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おすすめ本

2012年1月26日 (木)

「シティ・マラソンズ」

三浦しをん、近藤史恵、あさのあつこ「シティ・マラソンズ」文藝春秋

それぞれにスポーツ系でヒット作のある3人の作家の企画物。
挫折感やほろ苦さ、こだわりや希望…
いい感じです。

「純白のライン」
阿部広和は、不動産会社に勤めています。
社長に呼び出されて、ニューヨーク・シティマラソンに参加するツアーに行かされることに。
社長の娘・真結が参加するので、そのお目付役でした。
家庭的な会社で、若い広和は真結のおもり役もずいぶん務めたものだったのです。
もとは陸上部だった広和ですが、ブランクは10年。
大学4年になって陸上の才能がないとやっと見切りを付けて、就職活動をし、面接で「努力の意味がわからなくなった」と本音を吐いた所、採用されたのでした…

「フィニッシュ・ゲートから」
南野悠斗は、スポーツメーカーのシューズオーダーメイド部門に勤めています。
8年音信不通になっていた友人・冠城湊から、東京マラソンに参加するという電話が入ります。
中学高校と一緒に走っていたのですが、湊は控えの選手で、悠斗のほうが優秀でした。
ところが、焦りから疲労骨折を起こし…

「金色の風」
フランスに留学した香坂夕。
バレエ教室を経営する母のもとで、幼い頃からバレエに打ち込んできましたが、1年前にやめたのです。
妹の朝美のほうがぬきんでた才能があり、朝美のハンブルグ留学が決まった後のことでした。
部屋の前の通りをランニングして通る女性アンナと知り合います。
金色の犬のベガと共に走っていたアンナ。
「あなたもバレエという芸術の一部なのよ」と…

さわやかな読み応え。
スポーツ選手には故障や限界の苦しみがつきものだけど…
挫折もふくめて、すべては糧になる?

2008年10月 6日 (月)

「弥勒の月」

あさのあつこ「弥勒の月」光文社

2006年2月発行。
「バッテリー」の作者が書いた時代物。しだいに幅を広げて行ってるんですね~達者なもんです。

岡っ引きの伊佐治は、北定町廻り同心・木暮信次郎のもとで働いています。
木暮の父の右衛門の代からのつきあいですが、温厚だった父に比べて、つまらない事件は冷たくあしらう若い信次郎にとまどいを感じているのでした。
月の夜、若い女が堅川に身投げするのを目撃されます。
遠野屋の若おかみ・りんとわかりますが、身投げの理由が見あたらない。
遠野屋の若だんなは入り婿でもと武士。評判はよいのですが、あまりに冷静な立ち居振る舞いから並の人間ではなさそう。
同じ年頃の好敵手を得て、妙に絡む信次郎だが…

身投げを目撃した男が殺され、不審な出来事が続きます。
遠野屋の過去に何か因縁が…?
人の良い伊佐治と知が先に立つ信次郎、過去を背負った遠野屋という3人のキャラクターの葛藤と、江戸の闇夜に起こる事件のスリルが眼目かな。
ふっと終わるのはわざとでしょうね。
哀しい余韻が残ります。

2008年9月10日 (水)

「あかね色の風」

あさのあつこ「あかね色の風/ラブ・レター」幻冬舎文庫

94年の「あかね色の風」と98年の「ラブ・レター」2本を収録した文庫。2007年刊。

北川遠子は12歳。
走るのが純粋に好きだったのですが、陸上部で不本意ないきさつで怪我をしてからすっかりヤケ気味。
そこへ、転校生の千絵がやってきました。
色白でふっくらして~家庭の事情もあるのに屈託のない千絵は、長身でとんがった色黒の遠子とは対照的。
一つしかない6年生のクラスではろくに口もきかなったのですが、化石が好きだという千絵にふと近づいて、遺跡の発掘現場へ遠出をすることになります。
反抗的で人付き合いの苦手な遠子は、「バッテリー」の巧の原型のようです。

「ラブ・レター」は高校生の姉の恋を見守りながら、自分も初めて好きな男の子に手紙を書こうとする話。
文章を書くことに目覚め始めたときめきが、作者の少女時代を思わせます。
2編とも、自然な語り口。本当にどこかにいそうな女の子を描いて、さりげなく充実した内容。

2007年9月16日 (日)

「ラスト・イニング」

あさのあつこ「ラスト・イニング」角川グループパブリッシング

人気シリーズ「バッテリー」の続編にして最終章。
中身は、「マウンドへと」という、あの試合直前の巧と門脇それぞれの心境を描いた短編と、「白球の彼方」という中編です。
中編の方は、横手中学を卒業して野球部のない高校へ進んだ瑞垣の視点で語られます。
瑞垣って人気あるらしいですね~!

