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おすすめ本

2019年4月28日 (日)

「湖畔荘」

ケイト・モートン「湖畔荘」東京創元社

ケイト・モートンの魅力的な作品、4作目。
女刑事が見つけた古いお屋敷には‥?
70年前の事件が紐解かれます。

ロンドン警視庁の刑事セイディは、担当事件でルールを逸脱して謹慎となり、コーンウォールの祖父の元を訪れます。
森の奥を散歩していて、湖の畔に、忘れられて眠っているような美しい家を見つけました。
かってエダヴェイン一家が暮らし、末っ子の乳児が行方不明になって、未解決のままだという。

エダヴェイン家の主アンソニーは学者肌の男性。
1910年代、妻のエリナの娘時代にまで話はさかのぼり、生き生きした少女が現れます。
時代を行き来するように描くのは、モートンの真骨頂、ややこしい展開もうまく繋げています。

1930年代、長じてすっかりレディになったエリナが取り仕切る館には、デボラ、アリス、クレミーという3人の娘と、末っ子の幼い男の子セオがいました。
エリナの口うるさい母親や、亡き父の友人である作家、若い庭師や乳母など。さらに、年に一度だけ大きなパーティーを催すその日には、大勢のお客が集まってきます。
そこで、事件が‥
次女のアリスは多感な文学少女。すべてを見通していたつもりでしたが、高齢になってから、思わぬことを知らされ‥?

事態は動き出します。
上巻の手がかりから予想されることは、どう覆され、どう繋がるのか。
シーンごとの丁寧な描写が美しく、時には夢のよう。
うっとり堪能しつつ、真相はさっぱりわからないまま、下巻に突入ですよ。

2019年4月 7日 (日)

「貧乏お嬢さま、ハリウッドへ」

リース・ボウエン「貧乏お嬢さま、ハリウッドへ」(コージーブックス)原書房

人気の「貧乏お嬢さまシリーズ」8作目。
安定した面白さです。

公爵令嬢なのに、実はいつもお金に困っているジョージー。
早くに離婚して出ていった母親は、有名な美人女優。
この母が今の恋人と結婚することにしたので、何度めかの夫と正式に離婚するためにアメリカへ。
豪華客船の旅に、ジョージーも同行することになります。

ところが映画監督に熱烈に請われて、母は行く先をまずハリウッドへと変更。
英国が舞台の歴史もの映画を撮るための顧問として、ジョージーや友人も役割ができます。
お約束で現れた恋人ダーシーも、貴族として堂々と参加。見た目がいいので俳優としても誘われます。
時代考証がいい加減な舞台装置に英国人は呆れるのですが。

演技力と存在感で、ジョージーの母は、若い主演女優を圧倒するという楽しさ。
おまけにチャップリンに口説かれる?

もはやジョージーの頭が切れるのは人がすぐ気づくほどに。
メイドの出たり入ったりは意外でしたが、まあしょうがない?(笑)
楽しく読めるシリーズです☆

2019年3月24日 (日)

「わたしの本当の子どもたち」

ジョー・ウォルトン「わたしの本当の子どもたち」創元推理文庫

一つの選択で、人生が全く変わったとしたら‥?
パラレルワールドのような2つの人生を振り返る女性。

2015年、パトリシアは老人ホームにいて、混乱していました。
子どもが3人だったのか4人だったのか、自分の人生のいろいろなことが二通り思い浮かぶのです。
医者には認知症と思われるだけですが。

1926年生まれのパトリシア。
大学のときにマークと付き合い始めたことで、人生の岐路ができます。パトリシアの愛称はいくつもあり、こちらの世界ではトリッシュのほうが素敵だとそう呼ばれるようになっていました。
熱烈なラブレターを信じて結婚したトリッシュですが、牧師の息子で堅物のマークは、子どもを作るのは義務と考える古めかしい?男。
流産を含めた妊娠6回、苦労するトリッシュでしたが~4人の子どもはそれぞれ個性的に育ちます。

