フォト

おすすめ本

« 「ダージリンは死を招く」 | トップページ | 二人で着せ替え »

2010年12月 9日 (木)

「球体の蛇」

道尾秀介「球体の蛇」角川グループパブリッシング

ミステリというより緻密な描写の普通の小説~謎はありますが。
暗いトーンで描かれていますが、熱っぽくて引きこまれます。
両親と縁の薄かった主人公・友彦。
10代にあった、因縁めいた2件の火事のいきさつ。

友彦の父はエリートでしたが、家族を愛することだけが出来なかったのでした。
母が家を出て離婚。
父も転勤になって引っ越すというときに、「行きたくない」と叫んだ友彦を見かねて、隣家の乙太郎さんが引き取ろうと申し出てくれます。
ほっとした様子の父は、愛人と暮らすつもりだと知ります。
白蟻駆除の仕事をしている乙太郎は、職人肌で気どらない性格。
サヨとナオという娘が二人いて、年上のサヨに友彦は魅せられます。はかなげだが、どこか毒がある少女でした。

キャンプ場での思いがけない火事で、乙太郎の妻は亡くなり、サヨは火傷を負います。やがて自殺。
キャンプになど行かなければよかったと嘆く乙太郎。
友彦は、幼い考えで、さらにサヨを追いつめたという罪悪感を抱えて生きることに。

17歳になったとき、白蟻駆除の助手に出かけた屋敷で、いぜんから自転車で通るのを見かけていた女性がそこに通っていると知ります。
ちょっとサヨに似た美しい女性は、屋敷に住む年上の男性の愛人らしい。
友彦は夜中に縁の下に入り込んで、畳の上で男女がたてる苦しげでもある声を聞くように。
あるとき、その屋敷も火事になります。
あの女性・智子に気が付いていたと言われ、あなたが火をつけたのねと言われてしまう。
驚きのあまり、あいまいな態度を取りながら、会い続けるのですが‥

幼なじみとして仲のよかったナオは、受験勉強もしていなそうな友彦の様子を心配していました。
そして、ある日、あの人に会わないでと強く忠告してきた理由は‥?
思いがけない展開へ。

幼なじみとの何気ない生活ぶりが、丁寧に描かれていて、リアル。
ひたひたと迫る不安や、暗い過去が深淵を開けているような様も、鋭く鮮やかに描かれています。
最後の方はゆるやかに、気持ちがほどけていくような終わらせ方になっています。

« 「ダージリンは死を招く」 | トップページ | 二人で着せ替え »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「球体の蛇」:

« 「ダージリンは死を招く」 | トップページ | 二人で着せ替え »

2019年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

カテゴリー

最近のトラックバック

無料ブログはココログ