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2012年8月 2日 (木)

「チャイルド44」

トム・ロブ・スミス「チャイルド44」新潮文庫

ロシアで、1980年代に、実際にあった連続殺人事件をモデルに描く重厚なストーリー。

1933年、旧ソ連で、村が飢餓に襲われているシーンから始まります。
強烈…

20年後、スターリンの時代、末期。
共産主義が完成すれば犯罪は起こらないという建前で、事件は解決の見込みが立つまでは、事件と認められないという歪んだシステムになっていました。
当局の方針に異議を申し立てれば、すぐに何らかの処分を受けることに。
逮捕され、拷問され、処刑される危険もあったのです。

国家保安省に勤める主人公レオ・デミドフは、もとは軍人になるために体育会系の学校を出た人物。
子供が電車に轢かれた事件で、家族の元へ派遣されます。
わが子の死を殺人事件と思う親は同僚の一人なのですが、事故だったと説得しなければなりませんでした。

その間に、スパイ容疑の掛かった人物ブロツキーが逃走、レオは反対を押し切り、独断で逃亡した方向を推定。
雪の中を一人で走って追う羽目になります。
これまでのきさつで部下達の心が離反しかけていて、特に野心家の部下ワシーリーと決定的に対立しました。

レオはブロツキーの尋問をしますが、外交官のペットの治療をしただけのただの獣医だったことに気づきます。しかし、どうしようもなかった。
寝込んだレオを診察に来た医師は、妻のライーサに言い寄り、脅迫します。
拒絶したライーサは後に、ブロツキーが告白したスパイの仲間のリストに挙げられます。
レオは妻を告発すれば助かると迫られることに。

尋問の後、一週間の自宅監禁。
命は助かったもののレオは左遷されて、国家保安省よりも格下の民警の巡査として、田舎町の狭い部屋に暮らすことになりました。
赴任先で、前の事件と似た死体を発見。
同じ犯人ではと疑うことに…

美しい妻ライーサとの関係も強烈。
左遷後に、本音を吐くようになったのです。
夫のレオは自覚していませんでしたが、権力ある職業にあったため、プロポーズを断ることなど怖くて出来なかったという。

左遷先の人民警察署長は、他の地方で同様のことが起きていないか調べて欲しいというレオの依頼をいったんは退けますが、家族の休暇のついでに、調べ続けることにします。
レオは、手がかりを求めて、モスクワに潜入します。
逃走しながら、決死の捜査。
犯人を公の捜査で逮捕することは諦め、ただ犯行にストップをかけるために。
見も知らぬ一般の人の助けも借りていく…協力して貰うことは出来ると妻が勧めたのです。
権力側にいた夫が知らなかったこと、一般の人は恐怖政治のこの体制に忠誠を誓ってなどいないということでした。
愛情なく結婚した妻が、異常事態の中で、夫への気持ちを新たにしていくあたりは感動させられます。

著者は1979年ロンドン生まれで、発表当時29歳。
英国人の父とスウェーデン人の母を持つ。ケンブリッジ大学英文学科を首席で卒業。在学中から脚本を手がける。
処女小説「チャイルド44」は、刊行1年前から注目を浴びていたという。
2008年度CWA賞最優秀スパイ冒険スリラー賞を受賞。

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