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2018年9月30日 (日)

「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

デボラ・インストール「ロボット・イン・ザ・ガーデン」小学館文庫

あるロボットとの出会いから、変わっていく男。
近未来のSFですが、想像しやすい世界です。

アンドロイドがどこにでもいて働いている時代。
家事のために買おうかと相談もしていたベンとエイミー夫婦のところに、ある日、ロボットが迷い込みます。
四角い箱を重ねたような素朴な旧型で、どうも壊れかかっているかもしれない様子。
「タング」と名乗ったこのロボットに、なぜかベンは惹かれて夢中になっていきます。

妻のエイミーは、バリバリのキャリアウーマン。妻のエイミーは、バリバリのキャリアウーマン。
ところがベンは両親の急死のショックで勉強も進まないまま、受け継いだ家で半ばひきこもりのような生活を送っていました。
エイミーが呆れて家を出ていくと、ベンはタングを直すために製作者を探す旅に出ます。

アメリカへ渡り、ロボットを巡る諸事情に混乱しつつ、さらに日本まで行くことに。
この日本がありがちな描かれ方ではなく、現実を踏まえて好意的に書かれているのも嬉しい。

予想以上に波乱の展開で面白いんですが、なんといってもタングが可愛くて可愛くて。
思い出しても笑顔になっちゃいますねえ。
切なくて、あったかい。
心をぎゅっとわしづかみにされつつ、楽しく読めました☆

2017年12月23日 (土)

「宰相の二番目の娘」

ロバート・ヤング「宰相の二番目の娘」草原SF文庫

「たんぽぽ娘」で知られるロバート・F・ヤングのロマンチックSF。
『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』を下敷きにした、可愛らしいお話です。

タイムトラベルが可能な未来世界。
新米のマークは博物館の展示企画のため、9世紀へ飛びます。
『千夜一夜物語』の場面を再現するために、本物のシェヘラザードを拉致して、そっくりなロボットを作り、本物は何も知らないうちに過去へ戻すのだ。
ところが、連れて出たのは、似てはいるがまだ15歳の妹のドニヤザードだった‥!?

追手を振り切ってドニヤザードと移動した先は、見知らぬ世界。
『千夜一夜物語』さながらの異世界に飛び込み、謎また謎の状況を生き抜けるか。
利発で可愛いドニヤザードに惹かれ始めたものの、どうにもならない‥?!

いえいえ、そこはね(笑)
ハインラインの『夏への扉』ファンにも、おすすめです☆

2016年11月15日 (火)

「エンジェルメイカー」

ニック・ハーカウェイ「エンジェルメイカー」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

時計職人が修理した機械は、世界を破壊しかねない物だった!
国際的陰謀に巻き込まれた青年の、波乱の冒険物語☆

時計が専門の機械職人ジョーは、祖父の店をついで地道に暮らしていました。
父親は、じつは名の知れたギャング。ある日ジョーは、何だかわからない機械を修理したことから、謎の男達に追われる羽目に。

機械を持ち込んだ奇妙な老婦人イーディは、じつは往年のスパイ。
彼女の回想がやたら濃厚で、インドの藩王や、陰謀をたくらむ秘密組織が入り乱れます。
ジョーの祖母に当たる美女フランキーも深く絡んできます。

前半は方向性がわからない状態で細かい描写が繰り広げられ、主人公は危機に陥るばかり。
後半は俄然テンポがよくなります。
ジョーが父親のことをやや見直し、自分の半面を生かすことに。
幼馴染の兄妹マーサーとポリーやその仲間達が、絶体絶命のジョーを助けようと奮闘してくれるのが楽しい。

作者は高名なスパイ小説作家ル・カレの息子だそう。
その事実は隠してデビューしたそうです。
主人公が父親とは別な道を行こうとする気持ちがわかるのかな?(笑)

ハヤカワ・ポケット・ミステリを日頃から読んでいる人になら、そりゃあ読んでください!とオススメ出来ます。
楽しそうに書き込んであって、読み応えあり。
これぞスチーム・パンク?というインパクトも。
冒険ものの華やかなハリウッド映画が好きな人にも、後半の展開は喜んでもらえそう☆

2016年8月16日 (火)

「火星に住むつもりかい」

伊坂幸太郎「火星に住むつもりかい」光文社

近未来の仮想日本のSFとでもいうのか‥
宇宙を舞台にしたSFではありません。
密告による処刑が公開されるという怖い話ですが、そこへ正義の味方が現れ‥?

