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2018年10月21日 (日)

「ドーバーの白い崖の彼方に」

ジョアンナ・ボーン「ドーバーの白い崖の彼方に」二見書房

「紅はこべ」にときめいた方向け。

作者はヒストリカル・ロマンスのRITA賞受賞作家だそう。
手が込んでいますよ~!

19世紀初頭、ナポレオンが統治するパリ。
アニークは、ある嫌疑によりフランス警察に捕らえられていました。
母に仕込まれて少女時代からスパイとして特殊な活動をしてきたアニークは、まだ19歳。
ハンディもありながら、超人的なまでに鍛えられているのです。

牢獄の中で出会った英国人スパイのグレイと互いに惹かれ合いますが、英仏は戦争中。
スパイとして訓練された二人は、脱獄のために協力し手を取り合って逃げながらも、そう簡単に心を許しません。
ロマンス小説のお約束が、激動の時代を背景に、複雑に練り上げられていて、波乱の展開になっています。
楽しめました☆

2018年6月23日 (土)

「鎌倉香房メモリーズ」

安倍暁子「鎌倉香房メモリーズ」集英社オレンジ文庫

「香り」で謎解き、というのが面白い。
鎌倉を舞台に、香りに鋭敏な少女が身近な謎に関わっていくシリーズ、1作目です。

高校生の咲楽香乃は、香り専門店『花月香房』の店主の孫で、土日は店にも出ています。
香乃には、香りで人の感情を感じとる不思議な能力があるのですが、そのためにいろいろあって親元を離れ、祖母と暮らしていました。
大学生の雪弥は、土日はバイトに来ている大学生。
二人は子供の頃からの付き合いで、香乃の想いは伝えられないまま、静かに時を育んでいます。

店に来た人のために尽力していると、特殊な能力を生かすことが出来る場合もあります。
感情がわかるだけで、すべてが見えるわけではないのですが。
そんな香乃をいつもサポートしてくれるのが雪弥。
とても優しく完璧に見える雪弥さんですが、他所ではおそらく違う‥?
事件に巻き込まれるうちに少しずつ、いろいろな面が明らかに。
それもこれも、じわじわとこそばゆ~く進む可愛らしい恋のひとつの段階でしょうか(笑)

内気でおっとりして見える香乃ですが、意外に強い発言をして周りを驚かせることも。
それは内心、葛藤があって当たり前ですかね。

鎌倉の風物がしっとりしていて、いい雰囲気です。
登場する大人たちも個性があって、全体はほんわかしたトーンのこの世界の厚みになっています。
ちょっとお茶目だったり、口が悪かったり、意地っ張りだったり、人間臭くいきいきと描かれているので、面白く読めました。

2018年1月27日 (土)

「貧乏お嬢さまのクリスマス」

リース・ボウエン「貧乏お嬢様のクリスマス」原書房

貧乏お嬢さまのシリーズ6作目、快調です。
今回は王妃は出てこないけど、ダーシーはもちろん出てくるし、イギリスのクリスマスが楽しい。

ジョージーは公爵令嬢だが、家にはまったくお金がなく、かといって職を見つけるのも身分が高すぎて難しい立場。
スコットランドの実家の寒風吹きすさぶお城で、ケチな兄嫁一家と最悪のクリスマスを迎えそうになっていました。
ある仕事の広告を見つけて、これならと応募します。
クリスマス・パーティーの招待客を迎える上品な女性を急募というもの。

デボンの田舎のお屋敷で、イギリスならではのクリスマスが展開。
実はそういう行事に憧れる人を集めて宿泊してもらう企画で、アメリカ人などもやってきます。
ジョージーは王族だから喜ばれ、素朴な村での催しに来ていただいてと恐縮されますが、実家よりよほどいい食事を満喫。

しかも、そこにダーシーもやってきます。
謎めいた恋人ダーシーの一面がまた明らかに?

平和そうな村では実は不審死が続いていました。
一見したところは事故死、何の関連もなさそうなのですが、魔女の呪い説まで出て、だんだんブラックな状況に。
ある意味では、ミステリ風味がいつもより濃いのを楽しめます。
他の描写がユーモラスなので、ちょっとパロディ的な感じもあり、気楽に読めるのがいいところ。

2017年7月15日 (土)

「愛憎の王冠 上」

フィリッパ・グレゴリー「愛憎の王冠 上 ブーリン家の姉妹 2」集英社文庫

映画化された「ブーリン家の姉妹」のシリーズ2作目。
主人公はアン・ブーリンと妹ではなく、次の世代の話。
メアリー女王と後のエリザベス女王という異母姉妹の激しいせめぎ合いを描きます。

主人公は、この二人に仕える娘ハンナ。
ユダヤ人であることを隠して暮らしている本屋の娘でした。
若きロバート・ダドリーと師のジョン・ディー博士に神託の才を見出され、道化として宮廷に上がることに。
当時、聖なる道化という、召使の序列から少しずれた存在が王族に可愛がられていたのですね。

