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2018年11月13日 (火)

「群青のタンデム」

長岡弘樹「群青のタンデム」角川春樹事務所

「教場」に続く警察小説。
あの時もちょっと思ったけど‥

今回は、二人の警察官の人生を追いつつ、連作短編でひとつひとつ事件が語られます。
警察学校で同点の主席だった戸柏耕史と陶山史香。
卒業後も成績を競い合い、気にかけ合うのです。
職場は違い、相棒というわけでもないのに。
二人は順調に出世していくのですが。
事件の関係者だった中学生の薫が史香を慕って警察学校に入り、警官となり、30年の歳月が流れます。

意外な展開で、これも愛情の形?という‥
長い間の気持ちを思うとズシンと来るものがあります。
「教場」はすごく面白かったんです!が、しまいに怖さが勝ちすぎて、警察学校は悪の巣窟か?!と思えてきたのと似たような~
えぇと、こんなヒドイ話でいいのか‥?っていう。
酷いと言っていいのかは、読み方もあるかも知れませんが、書き方もあると思うのです。
長い年月の挙げ句が‥
これで深く感動するというより‥後味悪くなってません?

ラストの印象を除けば、全体は、言葉を選び抜いて、すっきりと仕上がっています。
「傍聞き」の頃から変わらないスタイルですね。

2018年6月16日 (土)

「キラーストレス 心と体をどう守るか」

NHKスペシャル取材班「キラーストレス 心と体をどう守るか」NHK出版

NHKスペシャルのために取材した内容をまとめたもの。
最新の研究成果を踏まえて、ストレスの正体に迫り、対処法を示しています。

現代社会では情報が多すぎて、ストレスが増えているのは、誰しも心当たりのあるところ。
ストレスとは、危機に対応するために心身を緊張させたことが始まり。
原始時代には、襲われたときに逃げるか、闘うという必要があったから。
言われてみれば納得です。

今は問題が起きている真っ最中でなくとも、過去にあった辛いことを思い出し続けているか、未来に悪いことが起きると予想していると、ずっとストレスがかかってしまう。
ストレスは、気分の問題では済まない。
脳や体にも、はっきり影響を与えているのだそうです。

ストレスを軽くする方法を100個書き出しておく、というのがコーピング(対処法)というやり方。
うんと小さなことも含むわけですね~。
けっこう笑えて、参考になりますね。
笑いも、良いストレス対策になります!

運動の効果、栄養のとり方、なども具体的に。
もう一つの有効な取り組みは、マインドフルネス。
いわゆる瞑想を、わかりやすくしたもの。
背筋を伸ばして静かに座って自然に息を吐き、あるがままに呼吸を感じて、雑念を遠ざける。こういったことで、傷ついた脳が回復していくというのが驚き。

ひと通り知っておいて、損はないでしょう。
興味深く読みました。

2017年10月 7日 (土)

「きりこについて」

西加奈子「きりこについて」角川文庫

自分がブスだと気づかずに育った女の子は?
ユニークで面白い。

きりこはぶすである、と断言されて始まる話。
見た目もけっこう良い両親に愛情たっぷりに、「かわいい、かわいい、世界一かわいい」と言われて育ったため、自信満々。
まわりの子供もその自信に引きずられ、何となく納得?きりこ中心で遊んでいたという。
「子供というのは11歳ぐらいまでキョトンとしている」というのが面白い。

ちょっと素敵な男の子こうた君に告白して見事に振られ、初めて、「ぶす」と言われたきりこ。
どういうのがブスなのかもよくわからなかったのだが‥
ひきこもりになってしまう。

きりこが幼い時に拾った賢い黒猫ラムセス2世は、きりこの味方。
しだいに人の言葉が話せるようにまでなるのでした。
もともと猫は長く生きていて、知能指数が人間より遥かに高いという。
猫達にとっては、きりこの外見もうっとりするほど魅力的だったりと、不思議で楽しい展開。

クラスメートがそれぞれに成長していく中、きりこも外見の意味を少しずつ理解していく、その過程もまた、印象に残りました。
派手な中学生だったちせちゃんがさらに経験豊富になっていったある日、事件が。
それと察したきりこが駆け付けます。
もとからパワフルなきりこは、ひきこもりと猫との暮らしで、勘が鋭くなっていた?
ちせちゃんが男性に不本意な目に遭わされたことを訴えに行ったところ、相談所でも女性から思わぬ偏見を向けられてしまう。
‥う~ん、あるかもしれないねえ。

若い女の子と猫達のたくましいネットワークに、元気が出ます。
鋭い指摘もたびたびで、ニヤッとさせられたり。
‥偏見は、自分にもまったくないわけではないな、とちょっとドキッとしたりもしますが。
生きが良くて、ぐいぐい読まされました。
面白かった!