平和警察という組織が作られ、海外テロ組織への関与を疑われた人物を取り調べる権限が与えられていました。
指定された地区では、しだいに密告が増えてくる‥

ごく普通の人々が生活している様子のなかに、突如として町の噂や隣人の逮捕といった出来事が降りかかります。
不運な人もいるが、すれすれで逮捕を免れる人もいる、ちょっとしたユーモアも含みつつ伊坂さんらしい展開。

謎の正義の味方が実行力を持っている面白さと、上のほうでも何やら独自の権力争いがおきている不気味さ。
予想のつかない展開のうちに~事態は?思わぬ展開を見せて、ほっとする‥
が、怖さは残りますね。
犯罪者同士のダークな話とは違う怖さ。
日本でも似たようなことが起こりかねない!?

‥人の心の中にある自然な動き、思いやりや勇気、前向きな気持ちを大切に。
お天道様に顔向け出来ないことはしちゃいけないよって(笑)
平和を愛する日本を誇りにしていきたいものです☆

2016年6月 4日 (土)

「猫の惑星」

梶尾真治「猫の惑星」PHP研究所

この惑星の支配者は猫?
少年と猫が冒険するファンタジーSF。

イクオは、シテンという閉ざされた場所で、大勢の子供たちと暮らしているという設定。
ある種の素質を持った子供が集められ、超能力の訓練を受けて、いずれは卒業?してどこかへ行ってしまう。
ふだんは「ママ」たちが世話をしてくれています。
シテンの長は「パパ」で、すべてはパパの指示にしたがって行われていました。
離れたところに、普通の町もあるらしい。

イクオは、中庭で猫を眺めるのが好きでした。
いつしか、その中のボス的な存在のウリという猫と、テレパシーが通じるようになります。
ある事件が起きて、シテンを脱出することになったイクオは出会う人たちを助け、助けられながら、共に町へ向かいます。
賢い猫のウリからは、思いがけない話を聞くことに。
ほかの猫たちも次第に集まってきて‥?

設定は意外に?しっかりしたSFらしい導入だけど、この小人数でどう展開するのかな、まとまるのかな‥?
と思っていると~
なるほど、短い期間だけど命の危機もあり、ちょっとした切なさもあり、書き込みは少ないけど、小人数の中での展望や決着もあり。
いい意味でも軽い意味でもジュブナイル。
猫たちの個性や賢さは、わかる感じだし~
悪くない読後感でした☆

2016年4月25日 (月)

萩尾望都SF原画展

吉祥寺まで行って来ました。
吉祥寺美術館で開催されている~萩尾望都展を見て来たのです。
チラシの表。
160424_175025.jpg
横に置いてますが~絵としては、こっちの向きのほうが見やすいので‥

会場前のパネル。
160422_181425.jpg
美しい阿修羅王。
このパネル?だけは、写真に撮っても良いようでした。

SF作品に絞ってあるので、まとまりのいい展示でした。
入場料は何と100円!
繊細なペンタッチと微妙な色彩が、雑誌の印刷には十分きれいに出ないところもあるので~
生原稿を見るのは至福ですよ。
「ユニコーンの夢」の原画が美しかったです。
「マージナル」がやはり好きかな[揺れるハート]
「スターレッド」はそれほどには好きじゃなかったかもしれないけど、今見ると綺麗。
力がこもってました。
挿絵やイラストなどは知らないものもあり、けっこうそれも良かったです[るんるん]

チラシの裏。
160424_175117.jpg
チラシの裏の上半分。
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下半分。
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売り場で、パンフやTシャツや複製原画や萩尾さんの本をまじまじと眺めましたが~[あせあせ(飛び散る汗)]
結局何も買わず[ふらふら]
持っていないコミックスを買うほうに予算を使うつもりです[ひらめき]
持っているのも読み返したいし![かわいい][ぴかぴか(新しい)]

2016年1月26日 (火)

「ラプラスの魔女」

東野圭吾「ラプラスの魔女」角川書店

東野圭吾2015年5月発行の意欲的な長編。
空想科学的な要素を含み、「これまでの自分の小説をぶっ壊してみたかった」とのこと。

かって起きた竜巻。
母子が巻き込まれましたが、娘は生き残り‥?