父親のヘンリー8世亡き後、王位は姉妹の弟のエドワードへ。
少年王は病弱だったため、権力は宰相ダドリーに握られていました。
王位継承順位は、エドワードの次が長女のメアリーと決まっていたのですが。
宰相は他の人物を立てようとを画策、失敗に終わります。
ハンサムなロバート・ダドリーはこの宰相の息子で、エリザベスの幼馴染で後の有名な恋人ですが~とうぶんは謀反人の息子の汚名を着ることに。

メアリー女王のことは、あまりよく知りませんでした。
スペイン出身の最初の妃キャサリンの娘ですが、思えば気の毒な生い立ち。
王女として生まれ育ちながら、若い頃はずっと、父親の浮気と両親の離婚に苦しみ、弟が王位についた後もカトリックなので不遇だったのですから。
ハンナの目を通して、地味だが誇り高くて忍耐強く、危機に際して立派な振る舞いを示した様子が語られます。

このハンナ、エリザベスにも憧れてしまうんですけどね。
弟とも仲が良く、国民に人気のあったエリザベス。
すらっとして若々しく、人の気持ちを惹きつけるところがあったのです。
それは生き延びるための知恵でもあったのでしょうが‥

ハンナ自身は、ユダヤ人であることがバレたらと怯え、初恋のロバートに逆らえずスパイの役を務め、親の決めた婚約にも乗り気になれないまま。
宮廷の華やかな人々とその危機に次ぐ危機に幻惑されたように日を送ることになります。

知らなかった事情や、年代の変化が丁寧に追われていて、さらにイングランドだけでなくユダヤ人の世界も描かれるので、非常に濃くてドラマチック!
2作目がこんなに面白いとは予想外でした。
下巻の感想は明日に。

2017年6月17日 (土)

「貧乏お嬢さまと王妃の首飾り」

リース・ボウエン「貧乏お嬢さまと王妃の首飾り」原書房

貧乏お嬢さまのシリーズも5作目。
正しくは?英国王妃の事件ファイル。

公爵令嬢のジョージーは、王族ですが親が破産したため、財産は全然ないのです。
なんの職業訓練も受けていないので、あれこれ工夫はするのですが。
いつもにもまして、お金に困っている出だし。
イヂワルな義姉の仕打ちがひどいのだが‥笑える結果に。

英国王妃のコレクションから「嗅ぎ煙草入れ」が紛失。
その行方を探る司令を受けたジョージーは、一転して、豪華列車で南仏へ行くことになります。
しかも、あのココ・シャネルに出会い、頼まれてショーに出ることに。
長身を活かして、珍しく贅沢なファッションに身を包むことになったのですが‥?
早くに離婚して出ていった女優の母の別荘に滞在して、ふだん一緒にいられない母親と暮らす事も出来たり。

恋人と思っていたダーシーには、他の女性の影?
ドタバタ騒ぎの中にも、ハンサムな大富豪のフランス貴族に誘われるというお楽しみもあり。
1933年なので、シンプソン夫人と付き合っている皇太子も出てきたり、「ダウントン・アビー」と同じ頃なんですね。

ついに、ダーシーとの仲も、微妙に進展~
そう来なくっちゃ!
ヒロインが前向きでチャーミングだから~応援したくなります。
お気に入りのシリーズ、満足な読後感でした☆

2017年6月 2日 (金)

「眠れる森の美女にコーヒーを」

クレオ・コイル「眠れる森の美女にコーヒーを」原書房

クレアのシリーズも14作目。
コージーにしては書き込みの多い作品です。
今回はちょっと味わいが変わっている?

クレアは、ニューヨークの老舗コーヒー店のマネジャー。
元姑がオーナーで元夫がバイヤーという複雑な環境ながら、才能ある店員たちにも恵まれています。
クイン警部との恋も、遠距離になった悩みを抱えつつ、進行していきます。

セントラル・パークでの秋のフェスティバルに参加することになったクレアたち。
おとぎ話がテーマなので、扮装をした人物が公園内にいっぱい。
クインの子供たちの子守をしていた娘も、プリンセス役を演じることになっていました。
ところが‥?

元夫マテオに容疑がかかり、クレアは手がかりを探して奔走することに。
マテオが買い付けた不思議な効能のあるコーヒーを使って、幻夢を見ることまで試み‥?
大学の研究者がデータを取るといった実験になるのが面白いところ。

リアルさと奇想天外な要素、ニューヨークならではの派手さ、ユーモアやロマンスと盛りだくさん。
好奇心は旺盛とはいえ真面目な性格のヒロインで、よくここまで盛り込めるものです☆

2017年5月 7日 (日)

「正義の裁き」

フェイ・ケラーマン「正義の裁き」創元推理文庫

デッカー&リナのシリーズ、8作目。
ここから上下分冊になっています。
なるほどのボリューム、筆も乗ってます☆

再婚したリナとの間に幼い娘も生まれ、和やかに暮らしているピーター・デッカー。
前妻との間の娘がニューヨークで大学生になっていて、近辺でレイプ事件が起きているのが一番の心配事でした。
ニューヨークへ行って事件を解決しちゃいそうな勢いだけど、さすがにそこまでは‥

