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おすすめ本

2018年7月14日 (土)

「ツバキ文具店」

小川糸「ツバキ文具店」幻冬舎

鎌倉を舞台に、文具店を継いで代書屋となる若い女性。

書くことが難しい手紙を、よく話を聞いて代わりに書いて出すという。
あたたかい気持ちになれる優しい物語です。

雨宮鳩子は厳しい祖母に育てられ、しつけというより修行のような独特な教育に反発して、家を出ていました。
祖母が亡くなり、なりゆきで文具店と代書屋を継ぐことに。たいてい「ポッポちゃん」とかわいく呼ばれていますが、高校の頃は反抗期でガングロだったという激しいものも秘めています。
隣の洋館で暮らす女性は皆に「バーバラ婦人」と呼ばれていたり、近所に住む初老の堂々とした男性は「男爵」、ポッポちゃんになつく女の子は「QPちゃん」など、可愛らしいネーミングで柔らかな雰囲気が溢れ、癒やされます。

依頼される手紙の内容はじつに様々で、お悔やみの手紙や、離婚の報告をする手紙、結ばれなかった初恋の人に元気だということだけを伝えたい手紙、借金を断る手紙、なくなった夫からの手紙を待っている老婦人に送る天国からの手紙など。
事情を汲み取って、依頼人の心をほぐし、手紙の目的を達成する‥
そのためには、身を清め、便箋の紙質や筆記具の種類、字体などもよく考えて書くのです。
ポッポちゃん(この呼び方がおかしくない雰囲気の娘さんだと思われるのですが)、じつは凄腕!
この凝りようと専門知識も面白く、メールでなくプリンター印刷でもない手書きの手紙というのは良いものだなという素直な感想をいだきました。

美しい四季の移ろいと古風な暮らし、美味しい食べ物、身近な人との親しさが深まっていく楽しさ。
心に頑なな屈託を抱えた鳩子自身が少しずつ落ち着いてきたある日、祖母が文通していた異国に住む女性から、手紙が届けられ‥?

すべてが丁寧で優しく、人の暖かさに包まれるよう。
うまくいかないこともある、苦しみがないわけではないけれども、必ずその先になんらかの方向性は見える。
それが自然に現れる感じがとても素敵な物語でした。

NHKのドラマ化も、上手く行っていましたね。
続編の「キラキラ共和国」もよかったです☆

2014年9月13日 (土)

「あつあつを召し上がれ」

小川糸「あつあつを召し上がれ」新潮文庫

食べ物をめぐる短編7本。
人生の節目に味わった印象的な食べ物とは。

同棲して10年の恋人と、予約しておいた旅行が、お別れ旅行になってしまいました。
奥能登の旅館で食べる最高の食事。

ぼけてきた祖母が、何も口にしなくなります。
必死で看病する母。
孫は、祖母が思い出したらしいカキ氷を求めに走る。

結婚前の娘が作るお味噌汁。
早く亡くなった母が、まだ幼い娘に教え込んだ味噌汁の味とは。泣かされます。

夫のショー造さんと、いつものパーラーへ食事に行く老婦人。
店やメニューが何か変わったと思いつつ、懐かしむ思い出は‥

豚のポルクを愛人にしている男。
ある絶望からパリへ、最後の晩餐を味わいに出かけるのでした。
え、愛豚を最後に食べる話か?と思ったら‥
醜くて美しい男の愛人の話。

きりたんぽにはうるさかった亡き父のため、母と娘は二人できりたんぽを作ることにしたのですが、その味が‥?

生きることは、食べること。
泣きながらでも、生きるには食べるしかない。
ふとしたことで深まる、切ない味わい。
香りが立ちのぼるような描写が、とても美味しそう。
ちょっとタイトルの印象と内容には、ずれがありますが。
具体的に出てくる食べ物も印象的ですが、ひとつひとつ作品の味わいが違うのが、何とも面白かったです。

2010年8月24日 (火)

「喋々喃々 」

小川糸「喋々喃々 」ポプラ社

下町情緒の残る町・谷中に、アンティーク着物の店を出している若い女性・栞。
雨の日は休みにするという商売で~食べては行けるのでした。
近所のユニークな老婦人・まどかさんなど、個性的な面々が出入りする、楽しげな生活ぶりで、心地良く読めます。

過去は甘くはないのですが~それぐらいはないと?
両親は母の不倫が原因で離婚。母は次女の花子とその時生まれた異父妹・楽子と3人で暮らしています。
長女の栞は離婚の際に父の方に行き、父が自力で建てたログハウスで数年を暮らしました。
妹の花子は、着物を着て外人観光客とデートする仕事をしていて、着物を借りに来ます。
恋人の雪道とは、妹の花子との件を許せずに別れてしまった過去がありましたが、彼が結婚した後も年賀状は心待ちにしていました。