2016年5月28日 (土)

「しずく」

西加奈子「しずく」光文社文庫

女二人がテーマの短編集。
西加奈子さん初読みにもオススメ。

「ランドセル」
かってピンクのランドセルで一緒に小学校に通った幼馴染。
頼りにしていた友達でした。
大人になって偶然再会し、ロスへ旅行することになりますが‥?

「灰皿」
夫を亡くし、30年暮らした一軒家を貸すことにしたら、借り手は意外にも若い女性。
小説家だった‥

「木蓮」
34歳の女性が恋人の幼い娘を一日預かることになります。
7歳の子に振り回され、だんだん‥?

「影」
会社の同僚の地味な男性と、ふと付き合ったことがばれて問題になった女性。
旅に出た先で若い娘に出会い‥?

「しずく」
猫のフクさんとサチさん。
もともと彼と彼女に別々に飼われていたのですが、同居することになりました。
楽しい暮らしでしたが、忙しくなった二人はしだいに‥
猫の視点からの描き方がいいですね。
最初は上手く行かず、同じようなことを言い続けて喧嘩したり、それを忘れたり、何となく一緒にいることに慣れたり‥

「シャワーキャップ」
恋人と結婚を考えている若い女性。
頼りない母親に苛立ちますが、それでも‥?

道を間違えていくような不安と、軽い苦味があるけれど、どこかでほっとするような空気感もあり、辛いことがあってもでも‥何とかなるよ、というまなざしを感じさせます。
「しずく」が切なくて、印象に残りました。

短編集なので軽めで読みやすく、いろいろな味わいの作品があるので、初めて読むのにもいいと思いますが~
もしこれでは、アッサリし過ぎ、と思う方だったら、長編を読んだほうがイイかもしれません。
決して、あっさりした作風の作家さんではないです(笑)

2016年4月 2日 (土)

「かたづの!」

中島京子「かたづの!」集英社

江戸時代のはじめに、唯一実在した女大名を描いた作品。
彼女に出会った羚羊を語り手に、ファンタジックな展開を見せます。

慶長五年(1600年)、角を一本しか持たない羚羊が、目力の強い少女に命を救われて、一目惚れ。
八戸南部氏20代当主である直政の妻・袮々でした。
羚羊は城に出入りし、袮々を見守ります。
寿命がつきた後も一本の角に意識は残り、いざというときには思わぬ活躍をする南部の秘宝・片角(かたづの)となるのでした。

幸せな年月が続いたある日。
城主であるまだ若い夫と幼い嫡男が、遠方で命を落とします。
叔父である本家の利直の謀略と思われますが、袮々は女ながらに領土を守ることを決意。
天下分け目の時節、跡継ぎに任せられるときまでと、駆け引きを重ねながら。

家臣との結婚を迫られたり、娘の婚約をほごにされたり、頼りになる人物を召し上げられたり、遠野に配置換えとなったり。
戦で大事なこととは、やらないのが一番。
どちらに参戦しているか、幟を立てて存在を示すだけでいい場合もあると。
父祖の教えを守りつつ、あの手この手で家臣と領民を守ろうと懸命に働く袮々。
河童が出てきて、遠野の領地とつながったり。
「かたづの」として秘宝となっている羚羊の出会う不思議なものたちとは‥

袮々の苦労が実感ありすぎて、その運命が哀しい部分と、妖怪?たち(複数!)の存在感の強さが、摩訶不思議な混ざり具合。
まさかこんなところまで、絡んでくるとは。
河童に惚れられていたという話を、険悪だった母娘が互いにして大笑いするシーンが印象に残りました。

第28回 柴田錬三郎賞
第4回 歴史時代作家クラブ賞作品賞
第3回 河合隼雄物語賞
確かに、インパクトの強い、なかなか出会えない物語です☆

2016年1月21日 (木)

「サラバ! 下」

西加奈子「サラバ! 下」

直木賞受賞作。
怒涛の後半。
前半ではわからなかったことが明らかになるので、上巻だけでやめちゃダメですよ!(笑)

両親が離婚した圷家。
姉の貴子は強烈な性格で、学校では浮いてしまい、それを見て育った弟の歩は、目立ちすぎず人に好かれるように、そつなく生きていきます。
お似合いに見えた両親が離婚し、歩には理由が知らされないまま。
実は結婚のいきさつから問題があり、父はそれを気に病んでいたのでした。
そして、父の選んだ道は‥

歩は両親のいいとこどりの容姿に恵まれ、大学では奔放な生活に。
美人の恋人も出来ますが、姉の貴子が巻貝アーティストとして注目を浴びたときに、とんでもないことに?

