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2008年3月26日 (水)

「オーデュボンの祈り」

伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」新潮社

私にとっては「死神の精度」「終末のフール」と遡って3冊目の伊坂幸太郎作品です。
作者は71年生まれ、95年東北大卒、SEに。
96年、サントリーミステリー大賞佳作。
本作品が第五回新潮ミステリー倶楽部賞受賞で、初の単行本に。

主人公・伊藤は、目を痛めたために、5年勤めたシステムエンジニアの仕事を辞めます。
二ヶ月後には衝動的にコンビニ強盗を起こすダメ男っぷりですが~現れた警官は中学の同窓で非常にたちの悪い男(生まれつき残虐で、これが権力を持ったという最悪のパターン)
伊藤は事故ったパトカーから飛び降りて逃げ、なぜか目が覚めた時には謎の土地・荻島にいたのです。

百年以上、鎖国のように存在を知られずに来た島だというんですね。
異世界ファンタジー…というわけでもありませんが…
「他の誰も書かないような作品を書こうという意気込みが感じられる」という選評には、なるほどと思いました。

たった一人だけ外界とボートで行き来している老人もいて、少しは情報も入り、荻島の人々は一見普通に暮らしていますが、どこかがずれている。
何でも知っている予言者のような喋る案山子・優吾の存在、どこか謎めいた住人達。
百年以上もよそ者は来なかったのに、伊藤の前にも何だか嫌な奴が一人島に来ているんです。それは何故か?
案山子に会った伊藤は、かっての恋人に葉書を出すように言われて…

この島の中で起きている事件とは?そして伊藤は元の世界へ戻れるのか?
奇想天外な設定ですが、人間像は意外にリアリティがあります。
さすがに初期の作品で、若いなあ。

オーデュボンは鳥の写真を撮影した写真家の名前。
絶滅種の鳥が生き延びるのを祈る…
そのイメージは良いんですが、何だろう…伊藤という青年が空っぽなような。鳥に興味があった様子もないし。仕事や恋人の断片的な事以外にも、もう少し自分自身の思い出とか、この長さだったらあってもいいのでは。
誰にでも感情移入出来るように、ということなんでしょうか。
奇抜な設定と展開を書き込むのに重点を置いているのかな~。

本人にとっては、好きなものは入れたい、思う存分書きたいという思い入れがあるのでしょう。
読む側にとっては、モチーフが響き合う構成になっていないと、唐突に感じて何だかな?と首を捻る事になる~その辺が、後の作品だと変わってきます。
自分が何を書くのが得意か、という見極めが出来ていったのが感じられますね。

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