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おすすめ本

2019年2月10日 (日)

「特捜部Q─自撮りする女たち─」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q─自撮りする女たち─」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「特捜部Q」もシリーズ7作目。
デンマークの大人気ミステリです。
地下の特捜部に追いやられているカール・マーク警部。
部下はほぼ警官ですらないメンバーで回しているが、事件の解決率はかなりのもの。
今回は秘書のローセに焦点が当てられています。

福祉国家として知られる北欧のデンマーク。
福祉事務所には給付を望む市民が詰めかけ、中には働く意志がなくなんとか言い訳してお金だけは貰おうという根性の人間も。
相手をする係員もストレスを抱えているのでした。
そんな状況で出会った気まぐれな若い娘たちが意気投合、思わぬことから犯罪に‥?
背景には、歴史を背負って破綻した家族たちの重いものも含まれるのですが。
おしゃれだけはする若いコたちの身勝手な言い草が情けないやら哀しいやら。
さらに、真面目な官吏のはずの担当者の切れっぷりのほうがすごくて、笑えてくるほど、ぶっ飛ばします。

ローセは有能だけど変わり者。というのはわかっていましたが、これほど壊れてしまうとは‥
鬼気迫る描写の後に、過去のつらい状況が明らかに。
現在の事件とも運悪く絡み合い‥
救いようがないと思われたいきさつがあっても、時とともにじわりと事態は動きます。
ローセを救おうと懸命に突き進むカール、アサド、ゴードンたち。
ラストに光が差し、泣かされます。

2019年1月31日 (木)

「道化と王」

ローズ・トレメイン「道化と王 ヨーロッパ歴史ノベル・コレクション」柏書房

17世紀イングランド、王政復古の時代。
宮廷に上がった医師の波乱の人生。

1660年代、英国ではクロムウェルの清教徒革命が終わり、処刑された前王の息子が復帰して、チャールズ2世となります。
清貧に飽きた人々は優雅で豪奢な生活を求め、宮廷は爛熟していきます。
ロバート・メリヴェルは、王の犬を治療したところから宮廷のお抱えとなり、王に気に入られて、道化のようになります。
かっての志はどこへやら、生真面目な学友ピアスには嘆かれますが。
王様に魅了されているメリヴェルは、王に愛されていると思っていました。

王の愛人シリアと結婚するよう命じられ、立派な屋敷を与えられることに。
それは王の数多い愛人の嫉妬の目をくらますためで、メリヴェルは名ばかりの妻になったシリアには疎まれ、宮廷からも引き離されてしまう結果に。
しかも、シリアを愛してしまったメリヴェルは王に追放されてしまいます。

一転して貧しい暮らしに‥
友人ピアスの勤める精神病院に転がり込み、治療を手伝うことになります。
そこで、純真な患者の女性に無垢な真心を向けられ、あらたな愛を知ることになります。
おりしもペストが流行し、ロンドンでは大火という、激動の時代。
愛嬌だけのような駄目男メリヴェルも実は~衝動的なだけあって行動的ではあるのです。
医術の覚えはあり、ついに‥?

歴史ミステリでもない歴史物を久しぶりに読んでみようと。
途中で、映画化された作品をずっと前に映画館で見たことに気づきました。
「恋の闇 愛の光」という‥
豪華な衣装は楽しめたし、小説でもそういった描写は詳しいです。
主演はロバート・ダウニーJrだったので、醜男という原作には合ってないけど(笑)
珍しい時代への興味深さと、重厚な描写で読み応えがありました。
お仕着せのお屋敷の召使いが後々までメリヴェルを待っていてくれたのが泣かせます。

2019年1月24日 (木)

「オーロラの向こう側」

オーサ・ラーソン「オーロラの向こう側」ハヤカワ・ミステリ文庫

スウェーデンのミステリ、女性作家による女性弁護士ものです。
2003年にこの作品でデビューし、スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を受賞。

