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2008年2月13日 (水)

「ガラスの宮殿」

アミダヴ・ゴーシュ「ガラスの宮殿」新潮社

1885年、ビルマ最後の王がイギリス軍に追放される所から、百年以上に渡る大河小説。
ビルマとインドの3家族3世代の物語です。
重量級の作品ですが、文章はわかりやすく、エピソードが生き生きしているので、広範囲の方にお勧め出来ます。
私にとって上半期ベスト1になるかも。

インド系の孤児ラージクマールは、ビルマに置いていかれ、王宮の前にある屋台で働く事になります。
折しもイギリス軍が侵攻し、光り輝く宮殿(グラス・パレス)に仕えていた幼い侍女ドリーは、王一家と共に追放されてインドの孤立した館で軟禁状態に。
ラージクマールは2度見かけただけのドリーを忘れられず、中国系のサヤー・ジョンに雇われて材木商として金持ちになってから、初恋のドリーにはるばる会いに行きます。

追放の地で、孤独なドリーは大人になっていました。
王家を見張る立場の高官の妻ウマと親友になります
。ドリーと終生助け合うウマは、後にアメリカへ渡り、やがてインド独立を目指す活動家へ。
サヤー・ジョンの息子夫婦は農園をモーニングサイドと名付け、そこへ集う子や孫の代までの恋愛や不思議な縁がありありと描かれます。
映画的なシーンも多く、鮮烈。

後半、第二次大戦中に日本軍が侵攻してくる時、イギリスからの解放になると期待する人に、ドリーの次男がまだ十代で、独逸や伊太利亜のようなファシストになりたがっているだけと切って捨てるように言い放つシーンがあります。
同じ頃に日本の十代の子は全然わかっていなかったんじゃないか。報道管制があり、偏った知識しか与えられていませんからね。
当時のビルマもインドも政治情勢は複雑です。

ウマの甥は、イギリス軍に入隊してインド人初の士官となりそれが名誉と思っていたが、独立の気運も起きてきた時に、何が忠誠か?どう生きるべきか?引き裂かれてしまう…
どう転ぶかわからない時期には何とも難しい問題で、何が正しいかは時代によって変わり、解決策というのはなかなか見つからない。しかも置かれた立場によって、決断する間もなく流されてしまうことも多いんですね。
現在でも、情報はあるけれども、あり過ぎるのか~真相は見極めにくい難しさ。
アウンサンスーチーもちらっと登場する時代で終わります。

互いに葛藤し、時には運命に押しひしがれながらも生き抜く人間達。
年月を経た後のミャンマーでの出会いと、思いがけないエピソードのおまけが余韻を残します。
どの人物にも血の通った存在感があり、、心があたたまる読後感でした。

作者は1956年カルカッタ生まれ、新聞社勤務を経て文化人類学で博士号を取得、ニューヨーク在住。
2000年にこの作品を書いて世界的ベストセラーに。
日本では07年10月発行。

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