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2006年9月11日 (月)

「魔法」

クリストファー・プリースト「魔法」ハヤカワ文庫

報道カメラマンのリチャード・グレイは爆破テロに遭遇して大怪我をし、過去数ヶ月の記憶を失います。
保養所に訪ねてきた女性スーザンは恋人だったというのですが、特徴のない外見で見覚えもない。
記憶を取り戻すための実験で催眠術をかけたところ、いるはずの人間の姿が見えなくなる錯覚が起きるという奇妙な現象が起きます。
事故のせいだけではなく何らかのトラウマで記憶が戻らないのかも知れないと、スーザンに問いただすのですが、少しずつ取り戻した記憶はスーザンの話と大きく矛盾し…

出だしは記憶喪失ネタのミステリのよう。
中盤は大人の恋愛心理物としても読める内容です。
しかし、不可視というのは…ええ?どっちが本当なのだろう…たぶん…へええ…まさか…うわ?わわ!
と予想外に話は転がっていきます。

「魔法」というタイトルでファンタジーかと思いましたが、幻想文学という意味でのファンタジーですね。
いわゆるファンタジーらしいモチーフや甘さはないので、世界をひっくり返すような奇想の作品という点ではSFに近い感触。
原題は「THE GLAMOUR」で「魅力」と訳しても良いんですが、この言葉、昔は恋人を他の人間に見えなくする魔法をかけて貰う、という意味でも使われていたそうなんです。
そういった両義的な言葉のイメージも満載の作品。

プリーストは43年イギリス生まれ、66年デビュー、95年「奇術師」で世界幻想文学大賞を受賞しているそうです。
84年の本書もなかなか他にないと思える傑作ですが、ちょっと~読者を選ぶ所はあるかも?

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