フォト

おすすめ本

« バービー二人で | トップページ | 9月の花 »

2012年9月27日 (木)

「破壊者」

ミネット・ウォルターズ「破壊者」創元推理文庫

英国ミステリの女王ウォルターズの新刊。

イングランド南端のチャプマンズ入江。
男の子の兄弟が、浜辺で女性の死体を発見します。
あわてふためく二人をなだめて、事態がよくわからないまま携帯で通報したのは、たまたま散歩していた俳優のスティーヴン・ハーディング。

そこへやって来たのは、近所の馬預かり所の経営者マギー・ジェナー。30代半ばで、とても美しい女性。
通報で駆けつけたのは、地元警官のニック・イングラム巡査。
マギーは地元で育った人間で、地区担当のニックとは旧知の間柄だったが、良い思い出ではありませんでした。
捜査はニックら警察が行ないますが、内容的にはマギーの物語としても読める小説です。

スティーブは俳優としては売れていなかったのですが、女性が目を離せなくなるほどのハンサムで、モデルとしては不自由ないらしい。
死体はケイトという女性で、実はスティーブとは家が近かったのです。
ただの知り合いだとスティーヴはいいますが、ケイトの夫は妻はスティーブを嫌っていたという。
スティーブに言い寄られていたとか、ケイトがストーカーだったとか、人によって証言は食い違う。

ケイトは小柄な美女で、夫ウィリアムは製薬会社の研究者。年上の地味な男で、まったく共通点がないらしい。
二人の間の娘ハナは3歳ですが、ほとんど口を利かず、どこか様子がおかしい。
猫かわいがりする妻と、途方に暮れる夫。
娘は何もかもわかっているように見えるときもあるのですが。

スティーブは自分のスループ船「クレイジー・デイズ」号を大事にしていて、舟仲間には評判が良かったのです。
自己中心的だが女にはもてて華やかなスティーブと、大人しい分だけ鬱憤が溜まっているかも知れないケイトの夫。
対照的な二人の男を調べていく~ニックら捜査官たち。

ケイトは階層が上の夫を見事ゲットしたということで、イギリスが階層社会だという本「不機嫌なメアリー・ポピンズ」の内容を思い出しました。
それぞれの人間が色々な面を見せ、最初は人によっても見方が違うのですが、その嘘か本当かわからない断片が次第にまとまってくるのが圧巻。
どうしてここまで性格が変わらないのかと呆れるほど、こだわりや弱点がじつは一貫しているのです。どうしようもないのか…?

ニック・イングラム巡査は、大柄で誠実ないい男で、ここぞというときに活躍。
マギーは名家の出。(ここでも階層の違いが…)
若いときに結婚相手に騙されて財産を失い、身近な人にも迷惑をかけた過去を背負っています。
その当時、イングラムは役に立たなかった悔いがありました。
誇り高いマギーの母も個性的。
ニックとマギーのこじれた関係が、じわじわと上手くいくようになるのも楽しい。

翻訳発行は最近ですが、原著は1998年で、6作目。
「囁く谺」と「蛇の形」の間になります。
「囁く谺」は男性の私立探偵と運命の女性の話で、男性作家が書いたかのような雰囲気で、こういうのも書けるのよって感じだったかな。
「蛇の形」はウォルターズ以外には書けないだろうという傑作。
その間にあった~なかなか力強い作品です。

« バービー二人で | トップページ | 9月の花 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「破壊者」:

« バービー二人で | トップページ | 9月の花 »

2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー

最近のトラックバック

無料ブログはココログ