レベッカ・マーティンソンは首都で働く若い弁護士。
大きな事務所に入れたはいいがまだ弁護士になりたてでこき使われ、上司とうまくいっていないのが悩み。
そんなところへ、故郷の教会での事件の報が。
被害者の姉サンナから、助けを求める電話が入る‥

嫌な思いをして故郷を離れたレベッカでしたが、かっての親友を見捨てられず、7年ぶりに北の町キールナへ。
オーロラが珍しくないという北極圏にある寒村。
サンナの弟は、交通事故で一度死んで生き返った経験で天国へ行ったと評判となり、キールナで信仰を盛り上げた存在でした。
レベッカもよく知る人達との、複雑な再会。
やがて、専門知識を生かして真相に迫るが、レベッカの身にも危険が‥?

キールナの警察に勤める警官たち、とくに身重のアンナ=マリア・メラ警部の存在が光ります。次作以降も登場するようですね。
美しい旧友サンナはなかなか厄介な性格のようで‥
嫌な奴てんこ盛り!
レベッカの祖母の家の隣に住む老人シヴィングが優しくて、ほっとします。

厳しい上司のモーンスは意外とレベッカをじつは気に入っているんだけど、それが表せないらしい‥有能な弁護士のくせに口下手?
信頼関係が生まれるのかそれ以上になるのかは、まだ未知数。

レベッカの性格は当初はまじめでちょっと人がいいのかという感じだけど、苦難に耐え抜いていく強さがあるようです。
続いて発表された作品では、レベルの高いスウェーデンミステリ界で最優秀賞を受賞しているので、楽しみです☆

2019年1月13日 (日)

「バッキンガム宮殿のVIP」

スーザン・イーリア・マクニール「バッキンガム宮殿のVIP」創元推理文庫

マギー・ホープのシリーズ第6作。
ロンドンに戻ったマギーが、連続殺人事件の捜査で活躍します。

アメリカ育ちの英国人、マギー・ホープ。
戦時下のロンドンでスパイの訓練を受け、数々の試練をこなしてきました。
特別作戦執行部(SOE)で働いていたところ、採用した女性が不審な死を遂げ、マギーはMI-5の依頼で捜査に加わることに。

スコットランドヤードの警部ダージンは、これまでマギーが付き合ってきたエリートの若者とは違う人種。
若いマギーを見ても最初は世間知らずの女の子ぐらいにしか思わず、他のお偉いさんときたらさらにサイテー(笑)
男性が戦地に駆り出されたために女性の社会進出が進む一方で、まだ格差はあからさまという。
優秀で生きのいいマギーは鼻をあかせるか?(笑)

戦況も暗い時期のうえ、女性の連続殺人はまるで切り裂きジャックを真似たよう。
異父妹がドイツにいるマギーには、そちらも心配。
妹はナチスの圧力をなんとか、かわしながら、生きているのですが‥

事件の中心へ切り込むマギー。
いつもVIPの傍にいる立場なのは、作者は歴史的な危機をありありと体験するかのように描きたいのでしょう。
超人的という設定ではありませんが、かなり優秀でないと大事件に関われませんよね。
不安要素だらけの苦境を生き抜くことになるだろう勇気の物語ですね。

2019年1月 5日 (土)

「古書奇譚」

チャーリー・ラヴェット「古書奇譚」集英社文庫

古書商が手にとった本には、あのシェイクスピア本人の書き込みが‥?
妻をなくした気弱な男が、古書を巡る冒険に巻き込まれます。渋いタイトルの割に、のりは軽くて読みやすいですよ。

ピーター・バイアリーは古書商。
最愛の妻アマンダをなくして9ヶ月、二人で住むはずだった片田舎の家に引きこもりがち。
鑑定を頼まれて、近所の屋敷に出向きます。気難しい住人の所蔵していた本には‥

最近のことだけでなく~
学生時代のアマンダとの出会いから12年に渡る愛のなりゆきも、少しずつ描かれます。
大人しい文系男子の夢?
図書館に通ってくる美女に声をかけてもらい、スムーズに上手く行っちゃう、しかも相手はお金持ちって(笑)
不思議な縁には、ややファンタジックな要素もあります。
こういうのが好きかどうか?で評価は分かれるかも。

