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2011年7月 8日 (金)

「写楽 閉じた国の幻」

島田荘司「写楽 閉じた国の幻」新潮社

面白かった~!
失意の研究家が、写楽の正体を追っていく話です。

塾教師の佐藤貞三は、元々は北斎の研究家。
しだいに仕事も家庭も上手くいかなくなっていくという状況の中、ある日、悲劇に…

一緒に連れて出かけた幼い息子が勝手に走り出てしまい、事故にあったのです。六本木の茂木タワーの回転ドアで。
妻と義父は激怒、佐藤は言われるままに家を出ることに。

絶望の日々、ふと手に入った一枚の古い絵。江戸時代の肉筆画はデフォルメがきつく、まるで写楽を思わせるような筆致。
まさか、これは…?
それをきっかけに、写楽の正体をめぐって、思いがけない探求の旅が始まりました。

回転ドア事故の調査委員会に一人だけ呼ばれた佐藤は、東大工学部の教授だという美しい女性、片桐に出会います。
佐藤の妻と義父がビルやドアの会社を訴えたため、訴訟に使うためではないのでと調査委員会では除外されたのでした。
佐藤はまだその後に自殺しかける状態でしたが、様子を見ていた片桐教授に救われ、ほのかな交流が始まります。

ところが突然、佐藤がいぜん出した本の批判が雑誌に載ります。
訴訟のためにイメージダウンを狙った相手方から、インチキ学者のような悪評を立てられ、危機に陥れられそうになるとは。
それを跳ね返すためにも新説の本を出そうと、出版社に応援されることに。

江戸時代の描写も挟まり、躍動するように筆力がのって、いきがいい。
写楽は魅力がありますからねえ!
春信、歌麿、北斎と絵柄は区別がつくけれど、年代や性格の違いなど、よくは知らないので、とても面白く読みました。

写楽はわずか10ヶ月ほどの間に、140点もの多作。
版元の蔦屋重三郎が、いきなり上等の刷りで、新人の作品を出したのはなぜか?
異版が多く、売れて増刷されたのは確かだという。
どうして誰も写楽の正体について言及していないのか。
歌麿が、悲憤に満ちた言葉を書き残していた意味は?
さらに、オランダの資料まで調べていくと‥…?
とんでもない展開なのに~いくつか見落とされがちな点に整合性を通した推理で、説得力があります。

子供の事故死は創作といえどもむごいけど、回転ドアの不備がいかにして起こったかを具体的に描き、告発的な意味があるようです。
そして、日本で起こりがちなことに警鐘を鳴らしている点では…
真面目に研究し工夫するうちに、経済や見栄えが優先されて、大事なことをどこかで見落としてしまうという。
原発の事故も思い起こさせますね。

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