ホテルの一室で若い娘が発見され、プロム(高校の卒業パーティ)の夜に羽目をはずしたらしいとわかってきます。
高校生仲間は嘘をついたり、親がかばったり。
交際相手だったらしい少年クリスは美形で才能もあり、18歳にしてクール。
同級生とは一線を画していました。
高校では、派手なグループにいたのですが。
複雑な背景を持つクリスはと、生真面目でけなげな少女テレサとの高校生活もたっぷり描かれていて、青春物が一本入っているよう。
これまでの作品とは一味違う魅力があります。
一途な恋の思いがけない成り行きが、切ないばかり。
若い二人が思いつめていく世界の深みに引き込まれるようでした。

捜査に当たったデッカーは、嘘発見器にも引っかからないクリスにある疑惑を抱いたのですが‥
デッカーの家庭生活はいつもほど前面に出てきませんが、いいお父さんでもある誠実な刑事ぶりが、やがて生きてくることに。

1995年の作品で、2008年の翻訳発行。
かなり特異な環境がそもそも日本とは違うせいか、年月のずれはそれほど感じませんね。

2017年1月14日 (土)

「貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ」

リース・ボウエン「貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ」(コージー・ブックス)原書房

貧乏お嬢さまのシリーズ、じつは「英国王妃の事件ファイル」も4作目。
快調です。

公爵令嬢のジョージーは、王位継承権34番目の王族。とはいえ親が破産したので財産もなく、1930年代当時、仕事につくのも難しいという。
王妃に呼び出され、英国王室を代表してルーマニア王女の結婚式に出ることになります。

吸血鬼ドラキュラの伝説が残る山深い土地に孤立している城。
ルーマニア王女とは学友ですが、まるで別人。
王族が集まるお城で優雅なひと時‥のはずが?
怪しい出来事が続く恐怖の城‥
さらに事件が起こりますが、無事に結婚式を挙げるため、事件は秘密裏に。
ダーシーも来ていたのは、何か起こりそうという依頼によるもの?

かねてルーマニアの王子とは縁談をささやかれていたジョージー。
なりゆきと誤解から、婚約したと皆に祝われてしまいます。
さて?

急に雇ったメイドのクイーニーがおそろしく不器用で、ほとんどドタバタ喜劇となりますが、素朴な良さもあり、どうやら迷コンビになりそう。
続きも楽しみなシリーズです☆

2016年12月24日 (土)

「キャロル」

パトリシア・ハイスミス「キャロル」河出文庫

「太陽がいっぱい」などで有名なパトリシア・ハイスミスが1952年に別名義で発表した作品。
恋愛物です。
マッカーシズムの赤狩り旋風が吹き荒れた厳しい時代だが、ペーパーバックでベストセラーになったそう。

若い娘テレーズと、美しい人妻キャロルが出会う。
テレーズは舞台美術家の卵で、クリスマス商戦でにぎわうデパートでアルバイトをしていました。
感受性豊かなのが災いして不慣れな環境に戸惑い、感性が暴走しそうになっていたのですが。
それとなく惹かれあう気持ちを伝えていく二人。
キャロルは教養があり裕福な社交界の女性だが、じつは離婚の危機を迎えていました。

テレーズにもステディなボーイフレンドがいたのですが、その上手く行ってないっぷりがまた、不安定で苦くて頭でっかちでどっちつかずで、若さそのもの。
幼い子もいるキャロルと、一体どうなるのというのか?
キャロルの親友のアビーや、デパートに勤める仲間の女性なども異彩を放ちます。
揺れ動く切ない関係が美しく描かれ、どうがんばっても絶望かと思えば‥意外とそうでもない展望が見えて。
これは‥
1952年という時期に書かれたのでは、バイブルとなるはずです。
そのことも含めて、感動しました☆

2016年10月 8日 (土)

「アガサ・レーズンと死の泉」

M.C.ビートン「アガサ・レーズンと死の泉」原書房

アガサ・レーズンのシリーズも7作目。
美しい田舎の村へ戻って、またまた事件に巻き込まれます。

ハンサムな隣人ジェームズとは結婚直前に破談となって、まだ気まずい関係。
最初は仲直りのチャンスをうかがっていたアガサだが、まだ許せないでいるジェームズとは何んだかんだとすれ違ってしまい‥?

近くの村アンクームにある泉をめぐって、ミネラルウォーターの会社に利用を許すかどうかが教区会で問題となっていました。
住民同士がはげしく対立し、ついに事件が!

アガサはミネラルウォーター会社の広報を依頼され、冷たいジェームズを忘れるように仕事に打ち込みます。
年下でイケメンの経営者に言葉たくみに言い寄られ、自尊心を少し取り戻しかけます。
ところが‥?

ご近所の住人とは違う、土地の有力者たちに探りを入れると、さんざんな目に。
英国の身分差別意識ってあるんだな~。
生まれも育ちも違いすぎるジェームズと理解しあうのが難しいのも、やむを得ない?
猪突猛進なオバチャンだけど、可愛いところもあるアガサ。
紳士だけど、かなり不器用なジェームズ。
じつは割れ鍋に綴じ蓋でお似合いのような気もしますが~(笑)

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