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2007年10月22日 (月)

「額田女王」

井上靖「額田女王」新潮文庫

額田女王(ぬかたのおおきみ)の愛の行方と歌人としての成長を中心に、激動する時代を描きます。
白い雉が見つかったのを吉兆とした白雉の祝典に始まります。新しい世の中になろうとする活気と不安の中、それをリードするのが中大兄皇子と大海人皇子。
この2人に愛される額田女王はまず間人皇后のうら若い女官として登場し、大海人の2年にわたるラブコールに応じますが、これが愛なのか自分でもわからずに戸惑う日々。
幼い日から神官の家で修行し、神の声を聞いて歌を詠むという特殊な立場にあり、大海人にははかり知れない部分があるという設定です。
巫女としての自分を貫き、どちらの後宮にも入りません。多くの妃たちと一線を引き、生き方を真剣に模索する様子はやや頭でっかちな印象もありますが、りんとして知的な女性像ですね。
後年になっても妃の地位につかなかったのが、より自由でふしぎな魅力に輝いて見えたという~後半は額田に乗り移ったかのような親身な描き方です。

中大兄に対しては強引な王者への抵抗感があるのですが、相反する惹かれる気持ち、苦悩する様子への思いがけない同情もあって、醒めた態度をとっていたのが、いつの間にか心を盗まれていたという展開。
恋愛の描写は意外と少なく、それよりも暗殺や遷都、大工事や火災、遠征と、半島の情勢にも影響されつつ新しい時代へ向かって大きく揺れる情勢の変化がありありと活写されています。

今や古典的とも言える著作~改行が少ないので、若い子には読みにくいかも?
どことなく優雅なおおらかさの漂う、ある意味あいまいな状況をそのまま反映しているような文体が独特で面白かったです。
これ以前には、古代を描いてこんなにまとまった内容でリアリティのある小説ってあったのでしょうか?

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