元警官の武尾は数理学研究所の依頼で、羽原円華という若い女性の警備につきます。
行動を共にするうちに、彼女には不思議な力が備わっているのでは、と思うように‥

二つの温泉地で、相次いで硫化水素による死亡事故が起きます。
検証のために訪れた研究者・青江は、双方の現場で謎めいた娘を目撃します。
事件を追う中岡刑事。
冷たい美貌の甘粕才生という天才と、その息子の健人。
何かが欠落している人物の研究による、思いもよらない結果が今起きている‥?!

普通の人間達が、天才の引き起こした未来的な事態の謎を追う展開。
先の予想が出来る能力は場合によってはすごくカッコいいけれど、現実に生きていくのは難しくなるという点も。
ファンタジー‥だけでもない微妙なところがポイント?
不思議な作品でした。
好きってところまでは行かないけど、イメージの豊かさや展開の上手さで、読んだ甲斐はあったかな。

作家デビュー30年、80作目の到達点だそうです。

2015年4月 4日 (土)

「死者の短剣」

ロイス・マクナスター・ビジョルド「死者の短剣―地平線」創元推理文庫

SF作家として経歴が長く評価の高いビジョルドのファンタジー「死者の短剣」4部作、完結編です。
いきいきしたキャラが魅力的☆
ビジョルドのファンタジーは大人向けで、いいですよ!
さすがにしっかりした構成で、面白く読めました。

地の民の娘フォーンは、湖の民(うみのたみ)のダグと結婚、旅を続けています。
この世界では、地の民は小柄な農民。
湖の民はかっての魔力を持った貴族の末裔で、長身で長命、「悪鬼」を退治するための力を持っていて、警邏が仕事なため定住しません。
地の民から見れば、魔法使いのようなものでした。

互いの家族から結婚を反対された二人。
悪鬼を退治する連隊の長として長らく名を馳せたダグですが、ここへ来て治癒能力が強くなり、地の民を治療する仕事が出来ないか考え始めます。
それは湖の民にとっては、ある理由があって、禁忌なのですが‥

基礎継ぎの師を求めて、新月湖駐留地(ニュームーンカットオフ)に来た二人。
医術の師匠アルカディに認められますが、地の民の子供の窮地をダグが救ったために追い出されることに。
このとき、なんと医術の匠アルカディも、二人を追って出て来るという決断をしてくれました。理解者になっていたんですね。
そんな彼らを追いかけて、駐留地からの許可を携えた若者達が合流。その中にはダグの姪で有能な隊員のスマックもいました。
たまたま出会った家族と一緒の旅が始まります。

ところが、その地域では珍しく、悪鬼が発生し、わずかな人数しかいない彼らが急速に成長した異形の悪鬼と対決することに‥!
冒険のシーンとその解決を毎回織り込み、若者たちの迷いや恋愛、成長も見逃せません。

子供のように小柄だけど生き生きしたフォーンのあたたかさ。いざというときには勇気を示します。
人生にやや疲れていたダグがフォーンに助けられ、キャリアを発揮して活躍。
新たな技術も生み出して、小さな革命を起こすのです。
決して諦めずに細い道を切り開き、少しずつ理解者を増やして、二つの民族の架け橋となっていく‥
二人の間の子供を育てながら、希望を抱いて仲間と暮らす結末。
作者の平和への願いがこもっていますね。
このあたたかさが得がたい作品でした。

2014年12月24日 (水)

