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2008年9月 4日 (木)

「赤朽葉家の伝説」

桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」東京創元社

2006年12月発行。
「このミステリーがすごい」で上位でした。
ミステリーの要素は最後の方に出てきますが、旧家の三代を描いた濃厚で面白い小説です。

山陰は鳥取の紅緑村。
山奥に暮らす漂白の民が、女の子を一人、村に置いて行きます。
その女の子・万葉は昭和18年頃の生まれ。
定住はせず何かあるとたまに村に下りてくる人々は「山の民」「辺境の人」などと呼ばれ、がっしりとした体格で色黒で目が大きく、色白で目が細くのっぺりした顔つきの村人とは違っていました。

村の若夫婦に引き取られて育った万葉は、千里眼があると噂されます。
長じて、製鉄所を経営する大金持ち・赤朽葉家の大奥様・タツに見込まれて、跡取りの嫁となることに。
跡取り息子には愛人もいましたが、万葉の方はよくわからないまま、それほど気にしません。
職工の豊寿と内心、想い合うのですが…互いにそれを口にすることはありませんでした。
何となく自然に信頼し合う関係は、けっこういいなと思うのですが。

最初の子が生まれたときにその死を予知し、誰にも言えずに苦しむ万葉。
優秀な長男でまわりに期待されていたのですが、やがて予感通り早世してしまいます。
長男の泪、その妹の毛毬~すごい名前ですが、これは祖母の直感で名付けたもの。戸籍上は波太、万里と出されたが誰もそう呼ばないという。
長女の毛毬ははっきりした顔立ちの美貌だが、いたって気が荒く~暴走族としてならすのもその時代の流行にちょうど乗ってのこと。
ハイティーンブギやスケバン刑事の時代ですかね?
毛毬はその経験を描いて漫画家となり、一世を風靡します。

その娘でニートぎみの瞳子は、偉大な祖母と母の存在に脅え、生き方に迷うのでした。
それぞれの若き日を中心に、三世代の強烈な人物を脇役までくっきりと描いて読み応えがあります。
高度成長からバブル、その崩壊と、時代を切り取る描き方に躍動感があって、面白い。
ミステリ部分は、瞳子が謎解き役。
これがやや大人しすぎて~それまでの濃さに比べて、ちょっと肩すかしの気分を味わうのですけど、普通の人ってこんなもんかしら?
振り返って~瞳子の一生を圧縮すれば、もっと濃くなるかなとも思うのですが。
透明な視点で見て欲しかったのか、今の若い人は大人しいという実感がこもっているのでしょうか?

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