歩は、学生時代から始めた仕事を続けますが‥
頭が薄くなってきて、容姿にも自信を失います。
再会した姉は、アメリカで自分らしく生きていて、すっかり落ち着いた様子。
まともに生きてきたつもりの歩のほうは、どこか本気になれずにカッコつけたまま、ずるずると落ち目になってきている有様。
あいたた‥(苦笑)

迷惑をかけてでも、全身で体当たりして道を探っていた姉のほうが、確実なものを掴んだということでしょうか。
弟はこの小説を書き切ったということなので、ある意味、いじいじ悩む性格が活用されたってことなのか??

自伝的要素がある作品なので、そういう結末にしたのでしょうが、これは嘘かもしれない、と最後に言われても読者としては?
最初から、フィクションには違いないんですが~‥
平凡で深く考えない弟の、ありがちな年の取り方。いやこれは、気をつけたほうがいいかも?
そして、姉がらみの特異なシーンも精緻に描かれ、熱のこもった力作には違いありません!

2016年1月19日 (火)

「サラバ! 上」

西加奈子「サラバ! 上」小学館

平成26年(2014年)下半期、第152回直木賞受賞作。
エネルギッシュで、溢れんばかりの勢いがあります。
海外生活については、自伝的要素があるらしいですね。

語り手は、圷歩(あくつ あゆむ)という少年。
(両親の離婚後は今橋)
父の海外赴任にともなって、イランで生まれました。
イランに革命が起こったので急に帰国することになり、大阪へ。
穏やかな父、身奇麗で女らしい母。にぎやかなご近所や親戚達。
だが何よりも、姉・貴子が強烈‥
わがままで、扱いにくく、いつでもどこでも大声で泣き喚く。
人の注目を集めたがり、皆と同じでは気がすまないらしい。
そんな我が子にくたびれ果てた妻と娘の間で振り回され、やはり疲れていったのだろう父。
歩は、どちらにも関わらずにいようと決め、外でも目立たないように生きていくことにします。

この姉はADHDとしか思えませんが。だからといって、どうなるわけでもなく、それぞれ個性があるわけですからね。
これほど迷惑かけて平気な子はちょっと好きになれないけど、まあ小さいうちだしねぇ。成長すると共に、意外な面も見せていきます。
この姉が、小顔で美人な母に似ず、父に似た長い顔でごつごつと痩せていて、ある時期「ご神木」とあだ名されてしまうのは気の毒。
そりゃ、名づけるほうが性格悪い。
ある男の子とラブラブで有名になった時期もあるのですが‥

歩が小学校1年、姉が5年のときに、父の赴任でエジプトのカイロへ。
二人は、日本人学校に通うようになり、友達が出来ます。
海外赴任では経済的に余裕が出来るので、母は着飾って出かけるようになりました。
歩には輝いて見えた母でしたが、実は辛いことも起きていたのです。
歩は、ヤコブというエジプト人の少年に出会い、ほかの誰とも違う大人びた雰囲気にひかれ、親しくなります。
言葉も通じないのに表情や身振りで心を通わせていく。このくだりは美しいです。
ヤコブが気に入った日本語の挨拶が「サラバ!」でした。

歩にも友達が出来、ガールフレンドも出来るし、はっきり物を言うこともあって、自分でわざわざ宣言してるほどには自分を抑えてるだけの生活でもないですよね。
いろいろな要素が次々に出てきて、飽きずにどんどん読み進められます。

ただ、感情移入できるかというと、どの登場人物にもちょっと、しにくい。
そのへんが賛否両論、低い評価も出る理由かな?
もう少しだけ書き方を変えればたぶんもっと感情移入は出来るようになるんだけど、作者の狙いはどこか違う点にあるのかも。
どういう理由でこういう構成になっているのか‥?
下巻を読んでのお楽しみですね☆

2015年8月25日 (火)

「お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂」

似鳥航一「お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂」メディアワークス文庫

ビブリアやタレーランみたいな系統のお話で、和菓子がテーマなら、より美味しそう?
期待通りの読み心地でした。

浅草に明治時代から店を構えて4代続く老舗の和菓子屋、栗丸堂。
腕のよかった両親が思いがけなく事故死したため、一人息子の栗田仁が大学を休学して店を継いでいます。
子供の頃は店を手伝っていたが、跡を継ぐのに反発を覚え、一時は不良たちとやりあった時期もある仁は、目つきが鋭く、今もこのあたりの連中にひそかに一目置かれていました。