シェイクスピアの時代の出来事と、問題の本が手から手へと渡っていく年月もありありと書かれていて、この部分が面白い。
ピーターが手にとったのは、本当に本物なのか?
それにもう一つの謎、アマンダそっくりの顔をした美女の古い肖像画の謎も。
交互に描かれつつ話が絡み合うのは、だいたいは上手く行っているのですが、傑作になるにはもう一歩かなぁ‥おもに構成が。あと少し、という気がするんですが。
とはいえ、十分、楽しめました!☆

2018年12月18日 (火)

「獣使い」

カミラ・レックバリ「獣使い エリカ&パトリック事件簿」集英社文庫

エリカ&パトリック事件簿、第9作。
全世界で2000万部を売り上げているという人気シリーズです。

幼い3人の我が子の世話に忙しいエリカは、作家。
刑務所に収監中の女性に、取材を始めたところです。
少女の行方不明事件が起きていて、夫で刑事のパトリックは捜査に奔走していました。
しかし、ついに殺人事件となってしまいます。

馬術を習っている少女たちの一人が被害者だったため、周辺に捜査が及びますが。
異なる環境の登場人物たちを鮮やかに描き分ける手腕は、いつもながら、レベルが高い。
いくつもの家庭で起きる虐待の描写があり、そんなに多いのかと思わせます。そして、それがどう事件につながってくるのか‥

スリリングと言えばそうだけれど、むごい事件で、今回は解決とまで言えない状況で引っ張られるので、いやこんなひどい話でいいのかと思うほど。
骨太な構成とリアルな共感も呼ぶ緻密な描写で、特異な人物を描いて読み応えはありますが~怖すぎ。

前作で大変な目にあったエリカの妹アンナにも、ようやく復活の兆し? いや、既に3度目ぐらいの大危機ですよ。
そろそろ幸せにしてあげてほしい(笑)

2018年12月 9日 (日)

「警視の哀歌」

デボラ・クロンビー「警視の哀歌」講談社文庫

警視とタイトルにあるシリーズというか、ジェマとキンケイドのシリーズというか。
長い間、高水準を保っている英国の警察もの。
最近のでは「警視の因縁」「警視の挑戦」に続く作品。

かっては同僚で良き相棒だったジェマ・ジェイムズとダンカン・キンケイド。今は結婚して違う署にいます。 幼い娘のための育児休暇を終えたジェマは新しい赴任先で復帰、今や警部となって部署を率いる身。
やや戸惑いつつも、充実した時間を過ごします。

初老の弁護士がホテルで発見された事件を担当。
容疑はまず、直前に喧嘩した若い男にかかります。
才能あるギタリストの彼アンディは、デビュー目前。
恵まれない育ちで、ギターだけが生きる支えでした。富裕層と庶民層が背中合わせに住む街での出来事に、この作家ならではの柔らかくきめ細かな視線が感じられます。
そんなアンディに惹かれるジェマの部下メロディ。
優秀だが人に気を許さないメロディの、思わぬ恋模様が描かれるのが新鮮。

ジェマにかわって育児休暇を取ったキンケイドは、慣れない育児に奮闘。しだいに要領を覚えていきますが‥
休職中になぜか署内の空気が変わっていくのです。
実は、前作の事件で上層部に波乱を巻き起こしたともいえるキンケイド。
肝心の部分は表沙汰になっていないのですが‥

次巻は、試練のとき?
真面目で優秀で優しくハンサム、だけど良い人過ぎて存在感がないと言われ続けてきたキンケイドです。
本領発揮なるか?!

