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2008年12月18日 (木)

「白い果実」

ジェフリー・フォード「白い果実」国書刊行会

1997年、世界幻想文学大賞受賞作。
20世紀の最後を飾る奇書、とは訳者の弁。2004年8月発行。
翻訳は山尾悠子・金原端人・谷垣暁美の3人がかり。
新作にしては、前世紀初頭に書かれた古典を読むような文章にやや戸惑いましたが、もとの味わいを出そうと苦心したらしい。

理想形態市(ウェルビルトシティ)は、独裁者ドラクトン・ビロウが築いた、クリスタルとピンクの珊瑚で出来た街。
主人公のクレイは、一級観相官。
四輪馬車の迎えに乗り、北方の属領にある鉱山の町・アナマソビアへ出立する所から始まります。

アナマソビアではブルースパイアの発掘が行われ、青い粉を吸い込んだ鉱夫はいずれ青く染まって全身ブルースパイアと化すという。
観相が異常に発達している時代で、幼女が人狼であることを見抜いた功績もあるクレイ。人狼がいるわけですね。
「白い果実」の盗難をめぐって、アナマソビアへ派遣されたのは左遷に近く、上手くやらなければ失墜するリスクがありました。
白い果実というのは、外界から来た物らしく正体は確かではないのですが決して腐らないので貴重とされ、不老不死の妙薬と見なされていたのです。

クレイは町中の人間の観相をして犯人捜しをするのですが、才能のある美しい娘アーラに出会って魅了され、禁を破って助手とします。
ところが滞在中に一時なぜか観相の知識を失い、ごまかしながら仕事を続ける羽目に。
美薬という麻薬の中毒も相まって、とんでもない事態を引き起こしてしまいます。
運命は暗転しますが、流刑地での見張り役は双子なのか二重人格なのか同一人物なのか不明だったり、世話をしてくれるのが賢い猿だったりと、作者の豊かなイメージは氾濫し続けます。
後半でまた急展開。

「旅人」と呼ばれる人間ではないようなミイラの真実は?楽園とは?
カフカの「城」とか…いろいろ思い出します。
独裁と暴力と血と苦難と革命と…あまり興味のない要素が多いので、感情移入は出来ないけど、楽園のイメージや、えらい目に遭うサイテーな主人公とは対極的な世界がある暗示に、いくらか希望も見えます。
続編もあり、三部作の予定だそうです。
架空世界を作り上げたパワーはとにかく、ものすごい!
読んだのは月初めですが、アップに時間がかかりました。年内はもうこんな濃いのは読めないだろうなぁ…

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