「図書室の魔法 下」

ジョー・ウォルトン「図書室の魔法 下」創元SF文庫

本好きには楽しい魅惑の物語、後半。
ファンタジーですが、少女の日記の中にSFを読んだ感想がいっぱい。
読書クラブの仲間に出会った幸福に溢れています。

生まれ育ったウェールズから、イングランドの寄宿学校へ。
家でも学校でも孤立しがちな15歳の少女モリ。
同じようにはみ出し気味の級友を見つけ、だんだん友達付き合いも増やしていきます。
でも自然の中にフェアリーが見えるのは自分だけ、双子の妹をなくしたのも自分だけ、悪意を向けてくるとんでもない母親と対決しなければならないのも自分だけ。
誰にも話せないそういう経験から大人びている面もありますが、まだブラジャーの買い方もよくわからなかったり。
そういうところから、恋を知り、世界が広がって行きます。

事故で不自由になった片脚を引きずっていますが、体育の間、見学する代わりに図書室で思う存分、本を読めることになったのが救いでした。
町の図書館に集まる読書クラブに入れることになり、生まれて初めて、話の合う仲間が出来るのです。
この喜びは本好きならわかりますよねえ‥特にSF好きなら。
本を大量に読む子はそういないし、趣味が合うとなるとさらに難しい。
私は、SFはずっと前に読んだきりでよく覚えていないのが多いんですが、それでも、そうそう!とわかったり笑ったり、これ読んでないかも~読みたい!という気になったり。

読書クラブで知り合った2歳上のウィムはとてもハンサムで、本の趣味もかなり合いそう。
前のGFと悪い噂があったため、近づかないように忠告されたりもしたのですが。
魔法やフェアリーに興味のあるウィムを森に誘い、フェアリーを見られるかどうか試してみるのが初デートという。

この作品はすべてモリの手記という形で語られ、しかもすべてが事実ではないかもしれないですよ、と冒頭に書かれています。
普通にファンタジーと読んでさしつかえない内容ですが、どこかは少女の空想と解釈することも出来るのです。
「指輪物語」をこよなく愛する少女ですからね。
そのへんの解釈は、お好みで?

1979年に15歳、というのは作者自身の年齢と同じ。
作者はウェールズの町で育ち、15歳ではなく大学でイングランドに行っています。
読んだ本の感想や、15歳ならではのちぐはぐな感覚は、おそらく当時を思い出して書いた部分が多いのでしょう。
当時、空想していたことも含まれているのでは?
自分にある問題を別な形に置き換えたり、平凡な自分にはない不幸をドラマチックに想像したり。
いえ私は丸ごと、こんな子だったわけじゃありませんよ~という、照れ隠しなんじゃないかな~という気がしています。

2014年12月23日 (火)

「図書室の魔法 上」

ジョー・ウォルトン「図書室の魔法」創元SF文庫

ジョー・ウォルトンの新たな魅力。
15歳の本好きな少女の視点で、寄宿学校の生活に、フェアリーと魔法が絡む物語。

モリことモルウェナ・マコーヴァは、15歳。
モリが幼い頃に家を出たきりだった父親のダニエルに引き取られ、すぐ父の姉たちによって全寮制の女子校に送り込まれます。
ウェールズの峡谷にある美しい村で生まれ育ったモリ。
母方の祖父母と叔母に可愛がられて育ちましたが、祖父の入院で、顔も知らなかった父の元へ来るしかなくなったのでした。

イングランドでは言葉のなまりも違い、学校でからかわれることになります。
1年前に交通事故で双子の妹モルを喪い、自分も片脚が不自由になっているモリ。
しかも、その事故には実の母親が絡んでいて‥
今も悪意に満ちた手紙を送ってくるという。
森に住むフェアリーを見ることが出来た双子ですが、イングランドではフェアリーも滅多に見当たらない。

読書家で、特にSFを大量に読んでいるモリ。
孤独な日々を支えているのが、魅力に溢れた本の世界でした。
伯母たちに逆らえない大人しい父のダニエルもSF好きだったため、だんだん友人のようになります。
学校の図書室の司書ミス・キャロルには親切にしてもらい、勧められたジョセフィン・テイも読んだり。
そして、町の図書館に集まるSFのサークルがあることを知り、参加できることに!

そう簡単にはめげない女の子が抱える不幸が痛ましいけれど、日記の形でびしばし子供の本音が語られるのが面白い。
一体、どんな展開に‥?!
ファン投票で選ばれるヒューゴー賞を受賞したというのは、わかります♪

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