結婚を断った方は、パットと呼ばれています。
イタリア旅行に行ってガイド本を書いたのをきっかけに評価され、順調に仕事をしていきます。
植物学者の女性ビイと愛し合い、カメラマンの友人マイケルに精子提供してもらって子どもをもうけます。

世界の出来事は、どちらも史実とは少し違っています。
そして、どちらも、良いことばかりではない。
そのあたり、決して単純ではないけれど、密かに文明批評の針が仕込まれているような。
一つの選択で道はわかれるが、どちらが正しい、というわけでもない? そこに深みが感じられます。
きめ細かな描写でどちらもリアリティがあり、2倍楽しめるというか、これほど複雑な話でもパトリシアの気持ちはわかりやすく、切ないものがあります。

作者は「ドラゴンがいっぱい!」、「ファージング」三部作、「図書館の魔法」で知られるSF作家。
この作品も評価が高いですね。
しみじみとした味わいと余韻に、感動しました。

2019年3月17日 (日)

「フォールアウト」

サラ・パレツキー「フォールアウト」ハヤカワ・ミステリ文庫

シカゴの女探偵ヴィクことV.I.ウォーショースキーのシリーズ。
カンザスでも旋風を巻き起こします。

前作で登場した女の子バーニーに頼まれ、窃盗の疑いをかけられた青年を探すことになったヴィク。
行方をくらませては疑いが深まってしまうのだが、老女優とカンザス州の町へ向かったらしいのだ。

老女優の故郷は、かって核ミサイル配備への抗議行動が行われた町。
初めてのカンザスでの捜査は勝手が違うが、愛犬ペピーを連れていったので、行く先々で可愛がられ、場が和んだり。
女優の暮らした地域を調べようとするが、いきなり死体を発見したのから始まり、次々に過去の出来事の不審な点を探り当てていく。
聞き込みに行った住人に「あなたが来てから新聞が面白い」と言われる始末。
さらに、世間知らずの元気なバーニーが追ってきてしまい‥?

作者は10年ほどカンザスで暮らしたことがあり、あまり良い経験ではなかったらしい。
それも作品に活かされている?
長い年月、町の人々をおおっていた重層的な事件の苦さ、切なさ。

60を過ぎてもすらっと若々しくパワフルで前向きなヴィク。
作品中の年月も現実とともに流れ、そんなヴィクを書き続ける作者のタフさとサービス精神に脱帽です☆

2019年3月 7日 (木)

「想いを秘めたプリンセス」

クレア・デラクロワ「想いを秘めたプリンセス」扶桑社ロマンス

ヒストリカル・ロマンスです。
12世紀という珍しい時代なので読んでみました。

アイルランドの小国の王コナーは、ヘンリーⅡ世の送った軍に征服される。
ヘンリーは功を立てた騎士の息子3人のうちの一人と、コナーの娘を結婚させるように要求してきたのです。
コナーの娘ブリアンナはとっさの機転で、ある条件を出します。
息子二人はそのために出かけますが、結婚に関心のない長男リュックだけが領地に残り‥?

小さいながら領主の娘として誇り高く育ったブリアンナ。
世間知らずだけど、勇気はあり、父親のために精いっぱいの知恵を絞ります。
ちょっと天然?なぐらいだけど、勝ち気で人情にもあつい。
一方のリュックは、父親には顧みられず、田舎で暮らすのが気に入っていた若者。
騎士にされたのがありがた迷惑という。
そんな二人のちぐはぐな出会いが、お城での日常と思わぬ危機の合間に、しだいに結びついていく‥
楽しく読めました。

2019年2月24日 (日)

「ワニの町へ来たスパイ」

ジャナ・デリオン「ワニの町へ来たスパイ」創元推理文庫

凄腕女スパイが田舎町に潜伏し‥?
人気が高いユーモア・ミステリのシリーズ1作め。

フォーチュンは、CIA工作員。
取り入るはずの男をやっつけてしまったため、組織に懸賞金をかけられる羽目に。
ボスの姪に扮して、身を隠すことになります。
南部ルイジアナの田舎町で、大叔母の遺産を相続するため整理に来たという触れ込みで。
姪というのがミスコン女王だというので、女らしい美女に変身!

