び出されます。同時に佐助も‥
妖と人間のときは違う、その切なさ。
生まれ変わりを千年でも待つと、覚悟を決めるのでした。

「妖達の来月」
一太郎がいずれ結婚することになったら、妖たちがこれまでのように部屋に入りびたりというわけにはいかない。
その解決策として‥?

これまでの作品では、将来のことを考えるとただ寂しくなってしまって、今のささやかな幸せが貴重だけど、切ない、というあたりで止まっていましたが。
少しずつ成長して、意外にちゃんと解決策も見出していける(笑)
無理のない変化が起きていく様子が、とてもよかったです☆

2014年8月15日 (金)

「つくもがみ、遊ぼうよ」

畠中恵「つくもがみ、遊ぼうよ」角川グループパブリッシング

「つくもがみ」シリーズの2作目。
江戸時代に妖怪、というお得意のジャンルです。

物が100年たつと、付喪神が憑くという。
損料屋の「出雲屋」という江戸時代のレンタルショップが舞台。
江戸時代の長屋は狭くて季節はずれのものを置く場所もなく、また火事も多かったため、日用品のレンタルがごく普通のことだったそう。

お紅と清次という血の繋がらない姉弟がやっていた店。
今は二人が結婚して、子供も育っています。
きょうだい同様に仲良く暮らす幼馴染の十夜たち3人。
十夜と市助の二人は、女の子のこりんを守ろうという気持ちもあったり。

子供が主に活躍するので、雰囲気はのんびりしてるかな。
十代向けのような~毒がない感じ。
でも十夜には出生の秘密があったり、事件はよく読むと、重いものも含んではいるのですが。

双六のそう六という、つくもがみがあらたに登場。
双六が難しくて上がる人が少ないと不満を言ったり。小さなつくもがみが偉そうな口を利きつつ、ちょこちょこと活躍します。
1作目では、直接は人と口を利かなかった、つくもがみ達。
子供達がそんなことを気にしなかったため、ふだんは皆ふつうに喋るようになっていて、そのへんで「しゃばけ」シリーズの妖怪たちと近くなってるかも。
よその人にばれないように、大慌てすることになったりしてますが。
江戸情緒と優しい気分を味わえます☆

2014年5月28日 (水)

「坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー」

坂木司ほか「坂木司リクエスト! 和菓子のアンソロジー」光文社

坂木司が「和菓子をテーマに、忘れがたい作品を」と依頼して出来たアンソロジー。
一番好きな作家に一番好きなテーマで作品を書いてもらう企画の一つ。

「和菓子のアン」の坂木司ですよ~しかも、近藤史恵や畠中恵も書いてるのです。
これが読まずにいられましょうか。
バラエティに富んでいて、予想外の味わいを楽しめました。

最初の「空の春告鳥」が坂木司。
「和菓子のアン」の続編というか。休日にもデパートの和菓子売り場へ行ったアン。
もっと読みたいお菓子たちと人たちです。

「トマどら」 日明恩
警察官が行きつけの和菓子屋での妙な出来事に気づき‥
トマトドラ焼き、食べてみたくなります。

「チチとクズの国」 牧野修
自殺しようと思いつめて誰もいない実家に戻った男。
そこで父親の幽霊に出会い‥?
気の合わなかった父子だが、意外な共通点ができていました。

「迷宮の松露」 近藤史恵
仕事に行き詰まり、モロッコへと、あても期限もない旅行に出た女性。
異国情緒溢れる世界で、思わぬ和菓子との再会することに。

「融雪」 柴田よしき
ペンションを経営し始めて1年の若い女性。
新鮮な材料で、毎日メニューを工夫しているある日‥

「糖質な彼女」 木地雅映子
ひきこもりの少年が母に連れられて病院へ行き、消えたアイドルに出会います。
病院付属の和菓子を作る作業所があり‥

「時じくの実の宮古」 小川一水
近未来の日本。なんとSFです。
熱帯化が進み、南には人がほとんど住んでいない。
和菓子職人の父と子は、和菓子が盛んだった伝説の土地へと旅をします。
互いに工夫した和菓子を出して勝負しながら‥

「古入道きたりて」 恒川光太郎
南方の洞窟で出会った日本兵二人。
戦前の思い出を聞かされ、帰国後にその土地へと旅をします。
山の中の一軒家に泊まり、古入道を見られるかと‥

「しりとり」 北村薫
歌にこめられた謎を解く話。
夫婦の出会いを思い出す情感。

「甘き織姫」畠中恵
新婚夫婦のもとへ友達が集まって串揚げパーティー。そこへ、難問を抱えてきたのは学生時代以来久しぶりのの友人。
凝りまくった友人の変人ぶりが際立ちますけど、悪気はなさそう。

あまりにも変化に富んでいるので、どういう薦め方をしたらいいのかと紹介が書きづらかったんですよ。
でも風変わりな話もいつまでも覚えているので、これは‥一生覚えているかもしれない!?と。
知らない作家さんに興味を持てたことが良かったです☆

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