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2007年9月17日 (月)

「夜愁」

サラ・ウォーターズ「夜愁」東京創元社

第二次大戦前後のロンドンが舞台。
これまでとはかなり作風を変えて、文学の領域へ。
こんな風に書けるとは、驚きました。独特なムードがあり、登場人物の抱えた秘密と関わりを知っていくミステリ的な要素もあります。

空襲から生き残ったテラスハウスに住むケイは、今は孤独に過ごしている男装の麗人。
その建物に住む治療家を訪れる人の中に、美青年と老人という奇妙な取り合わせがありました。
青年ダンカンは窓を見上げて名も知らぬケイにほのかな好感を抱くが、彼には周囲の知らない過去があったのです。
一方、ダンカンの姉のヴィヴは不倫相手ととぎれがちな関係をいまだに続けていました。同僚のヘレンとは上手くいっているが、お互いに何か少し秘密があることを感じながら…
ヴィヴは父に絶縁されている弟の家を毎週訪ね、どうしてこんなことになったのかとふと思う…

1947年、44年、41年と3段階に遡っていく構成。
戦後間もない頃の平和だがまだどこか戸惑っているような時期、戦争末期の思い詰めた危機感と高揚、その前の時点でまだ皆がうら若いうちに物事が始まるきっかけ~という展開になるんですね。
数人の登場人物の運命が交錯する~意外な絡み具合が面白く、すっきり解決というのではないんですが、人生の中の一瞬のきらめきに美しさがあります。
ラストから逆に作品の冒頭へとふわぁっと意識が舞い戻り、恋する切なさと生きる哀しみがひたひたと胸に広がります。

歴史物が好評というのが嬉しかったデビュー作「半身」、少女2人が主人公のディケンズ風味のエンタテインメント大作「茨の城」を期待すると、ちょっと違うかな~。
これほど筆力があるとはゴージャスだなあ。どんどん難しい方面へ行かれたらちょっと寂しいけど…次はどんな手で行くのか??興味あり。

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