「バッテリー」は新田東中学の1年生のピッチャー巧とキャッチャー豪の物語でした。
横手は近在の強豪で、いわば敵側。特に門脇は有名高校から勧誘される大物バッター。1年生の巧の投球に度肝を抜かれ、中学の最後に試合をすることを望み、いまだにとらわれている様子。
瑞垣俊二は門脇の幼馴染みで、頭は良いが屈折した性格。門脇の才能を最も理解するだけに傍にいて重圧に苦しみ、自分は野球から決別することを決意したのです。
このコンプレックスが良いのか、実はスゴク優秀なのが良いのか…
少々かっこつけ気味の言葉をたたみ掛けて引き込んでいく、あさの節~理想を高く掲げて現状をあれもイヤこれもイヤと否定していくのが若々しいので、瑞垣の言葉として違和感ないですね。

あれから2ヶ月がたって、さっぱりしたはずなのに~野球の夢を見てうなされ、戸惑う俊二。
可愛い妹にも最近かっこよくないと言われる有様。
門脇が苦労していたためにそれを放っておくのかと、まわりじゅうから心配され、色々言われる羽目になり…
何だか心地良い展開です。

「バッテリー」の6巻が物足りなかったのは、これを書くと決めていたからでしょうね。
あのままじゃ試合の結果もわからないし、門脇が瑞垣に投げ出されたままどうなったのか、何を話したのかorちゃんと話してないのか?瑞垣はあのまま野球をホントに捨てられるのか?ひっかかってました。
これで全て方向性が見えて、脇役もなかなか味があり、満足のいく内容でした。
甲子園に行くだけが全てじゃない、といった指摘も最後にしておきたかったことなのかも知れませんね。

ただし、巧と豪はちょっとしか出て来なくて、それがけっこう可愛いんだけど、でも少ないよな…とも思います。
瑞垣目線の2人というのも、なかなかではありますが…
豪の存在の大きさに注目し、友情とかいうような甘えた関係には思えない、って、うんまあね。でも、じゅうぶん甘やかさはあると思うけど!

6巻の書き方もわからないではないんだけどね~。
終わってしまう寂しさと、彼らの人生は続いていくという視線…
良い所で筆を止めたいような、ね。

2007年8月31日 (金)

「バッテリー」

あさのあつこ「バッテリー」(Ⅰ~Ⅵ)角川文庫

だいぶ前から噂には聞いておりました。
今年は映画化もされ、漫画も連載中なので、大メジャーですね。
皆さんご存じと思いますが~~野球部員の話。
天才ピッチャー巧と相方のキャッチャー・豪の出会いと葛藤を中心に、中学入学前の春から1年間を描きます。

私は去年からぼちぼち読み始め、この8月はじめに6巻を読了。
翌日、NHKで取り上げられてビックリでした。
いちおう児童書ですが、20~40代の女性に熱心な読者が多いとか。
作者が子育てを終えてから書き始め、まだ本気になっていない、やり残したことがあるという強い思いに引き込まれるのではないかという分析でした。

作夏、高校野球で王子ブームが巻き起こる前に読み始めたので、けっこうイメージだぶりました。(いえ性格は違いますけど)
ピッチャーが凄すぎるとキャッチャーが受け止められなくて落とすことがあるというのも再認識。サインを出すってのも、考えてみるとキャッチャーの役割って大きいんですね。
昔々、いろんな野球漫画を読んでいた当時はもっと知っていたかも知れないんですけどね…大リーガーの結果ぐらいしか気にしなくなっていたので、なかなか新鮮でした。

一途だけどやたらと気が強くて自信たっぷりの巧は、最初は個人競技の方が向いているんではと思うぐらい。ピッチャーが強いと一人勝ちするってのも確かにありますけどね。
6巻まで読んでも1年だけのことなので、ほんの少ししか成長してません。
純粋さに力を入れて書いているから、中学1年なのでしょう。
でも、この一行、お姉さんは見落としませんわよ、ってのもありました…!?
病弱で母親に大事にされてきた弟クンの方が目に見えて成長しましたね。
その分、巧を囲む環境が自ずと変わった…
自分一人と気張っていた小学生までの彼が可愛いような気もしてきました。

脇役は傍若無人な天才の登場に振り回されて、その分成長するというか、変化します。
概して大人っぽくて、中学の野球部員がこんなにたくさん喋るかなあって感じですが~その勢いに引きまれるのが快感かも。
はっきりさせなかった試合の結末は、続く一冊「ラストイニング」でわかるそうです。
今手元にあるので、楽しみ。

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