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2014年6月 1日 (日)

「泣き童子」

宮部みゆき「泣き童子 三島屋変調百物語参の続」文藝春秋

「おそろし」「あんじゅう」に続く三島屋変調百物語の3作目。
楽しみにしていました。
輪郭がくっきりした話が多い印象。

神田の袋物屋、三島屋では、不可思議な話を集めています。
黒白の間という座敷で、話すのは一度に一人だけ、くわしく聞くのは姪のおちかという娘一人。
語って語り捨て、聞いて聞き捨て。それだけが約定。
事情があって実家を離れ、叔父夫婦の三島屋で働いているおちかです。

「魂取の池」
神無月の炬燵開きの日、若い娘が訪れました。
祖母の育った村に村にあった不思議な池とは。

「くりから御殿」
白粉問屋の夫婦が訪れます。
病を得た主人は、漁師町の出。
四十年前、子供の頃に、山津波で大勢の村人や友達が亡くなったのです。そのとき、不思議な夢を見るたびに‥
心配して隣室に控えていた妻は、生き残ったことを悔いる夫の気持ちを知っていた‥
震災で生き残った人に寄せる、作者の思いが感じられます。

「泣き童子」
霜月のねずみ祭りの日。商家にとっては大事な風習なのです。
やつれきった男性が訪れ、幼い子の話をします。
なぜか言葉が遅く、泣き出したら泣きやまない。
後ろ暗いことのある人に気づくと、泣き出すらしい‥

「小雪舞う日の怪談語り」
冬奉公といって農村から出稼ぎに来る女手が増える時期。幼いおえいという女の子も三島屋にやってきました。
珍しく、おちかが振袖を着てお出かけする楽しい趣向。
青野利一郎とも、このときに久しぶりに会うことに。
札差の井筒屋の肝いりで、「年の瀬に心のすす払いをする」という怪談語りの会に誘われたのだ。「怪談を聞くと、人の心は神妙になる」と。
この中に四つ話が入ってます。
普請道楽の父が建てた家の怪異。橋から異界にさまよいこむ話。片目で病を見抜く母の話。岡っ引きの半吉が若い頃、看取った男のもとに夜ごと現れた怪異。
おちかが両国橋で出会った微笑ましいことも。

「まぐる笛」
若い侍が話す故郷の話。
いつ現れるかわからない怪物「まぐる」が村に現れた日。
侍の母は、「まぐる」を抑える役をになう女性だったのです。

「節気顔」
年あけて、おちかも18に。
春分の日に聞いた話。
放蕩者の長兄が、改心して戻ってきた。
離れに隠れ住むようにして、二十四節気の日には一日出かけています。
姪が見てしまった秘密とは‥
大人になった姪が、死んだ人に会いたいという気持ちを理解した様子に、どこか心揺り動かされます。

三島屋の人々の暖かさ。
女中のお勝は疱瘡の跡があり、<禍払い>という役目も持っていました。
おちかが聞く話は、若い娘が一人で聞くには重すぎるような場合もあるけれど、尋常でない経験をした身には、そうでもしなければ救われないものがあるのでしょう。
「お嬢さんはもう、去年(こぞ)のお嬢さんではありませんからね」というお勝の言葉が、心強い。
江戸情緒ゆたかに、静かに流れる日々。
おちかが幸せになることを祈ります。

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