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2011年7月31日 (日)

「夢の破片」

モーラ・ジョス「夢の破片」ハヤカワ・ポケット・ミステリ

いつしか寄り集まって暮らすことになった4人の疑似家族。
イギリスの田園地帯コッツウォルドにある美しい古い邸宅で…
実の親子よりも仲は良いのですが、実は彼らはひょんなことから一緒になっただけ…

ジーンは、留守番を仕事にしてきた女性。
64になって、事務所に定年退職を言い渡されます。
そこで、何かが壊れてしまったのか?
初めて自分の物のように感じた美しい屋敷で、運命のように感じて取った行動は…

中年男マイケルは教会へ乗り込み、古い石膏の聖像を見せて欲しいと頼み込みます。
副牧師で研究していると名乗りますが、実は盗んだ品でわずかに稼いでいるギリギリの暮らし。
俳優にはなれなかったけれど、いくらかその才能はあったのです。
自分自身でいるときよりも、おどおどしないで、設定の人物になりきることが出来るのでした。

妊娠している若い娘ステフ。
恋人に邪険にされながらつきあっていましたが、祖母の家でも邪魔にされ、行き場をなくしていました。
偶然出会ったマイクルが紳士的に見えて、車に乗り込むのですが…?

彼らが関わる、一見普通の人々もかなり濃い。
とんでもないエゴイストだったり、妙な格好をしていたり、こだわりがあったりと…変な所も多くて、傑作。

ステフが後に、近所に住むサリーの赤ちゃんチャーリーの面倒を見るようになり、ベビーシッターとして才能を発揮。
流れによっては、それで十分に社会でやって行けたのだろうに。

サリーのほうは事務弁護士でキャリアウーマンなのですが、勝手にネパールへ行った夫とは別れるつもりの一人暮らし。
家では片づけられない状態で、すべてをとってある部屋に住んでいるのでした。
それぞれの室内の描写がなんともリアル。

寄る辺のない、だめだめな人間が追いつめられていくのは哀しい。
心の優しさはあるのにね。
夢想的なはかない幸福の美しさと、リアルでみみっちいような人間臭さ、それに加えてどう転ぶかわからない緊迫感が魅力ある作品です。
綿密な描写で、みごと英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞(2位ということ)を受賞しています。

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