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2011年5月27日 (金)

「ある日系人の肖像」

ニーナ・ルヴォワル「ある日系人の肖像」扶桑社ミステリー

ロサンゼルスに住む日系女性が、祖父のことを調べていく話。

ジャッキー・イシダは、弁護士として就職が決まっている若い女性。
亡くなった祖父フランク・サカイには子供の頃は可愛がって貰ったのですが、しだいに疎遠になっていました。
祖父のいぜんの遺書に出てくるカーティスという人物のことを調べてくれと、叔母のロイスに頼まれます。
祖父の雑貨屋を相続させたいという意外な内容があったのです。

第二次大戦中に日系人は白い目で見られ、砂漠の収容所に。
フランクは、参戦していました。
4年の間、日本人部隊は捨て石同様にヨーロッパの前戦で従軍。危険な任務で多くの仲間を失い、自らは怪我をして帰国。
悲惨な経験に心は凍り付いていましたが、ある出会いでみずみずしいものが残っていたと気づきます。
しかし…
たった5秒のためらいで、恋を失ってしまう。

フランクは後に、写真で見合いした相手と結婚。
穏やかでまっとうな人柄で、地域に根ざした生活をし、近所の黒人達にも信頼されていた人生でした。

ジャッキーは、カーティスの従弟のジミー・ラニアーという黒人男性に出会います。
ジミーは、大柄で寡黙で取っつきはよくないのですが、子供には大人気。
カーティスは、フランクの店でバイトをしていた少年でした。
が、とうに亡くなっていて、その死に方が、1965年のワッツ暴動の日に、フランクの店でと知って驚愕するジャッキー。
しかも、警官に殺されたという噂があったのです。フランクを知らない人からは、フランクが疑われることもあったらしい。
ジャッキーとジミーは関係者の話を聞いて回り、事件の真相を知ろうとしますが…

フランク自身や様々な登場人物の視点を交錯させ、ロサンゼルスの現代史を構築する内容。
すべての事情を遺された者は知るわけではないのですが‥
もし知っていたら、一部は救われるかも知れないけれど‥一部は余計に切ないでしょう。
迫力のある作品です。

ジャッキー自身は、出世した両親の元で裕福な恵まれた育ち。
回りからは世間知らずに見えます。
とはいえ、良い学校には日系人どころか東洋人も一人だけという生活は、幼い頃には辛かったでしょう。
同性の恋人との関係も次第に変化していくという内容。

著者は、日本人の母とポーランド系アメリカ人の父との間に、日本で生まれる。
5歳で渡米。アジア系は一人という環境だったそう。
1997年デビュー。2作目の本書で話題に。
2作目とは思えないほどの筆力です。

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