シンフルという町に着いた早々、ハンサムな保安官には怪しい人物と目をつけられるし、大叔母の飼っていた犬が人骨をくわえてくる。
それは行方不明だった男性の骨‥?!
親切なご近所のおばあさんガーティとアイダ-ベルも活躍、手伝いながら意外と町に馴染んでいくフォーチュン。
さて‥?

生きのいいヒロイン、ヒロインより凄いかもしれないおばあさんズ、ドタバタ調で笑える軽いノリが嬉しい。
楽しみなシリーズが出来ました☆

2019年2月10日 (日)

「特捜部Q─自撮りする女たち─」

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q─自撮りする女たち─」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「特捜部Q」もシリーズ7作目。
デンマークの大人気ミステリです。
地下の特捜部に追いやられているカール・マーク警部。
部下はほぼ警官ですらないメンバーで回しているが、事件の解決率はかなりのもの。
今回は秘書のローセに焦点が当てられています。

福祉国家として知られる北欧のデンマーク。
福祉事務所には給付を望む市民が詰めかけ、中には働く意志がなくなんとか言い訳してお金だけは貰おうという根性の人間も。
相手をする係員もストレスを抱えているのでした。
そんな状況で出会った気まぐれな若い娘たちが意気投合、思わぬことから犯罪に‥?
背景には、歴史を背負って破綻した家族たちの重いものも含まれるのですが。
おしゃれだけはする若いコたちの身勝手な言い草が情けないやら哀しいやら。
さらに、真面目な官吏のはずの担当者の切れっぷりのほうがすごくて、笑えてくるほど、ぶっ飛ばします。

ローセは有能だけど変わり者。というのはわかっていましたが、これほど壊れてしまうとは‥
鬼気迫る描写の後に、過去のつらい状況が明らかに。
現在の事件とも運悪く絡み合い‥
救いようがないと思われたいきさつがあっても、時とともにじわりと事態は動きます。
ローセを救おうと懸命に突き進むカール、アサド、ゴードンたち。
ラストに光が差し、泣かされます。

2019年1月31日 (木)

「道化と王」

ローズ・トレメイン「道化と王 ヨーロッパ歴史ノベル・コレクション」柏書房

17世紀イングランド、王政復古の時代。
宮廷に上がった医師の波乱の人生。

1660年代、英国ではクロムウェルの清教徒革命が終わり、処刑された前王の息子が復帰して、チャールズ2世となります。
清貧に飽きた人々は優雅で豪奢な生活を求め、宮廷は爛熟していきます。
ロバート・メリヴェルは、王の犬を治療したところから宮廷のお抱えとなり、王に気に入られて、道化のようになります。
かっての志はどこへやら、生真面目な学友ピアスには嘆かれますが。
王様に魅了されているメリヴェルは、王に愛されていると思っていました。

王の愛人シリアと結婚するよう命じられ、立派な屋敷を与えられることに。
それは王の数多い愛人の嫉妬の目をくらますためで、メリヴェルは名ばかりの妻になったシリアには疎まれ、宮廷からも引き離されてしまう結果に。
しかも、シリアを愛してしまったメリヴェルは王に追放されてしまいます。

一転して貧しい暮らしに‥
友人ピアスの勤める精神病院に転がり込み、治療を手伝うことになります。
そこで、純真な患者の女性に無垢な真心を向けられ、あらたな愛を知ることになります。
おりしもペストが流行し、ロンドンでは大火という、激動の時代。
愛嬌だけのような駄目男メリヴェルも実は~衝動的なだけあって行動的ではあるのです。
医術の覚えはあり、ついに‥?