顔なじみの老人・イッセイが入院したと知り、見舞いに行くと、退院後にデートする約束をするなりゆきに。
最初で最後のデートになるのですが、半日一緒に過ごすデートはおいしい物づくしでゴージャス。
この店は実在?どこにあるのっ?と聞きたくなります。
イッセイが若い頃好きだった女性と、栞は少し似ているらしいのでした。その女性は大空襲の日に、その近くの川で亡くなっていました…

習い始めた茶道のための着物を買いに来た春一郎と出会い、心惹かれ合います。
妻子有りなので、互いに自制しながらも…
淡い思慕と静かな幸福が、やがて盆や正月休みには会えない辛さに変わっていくのですが…
それでも、こんな恋ならしてみたい?!

食べ物が~~!作るものも出先で食べるものも、どれもこれも美味しそう。
祭りの風物、下町の情緒がたっぷり。
季節に合わせて次々に選ぶ着物も楽しげ。
花火の音を聞きながら、二人で鰻を食べたりね。
前に来たときよりも綺麗になった店で、鶏鍋を食べたりね…うっとり♪

お詫びと訂正:最初にアップしたときに、題名の漢字が間違ってました!失礼いたしました~。

2010年8月 4日 (水)

「ファミリーツリー」

小川糸「ファミリー・ツリー」ポプラ社

「食堂かたつむり」に続いて読んだ~私にとっては小川糸さん2作目。2009年11月の作品。

安曇野の中心地・穂高で育った男の子・リュウ(流星)。
曾祖母の菊さんが料理の腕をふるう~古びた旅館の名は、恋路というのでした。
両親を早く亡くした父にとって、祖母の菊さんは親代わり。
父母とリュウは、旅館の一角に住んでいました。

従姉というか~もう少し遠いややこしい関係の親戚だけど、年が一つ違いのリリー(凛々)は毎年、夏にやって来ます。
スペイン人の血が少し入ったリリーは背が高く、子供の頃からエキゾチックな魅力がありました。
空を見上げて放心状態になる癖があり、どこか孤独な陰を背負っていたのです。

流星と姉の蔦子は、リリーと3人で仲良く小学生時代を過ごします。
「ドリーム」と書かれた旅館の一室の大きなベッドで、3人で寝たり。
スバルおじさんのハーレーダビッドソンのサイドカーに乗ったり。
遠出したときに見つけた捨て犬を海と名付け、みんなで可愛がりますが…

思春期を迎え、親と気まずくなったリュウは、菊さんのペンションの手伝いをしていました。
そんな頃、リリーの複雑な家庭の事情を知ります。
中学生でリリーと付き合い出しますが、親の反対を受けて2年半会うのをやめることに。
大学で東京に出て、再会します。

リュウには大学で沖縄出身の友達が出来ますが、人妻に恋して大学をやめ、なんとホストになってしまう。
一方、ちゃくちゃくと自分の進路を見つけたリリー。
進路を決められずに置いて行かれた気分になるリュウでした。

大学生になる頃には、かわいがってくれた菊さんともちょっと距離を置くようになっていました。やがて…?
穂高の風景描写が綺麗で、幼い頃の思い出が美しい。
十代後半の話には時々イライラするが、確かにそういう時期だよね。
いろんなことにぶつかり、やる気がなくなることも、苦しみあがくこともある。
カタルシスもあり、わかるところもあり。
感動的な結末へ。

2010年3月30日 (火)

「食堂かたつむり」

小川糸「食堂かたつむり」ポプラ文庫

映画も公開中の話題作です。
映画化されるというので~ちょっと前に読みました。

トルコ料理店でアルバイトしていた倫子は、ある日突然、すべてを失ってしまいます。
インド人の恋人が、家財一切と共に姿を消したのです。
残っていたのは、祖母が残したぬか床だけ!
しかも、声まで出なくなっていた…

料理を教えてくれた祖母はもう亡くなっています。
15で家を出て以来、戻らなかった故郷に帰るほかありません。
スナックを経営する派手な母親とは気が合わなくて、特に思春期には、男に囲まれていて愛人がいることなど許せないものがあったのでした。
今回は、ペットの豚の世話をすることを条件に、高利で資金を貸してくれることに。
巨大に育っている豚は、倫子が家を出た後に母が飼い始めたのです。

テンポよくいきいきと描かれ、気持ちよく引き込まれます。
物置を自分好みに手作りで改装していく楽しさ。
そして出来あがったのは、一日に一組だけの食堂。
一つずつ生まれる幸せがちょっとファンタジック。いいですね~。
お料理も美味しそう~!

村では浮いてしまうほど派手な母親の意外な面や、生い立ちの秘密を知っていく倫子。
後半はまた、うねりのある展開で飽きさせません。
面白かったです

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