2018年11月28日 (水)

「書店猫ハムレットのうたた寝」

アリ・ブランドン「書店猫ハムレットのうたた寝」創元推理文庫

ニューヨークの本屋が舞台。
猫と書店員が事件を解決?するシリーズ。

大きな黒猫のハムレットは賢く、書店のマスコットというより主(ぬし)。今日も気ままにうたた寝したり、ゆうゆうと街を行き来しています。
猫ごと遺産として受け継いだ書店を経営するダーラは、35歳。(初めて年齢が明記されてました。登場したときから30代後半かと思ってたけど、やや若い)
2階にカフェコーナーを作ったのも成功。
若い店員のロバートが美味しいコーヒーをいれ、なかなかハンサムなので女の子たちもよく来るように。

独立記念日の催しとして、商店街でお祭りを開催することになって大騒動。
ダーラは幹事サイドとなって、企画に力を入れていました。
コーヒーショップの気難しいオーナーが参加費を払ってくれていないので集金に行ったり。
いろいろな顔ぶれがにぎやかに登場するうち、事件が起きます。

一方、恋愛模様にも波乱が。
年下のハンサムな刑事リースとのデートは盛り上がらず、なんとなくそのままになっていたそう。
ところが‥?
こんなヒドイこと言っちゃったらリースは失地回復しようもないだろう?
と思ったけど~
次巻で終わるらしいので、ということは‥‥大逆転? 想像しちゃいますね(笑)

2018年11月20日 (火)

「失踪者 下」

シャルロッテ・リンク「失踪者 下」創元推理文庫

ドイツのベストセラー、後半。
5年前に行方不明になったエレインはどうなったのか?

ロザンナは5年前に結婚して、ジブラルタルで暮らしていました。
義理の息子を育て、幸せもあったが、結婚後も仕事はするはずだったのに何のかのと家庭に縛りつけたがる夫に阻まれ、ついにイギリスでの仕事の依頼を引き受けることを決めたのです。
自分の結婚式に招待したのにその途上で失踪した幼馴染のエレインの追跡取材だから、他人事ではない。もしかしたらどこかで生きているのか、どんな事情が隠されているのか、それとも‥?

エレインは障害のある兄の世話に縛られていたため、それで家出したという説もあった。
当初疑われた弁護士のマークに会ったロザンナは、マークに惹かれ始めるが‥?
一方、エレインのパスポートが発見される。

身元を隠して生きている女性の描写が書き込まれ、それがエレインなのかそうでないのかという謎もあり、引き込まれました。
普通の人が多いところにリアリティがあり、その人なりの必死さと愚かさに複雑な気持ちに。
犯罪者も出てくるので、これは‥普通の人にはなかなか歯がたたないところ。

ロザンナは基本は正直で前向きな人で、だからこそ悩みもします。10代の義理の息子にちゃんと信頼されているけど、次々に起こる出来事に目をくらまされるあたり。
エレインもなんか感じのいい人でもなかったり。
読後感にいまいちなところがあったので、すぐ感想を書けなかったのですが~
このリーダビリティとインパクト、読まずにいられないだけでなく、1年以上たってもずっと話を覚えているのは‥
人の心に突きつけてくる何かがあったのだと。
力のこもった作品だったと思いますね。

2018年11月18日 (日)

「失踪者 上」

シャルロッテ・リンク「失踪者 上」創元推理文庫

ドイツの国民的人気作家のミステリ。
舞台はなぜかイギリスが多いようで、今回もそう。

元ジャーナリストのロザンナが復帰後初仕事として、行方不明事件を取材することになる。
それは5年前、ロザンナ自身の結婚式に招いた幼馴染のエレインが失踪したというもの。
霧でジブラルタルへ向かう飛行機が欠航となり、やむなくエレインはとある弁護士の家で休んだのだが、以来行方がわからない‥
疑われた弁護士は家庭も仕事も評判も失ったが、何の証拠もあったわけではないのだ。

エレインの行動を追うロザンナ。
弁護士を疑うエレインの兄。
一方、妹を殺されたアンジェラ一家の悲しみと、誰かから逃げているパメラの章が交互に描かれ、どう関連してくるのか?わからない!

読んで時間がたってしまったので、紹介を書くのもどうしようかと思っていましたが、いつまでも内容を覚えているので、これはそれだけインパクトがあった、ということだろうと。
ぐいぐい読ませますよ。

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