製菓学校でも成績がよすぎてやめたほど?という、お菓子作りは決して下手ではない仁。
だが売り上げはまだ両親のいた頃に程遠い。
心配した馴染みの喫茶店のマスターに、とある女性を紹介されます。
「和菓子のお嬢様」こと、葵は、仁より少しだけ年上の清楚で品のいいお嬢さん。おっとりしていて、やや天然だが、和菓子については猛烈に詳しいのです。
かくて、和菓子にまつわる小さな謎を二人で解いていくことに。
20年前に食べた豆大福をもう一度食べたいとやって来た客に、違うといわれて、思い出の味を再現しようと奮闘したり。
大学の学園祭で、仁を意識する悪友のサークルで、クイズに挑戦したり。
謎解きは、人情話系なので、ほっこりします。
和菓子については若い人ほど知らないだろうから、こんな形で興味を持ってもらうのもいいかな、なんて。

和菓子屋を継いだ主人公が若すぎて、それはないだろという気分にもなりますけど‥
これはメイン読者対象が若いからなのでしょう。
絶対ありえないというほどじゃないから、いいですけど。
ヒロインは問題抱えていそうだけど、あんまり重過ぎると、この世界のタッチにつりあわないのでは?などと余計な心配をしたり(苦笑)
続きもすぐ読みましたよ♪

2015年7月11日 (土)

「目は温めればよくなる」

中川和宏「目は温めればよくなる」アスコム

目を温めれば、視力は良くなる。
えっ、ほんとに?!
というわけで、読んでみました。

目の周りの筋肉が疲れで強張り、血流が悪くなるのが近視の原因だとは。
しかも、近視の人は他の眼病にもなりやすく、緑内障になる確率も大幅アップ、後に失明する可能性にも繋がるという。

目を温めるには、蒸しタオルで温めたりするよりも、目の体操をして筋肉を動かせばいいそうです。
なんと、この体操を続けただけで、視力を回復した実例が多くあるという。
まぁそれは‥全員が回復するわけにはなかなかいかないだろうし。
自分の場合どうなのかは、まだわかりませんが。

目に必要な栄養の話や、頭の体操のようなクイズなども出てきたり。
内容は多方面にわたり、気楽に読めますけど~どこにどれほどの根拠があるのか、やや散漫な印象も。

読んでから目の体操を心がけていると、目の充血や疲労感は少し減ってきましたよ。
目の疲れを軽くするのに、目の周りの筋肉をほぐす、のは良いことだと思えます。
読んだ甲斐はありました!

2015年1月15日 (木)

「冬虫夏草」

梨木香歩「冬虫夏草」新潮社

「家守綺譚」の続編。
大事に取っておいた本です。
美しい文章、旅するような心地。本当に大切にしたくなります。

綿貫征四郎は亡き友・高城の実家を託され、駆け出しの文筆業にはげみつつ、愛犬のゴローと暮らしていた。
河童が時折、池にはまっていたり。
不思議なことも自然に受け入れる綿貫。
亡き友もまた姿を見せることがある‥

人望のある犬ゴローが、半年も戻ってこない。
鈴鹿山中で姿を見かけたと噂を聞き、綿貫はついに探しに出る決意をします。
花の名前がついた短い章が続き、掌編小説のような趣。
今よりはだいぶ昔ふうの、明治の文豪が書いたかのような文章で、でもそれよりはわかりやすい。日本語の美しさにうたれます。
一つずつ、ぱらっと読み返してもよさそうです。

山中に住む人々の素朴さ、温かさ。
重なるように茂る草花の何と風情のあること。
そして、しっくりと溶け込み、存在を疑わせないあやかし達。
天狗を空に見上げ、親を待つ河童の少年に話しかけ、イワナの夫婦がやっているという宿を探し当てる綿貫。
このイワナの夫婦の奇妙さは、なんとも面白みがあります。
主の赤竜が留守にしているとちらほら耳にしつつ、お戻りになったと喜ぶ様子も見ることに。

犬のゴローはあちこちで助けになっていて、「ゴローさん」と尊敬されているらしい。
犬離れしているというか既に人間離れしているレベル?
山中で必要とされているから、もう再会しても戻ってこない別れの場面になるのでは‥とハラハラ。
それがまっすぐ走ってくる可愛さに、やられましたよ☆

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