歴史ミステリでもない歴史物を久しぶりに読んでみようと。
途中で、映画化された作品をずっと前に映画館で見たことに気づきました。
「恋の闇 愛の光」という‥
豪華な衣装は楽しめたし、小説でもそういった描写は詳しいです。
主演はロバート・ダウニーJrだったので、醜男という原作には合ってないけど(笑)
珍しい時代への興味深さと、重厚な描写で読み応えがありました。
お仕着せのお屋敷の召使いが後々までメリヴェルを待っていてくれたのが泣かせます。

2019年1月24日 (木)

「オーロラの向こう側」

オーサ・ラーソン「オーロラの向こう側」ハヤカワ・ミステリ文庫

スウェーデンのミステリ、女性作家による女性弁護士ものです。
2003年にこの作品でデビューし、スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を受賞。

レベッカ・マーティンソンは首都で働く若い弁護士。
大きな事務所に入れたはいいがまだ弁護士になりたてでこき使われ、上司とうまくいっていないのが悩み。
そんなところへ、故郷の教会での事件の報が。
被害者の姉サンナから、助けを求める電話が入る‥

嫌な思いをして故郷を離れたレベッカでしたが、かっての親友を見捨てられず、7年ぶりに北の町キールナへ。
オーロラが珍しくないという北極圏にある寒村。
サンナの弟は、交通事故で一度死んで生き返った経験で天国へ行ったと評判となり、キールナで信仰を盛り上げた存在でした。
レベッカもよく知る人達との、複雑な再会。
やがて、専門知識を生かして真相に迫るが、レベッカの身にも危険が‥?

キールナの警察に勤める警官たち、とくに身重のアンナ=マリア・メラ警部の存在が光ります。次作以降も登場するようですね。
美しい旧友サンナはなかなか厄介な性格のようで‥
嫌な奴てんこ盛り!
レベッカの祖母の家の隣に住む老人シヴィングが優しくて、ほっとします。

厳しい上司のモーンスは意外とレベッカをじつは気に入っているんだけど、それが表せないらしい‥有能な弁護士のくせに口下手?
信頼関係が生まれるのかそれ以上になるのかは、まだ未知数。

レベッカの性格は当初はまじめでちょっと人がいいのかという感じだけど、苦難に耐え抜いていく強さがあるようです。
続いて発表された作品では、レベルの高いスウェーデンミステリ界で最優秀賞を受賞しているので、楽しみです☆

2019年1月13日 (日)

「バッキンガム宮殿のVIP」

スーザン・イーリア・マクニール「バッキンガム宮殿のVIP」創元推理文庫

マギー・ホープのシリーズ第6作。
ロンドンに戻ったマギーが、連続殺人事件の捜査で活躍します。

アメリカ育ちの英国人、マギー・ホープ。
戦時下のロンドンでスパイの訓練を受け、数々の試練をこなしてきました。
特別作戦執行部(SOE)で働いていたところ、採用した女性が不審な死を遂げ、マギーはMI-5の依頼で捜査に加わることに。

スコットランドヤードの警部ダージンは、これまでマギーが付き合ってきたエリートの若者とは違う人種。
若いマギーを見ても最初は世間知らずの女の子ぐらいにしか思わず、他のお偉いさんときたらさらにサイテー(笑)
男性が戦地に駆り出されたために女性の社会進出が進む一方で、まだ格差はあからさまという。
優秀で生きのいいマギーは鼻をあかせるか?(笑)

戦況も暗い時期のうえ、女性の連続殺人はまるで切り裂きジャックを真似たよう。
異父妹がドイツにいるマギーには、そちらも心配。
妹はナチスの圧力をなんとか、かわしながら、生きているのですが‥

事件の中心へ切り込むマギー。
いつもVIPの傍にいる立場なのは、作者は歴史的な危機をありありと体験するかのように描きたいのでしょう。
超人的という設定ではありませんが、かなり優秀でないと大事件に関われませんよね。
不安要素だらけの苦境を生き抜くことになるだろう勇気の物語ですね。

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